2008年04月24日

岡山駅突き落とし事件について

このブログをご覧になっている方なら恐らくもうご存知だと思いますが、このような報道がありました。

<岡山突き落とし>少年、アスペルガー症候群と診断

4月24日1時41分配信 毎日新聞

 JR岡山駅のホームで3月25日夜、岡山県職員、假谷国明さん(当時38歳)が突き落とされ死亡した事件で、殺人と銃刀法違反の非行事実で家裁送致された大阪府大東市の少年(18)が、捜査段階の簡易精神鑑定で「アスペルガー症候群」と診断されていたことが分かった。

 事件は岡山家裁から大阪家裁へ移送されている。少年の付添人弁護士が明らかにし、家裁に正式な精神鑑定を申し入れる方針という。

 アスペルガー症候群は広汎性発達障害の一種で、コミュニケーションや共感性など対人面や社会性に困難があり、物事に固執する傾向がある。ただ、集中力や記憶力で優れた能力を発揮する人もおり、犯罪傾向とは無関係とされる。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080424-00000002-mai-soci

最近は、少年事件が起こるたびに、低くない確率で発達障害との関係が取り上げられ、実際の裁判でもその部分が重要な争点として争わることが増えているように思われます。
我が家も含め、自閉症スペクトラムの子を持つ親としては、心穏やかでないところです。

私たちは、この問題についてどのようにとらえればいいのでしょうか?
今回は、この問題についての私なりのの整理を書いておこうと思います。

まず第一の疑問として、自閉症スペクトラムと犯罪傾向は本当に「無関係」なのか、それともそうでないのか、という問題について。

これについての私の意見は、「直接の因果関係はない」、しかし、「相関関係が観察されることはありえるだろう」というものです。

自閉症スペクトラムの原因とされる脳の器質的な障害が、そのまま直接「犯罪傾向」を生じさせるということは、ほとんど考えられません
ただ、自閉症スペクトラムであることによって社会適応に失敗するリスクが高まることは間違いありませんから、その社会適応の失敗から、行為障害、非行傾向に移行するという、二次障害としてのリスクの可能性までは否定できないと考えざるを得ません。

もう一つ、難しい側面があります。
「重大犯罪の加害者」という集団を事後的に観察したときに、その集団に含まれる人の多くが、さまざまな理由により「社会性に問題を抱えている」ように見えることは必然です(犯罪というのは、突き詰めて考えると、反社会的行為の究極のものだと言えるわけですし)。
ここで難しいのが、そもそも自閉症スペクトラムが、「社会性の障害」などの「行動・症状レベル」で定義されていることです。
つまり、社会性に問題ありと認められるような非行を行なった子どもを集めてきて、事後的に精神鑑定を行なった場合に、「社会性に問題がある(行為を行なった)」という事実から、そのまま「広汎性発達障害の定義に合致する」という結論を導けてしまう可能性がある、ということです。
つまり、結果から原因を「あとづけ」で作れてしまうような要素が、自閉症スペクトラムの診断基準には内在しているということなのです。
この辺りは、明確な原因がわかっていない自閉症スペクトラムの診断における本質的な問題だと言っていいと思います。
ただ言えることは、仮に事後的な結果からみて相関があるように見えたとしても、ただそれだけでは、その要素が「リスク要因である」とは言えても、「原因である」とはいえない、ということです。


もう一点、考慮すべきことは、こういったケースで弁護側がことさら発達障害を強調するインセンティブ(動機づけ)として、刑法第39条の規定がある、という点です。

刑法
第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

判例等によると、心神耗弱とは、精神の障害により事の是非善悪を弁識する能力又はそれに従って行動する能力が著しく減退している状態をいいます。そして、犯行時にこの心神耗弱の状態にあると認定されれば、罪が軽減されます。

そこで、犯行を行なったという事実に争いがない場合、弁護側は次の手段として、罪を軽くするために、心神耗弱の主張ができるかを追究します。
そのために、この「発達障害」という精神鑑定があった場合、それを強く主張する(それにより犯行時に心神耗弱であったという認定を受けて罪を軽減させることを目指す)わけです。

個別ケースの鑑定の信頼性、あるいは刑法第39条の是非についてのコメントは差し控えますが、本来の趣旨からいえば、そういった障害や困難をもった人を守るための刑法の規定が、結果として障害と犯罪との間に直接の関係を想定するような弁護側の主張を誘引し、さらにその結果として障害が犯罪の原因であるかのような印象を世間に与える結果になっているのは、皮肉というほかありません。

今回のテーマは内容的にとてもデリケートなものを含んでいると思います。
ご批判等ありましたらぜひコメントいただきたいと思います。
posted by そらパパ at 20:04
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