2007年12月31日

パニックを考える(17)

「パニックを考える」のシリーズ記事、ちょうど大みそかに最後の記事が書けました。

8.まとめ

長い期間にわたって、自閉症児のパニックについてさまざまな角度から考えてきました。
パニックを「正しく」理解するうえで第一に重要なことは、パニックを単なる問題行動としてではなく、ある種の「適応行動」、つまり、自閉症児が彼らなりに獲得した、欲求や混乱を解決するための行動だととらえることだと思います。
自閉症児は、そういった状態を伝えようとしても、ことばやジェスチャーといった健常児が容易に使える方法が(何らかの認知上の困難により)うまく使えないと考えられます。そのために、端的に「泣き叫ぶ」という方法、つまりパニックという「問題行動」が「発達」してしまう、と考えられるのです。

だとすれば、以下のようなパニックへの働きかけは、すべて「望ましくない」ということが理解されるでしょう。


1)抑えてしまう
 自閉症児にとって唯一の「表現手段」であるパニックを単に抑えてしまうということは、自閉症児の行動レパートリーを著しく制限することとなり、行動そのものをおこさなくなる「学習性無力感」にもつながりかねません。

2)罰する
 そもそも、問題行動を罰によって抑えようとすることがあまり効果的でないことは、ABAのさまざまな知見によって明らかになっています。さらに、パニックと言う「攻撃的・発散的」な問題行動を沈静化・収束化させるためには、少なくとも「叱る」という、明らかに「攻撃的・発散的」な反応は適切であるとは言いがたいでしょう。(比較的適切な「罰」については後述します)

3)認めてしまう
 パニックは社会的に受け入れがたい「問題行動」であるからこそ問題にしているわけですから、それを認めて強化してしまえば、社会適応力がどんどん落ちていってしまいます。

4)無視する
 パニックは無視するだけで消去することは非常に難しいと言われています。なぜなら、パニックには一般的に、子どもにとって解決されるべき欲求や感情がセットになっているため、それらが「解決」されない限り、子どもはパニックを続けざるをえず、その結果、親もつい途中で「折れて」関わってしまうことで、かえって部分強化によってパニックを強固に定着させてしまうことがしばしばです。


だとすれば、どうすればいいのでしょうか?

基本は、「代替行動分化強化」、つまり、パニックに「代わる」適切な(社会に受け入れられる)行動を強化し、パニックしなくても自閉症児の「問題」が解決されるような方法を提供することです。
例えば、絵カードによるコミュニケーション療育「PECS」は、まさにこのような目的に最適な療育法の1つである、といえるでしょう。

さらに、周辺の環境に対応できない混乱によってパニックを起こしているようなケースにも対応できるよう、子どもに「逃げ場所」を用意し、必要に応じて子どもがそこを利用できるように働きかけることも効果的でしょう。ここで「逃げ場所」は必ずしも物理的な場所とは限らず、『指しゃぶり』のような「安心行動」をあえて認める、といったやり方も含まれます。

もちろん、自閉症児のそもそものストレス発生を軽減する工夫も望まれます。

最後に、それでもその場その場のパニックのコントロールが難しい場合、タイムアウト、過剰修正法、レスポンスコストといった、ABAで研究された比較的穏便で使いやすい「罰」を、必要最小限で活用していくことも必要かもしれません。

パニックは、正しい理解と先手先手の対応さえあれば、決して恐れるべきものではありません。
(ただし、あくまでもここでは働きかけによって対応可能なパニックについて取り上げています。素人では対処が難しいような、極端な行動障害については、医師の診断を仰ぎ、薬物療法等も含めた専門的な対応を行なってください。)
posted by そらパパ at 10:00
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