2006年12月10日

幼児期の療育を考える(19)

自閉症の療育技法の中で、検討する価値のあるものを順に紹介しています。

d.感覚統合

感覚統合というのは、体のさまざまな感覚器からの感覚「入力」が脳で「統合」され、筋肉の運動として「出力」される、という脳の「情報処理」を仮定し、この情報処理の流れがうまくいっていないのが自閉症などの障害を生んでいると考え、この「感覚入力」→「感覚統合」→「運動出力」の流れが適切になるよう働きかける療育法です。

具体的には、体育館にあるような遊具(マット、ブランコ、トランポリン、バランスボール、ボールプール、etc.)などを使って遊ぶことによってバランス感覚や皮膚感覚にたくさんの適切な刺激を与え、その刺激に対応して適切に体を動かす粗大運動スキルをあわせて伸ばすといった療育を行ないます。
非常におおざっぱに言えば、「体育遊具を使って大人と一緒に遊ぶこと」を中心とした療育法です。

一般にいわれる自閉症児の「感覚過敏」「感覚異常」、あるいは粗大運動のぎこちなさやバランス感覚の異常などを考えると、感覚統合で提供されるような「体全体を使ったバランス・皮膚感覚を調整する遊び」を経験させることは、自閉症児にとって適切な療育効果をもっている可能性がかなりあるのではないかと考えられます。
また、自閉症児が特に苦手としている「環境とのかかわり・相互作用」の入り口として、体全体を使って遊具とかかわりあうことが有意義であることは間違いないところでしょう。
ですので、療育メニューの一部として、感覚統合を組み入れることについては悪くない選択肢だと思います。

ただし、気をつけなければならないのは、感覚統合は理論的には非常にもろい療育法である、という点です。
感覚統合の本を買ったり資料をもらったりして読んでみると、そこには専門的な脳科学の用語が並び、感覚統合理論が脳科学の知見に基づいた科学的な療育理論であるかのように解説されていますが、実際には、脳科学の新旧の仮説を「いいとこどり」して強引に療育理論にまとめあげた、言葉は悪いですが「トンデモ理論」に近いものだと言わざるをえません。

ただ、この理論面の問題によって、感覚統合が療育法としてすべて無意味だということにはならないと考えています。
感覚統合「理論」そのものが仮に正しくないとしても、既にお話しした通り、バランス感覚や皮膚感覚、粗大運動といった領域に多くの自閉症児が異常を持っていることは事実であり、これらの領域について、実践的な働きかけのやり方を示し、「環境との相互作用」への入り口を提供している感覚統合「療法」は、実践メニューとしての価値を持ち続けるはずです。
また、反応性の弱い重度の自閉症児に対して、「人とかかわる遊びの楽しさ」を教える第一歩としても、感覚統合療法は意味を持っているのではないかと思います。

感覚統合については、理論に深入りする必要はまったくありませんが、感覚統合の実践者に運良く出会うことができたなら、療育メニューの一部として(残念ながら、感覚統合だけで自閉症児の療育すべてをカバーすることはできません。これも大切なポイントです)、感覚統合を取り入れることを検討する価値はあるでしょう。
また、そうでない場合も、実践例が豊富に掲載された感覚統合療法の書籍を参考にして、毎日の親子の「遊び」として感覚統合を取り入れるのもいいと思います。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 21:06
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