2006年12月29日

幼児期の療育を考える(29)

前回、ABAの考えでは、問題行動をやめさせるためには「罰」ではなく、「消去と代替行動のセット」を使うのが望ましい、という話をしました。今回は、その代替行動の話題です。

問題行動を起こす子どもは、それによって得られる「ごほうび」を求めていて、それを手に入れるためにその問題行動を起こしている、とABAでは考えます。
ですから、その「ごほうび」を与えなくするだけでは不十分で、問題行動とは別の、より適切な行動で、しかも同じ「ごほうび」が手に入る方法を提示してあげる必要があるのです。そうしなければ、子どもはどうやっても「ごほうび」が手に入らないことになり、強いストレスを与えてしまうことになります。
例えば、課題が難しすぎるときにパニックを起こしてその場を逃げようとする子どもには、パニックをしても課題からは逃げられないと教える(課題から逃げられるという「ごほうび」を与えない=消去)のと同時に、例えば手をあげたり絵カードを提示したりすることで「この課題は難しい」という意思表示ができるように訓練します。そうすれば、子どもはパニックという問題行動を起こさなくても、より適切な方法で「難しいから助けて欲しい」という意思表示ができるようになり、それによって休憩したり別の課題に替えてもらったりといった、子どもが必要とする適切なサポート=「ごほうび」が手に入るようになります。
消去と代替行動の強化をセットで行なうことが、問題行動をやめさせるためのABAの基本になります。

※自己刺激行動などは行動そのものが「ごほうび」になっている場合もあり、ここで紹介したような「消去と代替行動のセット」が使えない場合もあります。そのような場合で、かつ本当にその問題行動をやめさせなければならないケースでは、やむを得ず「罰と代替行動のセット」を使う場合もあるでしょう。この場合も、できるだけスムーズに問題行動を代替行動のほうに誘導していくことが大切です。

ABAの基本的な原理はこれで終わりです。
ABAの考え方がそれほど難しいものではなく、むしろ私たちが困っている問題に対して、とても具体的で効果のあるやり方をシンプルに教えてくれるものだということが理解いただけたのではないかと思います。

ここからは、ABAのもう少し発展的な内容についてかいつまんで書いていきたいと思います。

最初に、ABAで新しい行動を教えるときの2つのテクニックについても簡単に解説しましょう。

e. プロンプトとフェイディング
f. バックチェイニング


例えば、先ほど例にあげた「いすに座る」という行動を初めて教えるときのことを考えてみましょう。
もっとも原始的な方法は、いすを用意して、子どもが偶然いすに座るのをずっと待っている(そして運よく座ったら「ごほうび」をあげる)というやり方です。でも、こんなやり方ではやっていられませんね。
ですから、まずは子どもの体を誘導して、いすに座ることを「手助け」します。そして手助けによっていすに座ることができたら、即座に「ごほうび」を与えます。
この「手助け」のことを「プロンプト」と呼びます。プロンプトには、物理的に相手の体を動かすことや、身振りやことばで指示を与えること、見本を見せることなどが含まれます。

山本五十六の有名な言葉に、「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」というのがありますが、この最初の3つがすべてプロンプト、最後の「ほめてやらねば」が強化だと言えますから、まさに山本五十六はABA的リーダーシップでもって部下の指導管理を行なっていたと言えるかも知れませんね。

プロンプトに関する重要なポイントは、できるだけ早くやめなければならない、ということです。そうしないと、望ましい行動を自発的にすることではなく、「プロンプトされたらやる」という受身的な行動が学習されてしまいます。つまり、プロンプトが本来の手助けではなく、行動を始める必要条件に変質してしまうわけです。ですから、プロンプトによって目的の行動が出てくるようになったら、すぐにプロンプトをやめることを検討し始めなければなりません。

とはいえ、プロンプトをいきなり完全にやめてしまうと、子どもは困惑してしまいますし、成立しかけた学習が壊れてしまいます。ですから、プロンプトは少しずつ減らしていくことが必要です。例えば、いすに座らせるためのプロンプトであれば、最初はいすにしっかり座るところまで手助けしていても、やがていすの前に移動して腰をおろし始める手前で手助けをやめ、次にいすの前に移動するところで手助けをやめ、だんだんいすからの距離を離していって、最後にはまったく手助けせずに子どもがいすに座れるようにします。

物理的に体を動かすプロンプトから、ことばによるプロンプト(指示)に切り替えていくようなやり方もあります。この場合は、最初は体を動かしながらことばかけも同時に行ない、体を動かすプロンプトだけを減らしていきながら、最終的にはことばの指示だけで子どもが行動できるように働きかけていくことになります。このやり方は、こちらの指示を聞くことが目的であるような行動に特に効果的です。

これらのように、一度与えたプロンプトを徐々に減らしていくことを「フェイディング」または「プロンプト・フェイディング」と呼びます

次回は、バックチェイニングについて解説します。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 23:29
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