2007年05月28日

自閉症-「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育(著者による紹介)(1)

今回は、私自身が書いているので(笑)、ブックレビューではなく紹介ということで書かせていただきます。(シリーズ記事の更新が少々停滞していますが、ご容赦ください。)

  自閉症-「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育


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自閉症-「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育
著:そらパパ・神谷 栄治
新曜社
2007年5月29日発行

第1章 自閉症はどう理解されてきたか
第2章 認知科学の新たな流れ-ギブソン理論とコネクショニズム
第3章 従来の自閉症モデルの問題点
第4章 新しい自閉症のモデル
第5章 具体的な療育の取り組みについて

ちょっと能書きっぽくなってしまうかもしれませんが、まずは本書のタイトルに込めた思いから書きたいと思います。

当初のたたき台となったタイトル案は「自閉症-新しい理解と療育」という素っ気ないものでしたが、これでは自閉症のお子さんを持つ親御さんに手にとってもらいにくい(笑)し、本書の内容についての訴求力も弱いということで、もう少しカジュアルなイメージで、かつ本書の内容を的確に反映したものに微調整したいと思いました。

そこでまず考えたのが、本書のキモになっている理論が、認知科学における、コネクショニズムギブソンのアフォーダンス論である、という点です。
コネクショニズムは、ニューロンどうしの接続状態、すなわち「つながり」を研究する立場ですし、ギブソン理論はまさにヒトと環境との相互作用に着目する心理学なので、こちらも「つながり」に関係します。
ここで、「○○と××をつなぐ」というコピーのイメージが浮かびました。

ここまでくれば、ギブソン理論にしたがって、○○と××は「からだ」と「環境」とすれば本書の趣旨にも完全に合致するということで、「『からだ』と『せかい』をつなぐ新しい理解と療育」という、本書のサブタイトルが生まれました。

ここで、○○と××のいずれにも「こころ」を入れなかったところが、ささやかなこだわりです。

私は、この辺りの立場については実は結構「過激派」で、「心」というのが実在するかどうかについて、かなり懐疑的だという考え方です。
(ただしこれは、一般的にヒトが、「心」というものがあると考え、他人の「心」を推測して社会的に適応しているという事実を否定するということではなく、「心」という概念をおかなくても知性や自閉症の全体像を理解することはできる、という「心身一元論」の立場を指しています。)

自閉症を考えるときに「こころ」という概念を持ち出してしまうと、それは結局、目に見えないものに効果が分からない働きかけをするという療育法につながってしまう危険性が高いといえるでしょう。

このように、目に見えないもの、証明できないものを議論の中心に据えることは、突き詰めていくとオカルトの世界に入っていくということであり、科学としての心理学なり療育なりを考えるときには、厳に慎まなければならないことだと思います。

ところが残念ながら、「自閉症に働きかける心理学」の世界では、どちらかというと「こころ」という概念に強く依存した議論が今でも強い勢力を持っているように感じます。
これには、いろいろな理由があるとは思いますが、1つには、自閉症という障害を理解することがきわめて難解である(我々の常識が通じないうえに、本人が自らの状態を語ったり表現したりすることも難しい)ことから、その「分からないこと」を何とか説明・理解・対処するために、それらの「分からなさ」を丸ごと飲み込んでくれる「こころ」という概念に頼らざるを得なかったという側面があると思います。

本書で私が目指したのは、そのような自閉症の「分からなさ」をできる限り解消し、「自閉症の症状」という最上位の現象と、「脳の障害」という最下位の現象との間を、「こころ」のようなあいまいな概念を使わずに連続的に説明し、さらにそこから具体的な療育の方向性を示すことでした。
これは、「こころ」という概念ありきで始まる多くの臨床心理学的立場とも、行動よりも上位の部分だけを切り取って、厳密な科学を構築する行動主義的立場とも異なるものです。

第2章でいきなり認知科学の歴史の話になって、少々唐突な印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、第3章、第4章と続けて読んでいただくことで、自閉症という「分かりにくい」障害を、これまでになく見晴らしのいい場所から眺めることができるはずだと期待しています。

次回は、もう「発売後」になると思いますが、本書の内容についても少し書きたいと思います。

(次回に続きます。)

これまでに書いてきた、自閉症に関連するブックレビューはこちら
posted by そらパパ at 22:45
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