2005年11月20日

部分強化とルールズ

行動療法の難しい話が続いているので、ちょっと(私も)息抜きです。

前回の後半部分で、部分強化と連続強化、そして消去抵抗や消去バーストといった話をしました。ターゲット行動を学習した後では、その行動に対し毎回ごほうびを与える「連続強化」よりも、時々しかごほうびを与えない「部分強化」のほうが、その行動がより強く定着し、消去しようとしても消去抵抗や消去バーストが強くなる傾向がある、という話でした。

この部分強化の話というのは、身につまされるというか、納得感がありますよね。
下世話な例えですが、誘ったら毎回デートできていた(連続強化)女性がある時を境に全く誘いに乗ってこなくなった(消去)ら、きっと気持ちが冷めたんだと比較的早めにあきらめられるでしょうが、もともと5回とか10回に1回しか会ってくれない(部分強化)女性が会うのをやめた(消去)としても、「そのうちまた会ってくれるんじゃないか」とずるずると誘いつづけてしまいそう(消去抵抗)です。あるいは、逆に会えないからこそ気持ちが燃え上がったりする(消去バースト)こともありそうですね。
こう考えてみると、恋のかけひきというのは要は部分強化をどう使いこなすかだ、とも言え、遊び人で交際相手がたくさんいるような人が大抵異性に冷たいように見えるのは、実はそれが最も相手を惹きつけるからなのかもしれません。

さて、ここで1冊の本を紹介します。


THE RULES―理想の男性と結婚するための35の法則
著:エレン ファイン,シェリー シュナイダー
ワニ文庫


なぜルールズが?と、本を知っている人ほど思うかもしれません。この本は、積極的に男性にアプローチしないことによって、理想の男性と結婚するという女性むけの恋愛のハウツー本です。アメリカで一部女性に熱烈な支持を受け、日本に輸入されて以降も、熱狂的な支持者を生み続けている、ある意味バケモノ本です。(冗談だと思うのなら、Googleで「ルールズ」と入力して確認してみてください。)
「35の法則」と副題がついているように、いろいろなルールが厳格に決められているのですが、行動療法的に一言で言ってしまえば、「限りなく消去に近い部分強化で、相手にバーストを起こさせなさい」というメッセージが繰り返し述べられている、と言えるでしょう。
バーストを起こした男性は、そのバーストは強化されますが、その後はまた消去のサイクルに入ってしまうので、またバーストする、強化される、消去に入る、この繰り返しで、バーストだけが選択的に強化されることによって、いつもバーストしている「あなたのことをいつも思っていて、熱烈に愛してくれる理想の男性」のできあがりです。バーストが学習されてしまうわけです。
もちろん、ほとんど消去に近いことをやっているわけですから、本当に消去されてしまう(疎遠になる)男性もたくさんいると思いますが、そういう男性は「運命の男性ではない」と一蹴です。

※前回の「パニックを中途半端に部分強化してしまうとどんどんパニックが激しく頑固なものになる」という話と、本質的にまったく同じだということに注目してください。同じ理屈で「男性のアプローチを無視したりしなかったりして部分強化すると、どんどんアプローチが激しく熱烈なものになる」のです。

この本を支持している「信者さんたち」のウェブサイト等で書かれているコメントをよく読むと、ルールズ実践前は決まって、自分は相手に連続強化をしているのに相手には部分強化あるいは消去されて、結果的につまらない男性にバーストしているタイプの女性です。ルールズを実践することで、それまで知らなかった、部分強化と消去を使って相手をバーストさせるテクニックを学び、これまで縁のなかったタイプの男性をゲットできるようになったのかもしれません。

そういう視点で読むと非常に面白い本です。


p.s.お気に入りリンクに鳴門教育大学(来年から法政大学)島宗先生のブログ「自然と人間を行動分析学で科学する」を追加しました。

posted by そらパパ at 09:24
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