2008年05月12日

それはTEACCHじゃない!(3)

これまで2回にわたって、妻から聞いた話をきっかけに、「何がTEACCHであって何がTEACCHでないのか」について、少し突っ込んだ議論をしてきました。

前回も書きましたが、これはあくまで「聞いた話」であって実際の姿を詳細に検証したわけでもありませんし、そもそも今回話題にしたサービスがTEACCHを標榜していたわけでは必ずしもないと思いますから、今回の議論は、「このサービスはいい・悪い」という話ではなく、また、「TEACCHがいい・悪い」という話でもなく、ただ「もしこんな状況が仮にあったとしたら、それはTEACCHではなく、違った療育である」ということを言っている(それ以上でも以下でもない)のだ、ということをご理解いただきたいと思います。

・・・長い能書きを書いてしまいましたが、それをふまえて、さらに議論を呼びそうな、よりデリケートな話題について最後に触れておきたいと思います。

今回の話題をじっくりと考えてみると、統合教育(斉一教育)と特別教育という、非常にデリケートで難しい問題にもつながってきます。

特別支援教育における「統合教育」とは、本来は、教育の「場」を前回書いたような、TEACCH的なグループ療育の「場」に近い、個別性が最大限に尊重される環境にして、そのうえで障害のある子どもとない子どもを同じ「場」で教育するという取組みであるべきでしょう。

ところが実際には、みんなが同じレベルで同じことをするという「場」(これは、一言でいえば「斉一教育」と言っていいのではないかと思います)に、そういう意味では明らかに「『場』違い」な子どもを連れてきて、何とかその「場」に合わせようとするようなものになってしまいがちです。
仮にそこに「介助の先生」をおいたところで、教室全体が「斉一教育」の論理で動いている限りは、やはりどうしてもその「場」から疎外されてしまうことは避けられないのではないかと思います。

でもこれは、やむを得ない側面もあります。そもそも斉一教育は、一律に同じことをやることを前提としているから今の効率が達成できているのであって、そこに各自の個別性を過不足なく受け止めるような仕掛けを入れてしまうと(それはそれで素晴らしいことではありますが)効率が落ちてしまって、いまの教育費でいまの水準の教育サービスを提供できなくなると考えられるからです。

いずれにせよ、このような疎外的な「統合教育」しか提供できない限りにおいて、自閉症児にはそのような「統合教育」の環境は過酷であり、自閉症児には各自の個別性に対応できる体制をもった「特別教育」を提供すべきである、というのがTEACCHの立場であろう、と理解しています。

TEACCHが統合教育よりも特別教育を志向しているのも、単に普通の教室は構造化されていないとかスケジュールがないとか、そんな表層的なことが理由ではありません。
やはりこれまでの議論同様、TEACCHの理念を突き詰めていった結果として、自閉症児に対して適切に働きかけることができるのは統合教育よりもむしろ特別教育である、ということが構造的に言えるから、そういう主張をしているのだと理解すべきでしょう。

身近な話題から始めて、最終的にはかなり観念的な話題になってしまいましたが、今回の件は、TEACCHの基本理念について改めて考え直す、またとない機会になりました。

ご意見などいただければ幸いです。


おまけ:こんな風に、TEACCHの理念について改めて考えたりしているのは、最近この本を読んだことも理由の一つになっています。


自閉症児のためのTEACCHハンドブック
著:佐々木 正美
学研

以前レビューしたこともある、TEACCHの古典ともいうべき入門書が、15年ぶりにリニューアルされました。内容はやや高度で、入門書としてはこれより易しい本がいくつか出ましたから、「1冊目」としてではなく、理念を含めたTEACCHの全体像を知るための「2冊目以降」のTEACCH本としておすすめできる内容です。
内容的にもかなり大幅に改訂されており、近日中に、こちらもブックレビューを書きたいと思っています。
posted by そらパパ at 22:12
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