2005年11月14日

キレート療法を斬る

自閉症には、さまざまな「民間療法」が存在します。これはマーケティング的に考えると必然で、自閉症という障害が、下記のような要素をあわせ持っているからです。

・医者は「治る」とは言ってくれない。
・時間の経過とともに良くなったり悪くなったりすることがある。
・人数的にある程度の「患者」がいる。

このような状況に対して、民間療法は次のような順序でマーケットを形成します。

・医者と違って「治る」と言ってくれる民間療法が現れる。
・その療法をやっていて、たまたま(その効果ではなく偶然に)良くなる人が出てくる。
・そういったものを広告費をかけて宣伝できるだけのマーケットができあがる。

こういう民間療法マーケットは、いわゆる難病・後遺症・原因不明の病気などには必ず出てくるものですが、最後の「一定量の患者数」がいるかどうかで、「その病気/症状専用の療法」が登場するかどうかが決まります。難病であっても、マイナーであれば「万病が治る」という民間療法の「万病」の1つに押し込められるのがオチですが、例えばガンのように患者数が非常に多い病気であれば、「ガンが治る」という民間療法が大量発生する、というわけです。

さて、「キレート療法」です。
上記のような視点でみると、「キレート療法」というのは、主に自閉症に効くことを宣伝している民間療法ですから、「専用療法」のカテゴリに属します。つまり、自閉症についても、「それ専用の民間療法」が存在しうるくらい、悩んでいる人が多い障害だ、ということでしょう。

キレート療法について簡単に説明すると、自閉症の原因を、予防接種のワクチンなどによって引きおこされる水銀中毒であると考え、水銀を排出するためのサプリメントを摂取し続けることによって自閉症を治すという手法です。

ただ、キレート療法には、科学的根拠がありません。「科学的」とは、追試可能な実験が存在する、ということだと言えますが、キレート療法にはこういうものがありません。LANCETという医学誌に論文が載ったことを喧伝している業者もいるようですが、すでにこの論文は撤回されています。論文を発表した人が、「ワクチン被害者」裁判の原告から資金援助を受けてデータを捏造した論文だったということです。下記のリンクに詳細があります。

ワクチンで自閉症は増えない
http://www.geocities.com/HotSprings/4347/autism.htm

もし水銀が自閉症の原因だとすればなぜ水俣に自閉症児が多発しなかったのかとか、キレート療法には私のような素人でも感じる疑問がいろいろありますが、下記の2ちゃんねるのスレがその辺りを深堀りしていてとても面白いです。

【治る】キレート療法で改善【自閉症】
http://life7.2ch.net/test/read.cgi/baby/1081348878/

このスレで特に面白かったのが55,150-160あたりを中心に出ている水銀検査の話。キレート療法商法(あえてこう書きますが)では最初に毛髪などの水銀検査を行ないますが、このスレから判断すると、そもそも業者はまともな検査なんかやっていない可能性が高い。こんなものにお金を払うのはまったくのムダということでしょう。さらに、キレート療法で使うサプリメントは高額であり、長期間買い続けなければならないところからも、いかがわしいお金儲けの匂いがします。

もちろん、高くて役に立たないだけなら、ただの「お金の無駄遣い」で済みますが、キレートに関してはそれだけでは済みません。キレート療法は体に負担をかけ、有害なのです。これは、「効果」が非科学的であるのとは対照的に、科学的根拠のある客観的事実です。必須ミネラルなども一緒に排出してしまうだけでなく、腎臓障害などの副作用も強く、それが原因で死亡したと考えられる例もあります。

5歳の自閉症児、EDTA静脈注射によるキレーション中に死亡
http://asdnews.seesaa.net/article/6390762.html

上記の死亡例は、「静脈注射」という過激な方法によるキレーションのようですが、いずれにしてもキレート療法が一般的な意味において体に良くないことだけは間違いありません。

自閉症の子を持つ親にしてみれば、突然に医者から絶望的な宣告をされ、わらにもすがる思いでこういった民間療法に手を出してしまう、そういう心境は十分に理解できます。
でも、自分自身で判断できない自閉症の子どもに、こんな危険なものを独断で与えてはいけない。私たちは、正しい知識を知ることによって、子どもを守らなければならないのです。

なお、キレート療法についての日本小児神経学会・日本小児精神神経学会・日本小児心身医学会の公式な見解は下記でご覧になれます。

自閉症における水銀・チメロサールの関与に関する声明
http://homepage3.nifty.com/jscn/smsg.html
posted by そらパパ at 23:28
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