2006年07月20日

科学哲学の冒険(ブックレビュー)

今回の出張で読んだ本の2冊め。


科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる
戸田山 和久
NHKブックス

1 科学哲学をはじめよう―理系と文系をつなぐ視点
 科学哲学って何?
 それは何のためにあるの?
 まずは、科学の方法について考えてみよう
 ヒュームの呪い―帰納と法則についての悩ましい問題
 科学的説明って何をすること?
2 「電子は実在する」って言うのがこんなにも難しいとは―科学的実在論をめぐる果てしなき戦い
 強敵登場!―反実在論と社会構成主義
 科学的実在論vs.反実在論
3 それでも科学は実在を捉えている―世界をまるごと理解するために
 理論の実在論と対象の実在論を区別しよう
 そもそも、科学理論って何なのさ
 自然主義の方へ

面白い本です。
でも、自閉症療育という観点からはさすがに方向性がかなりずれているので、特におすすめできる本ではないかもしれませんね。

でも実は、ちょっと違う観点から読むと、自閉症を理解するための大きなヒントが隠れているように私には思えるのです。

科学哲学というのは、「科学とはどんな活動なのか?」「科学はなぜ『世界の真理』を解明できる(ように見える)のか?」「科学の方法論に問題はないのか?」といったことを哲学的に考える学問です。

科学と哲学というのは、まったく正反対の世界のように思えるかもしれません。
でも、ライプニッツやデカルトのように、科学と哲学の両分野で偉大な業績を残した人がいたことでも分かるように、歴史をさかのぼると、科学も「真理を探究する」という哲学の流れから派生して発展してきたことが分かります。

本書は、科学哲学に興味を持つ人にとって、対話形式で読みやすい入門書として評価されているようですが、当ブログは自閉症療育のブログですから、これ以上科学哲学の内容そのものに立ち入ることは避けたいと思います。

本書が、私にとって「自閉症療育」という観点から興味深かったのは、科学にとって不可欠な「帰納」という方法論が成り立つ前提についての議論でした。

帰納というのは、例えば「昨日の朝は新聞が6時に来た、今朝も6時に来た、だから明日も6時に来るだろう」といった推論で使われている方法論で、いくつもの実例を集めることで1つの「法則」を見出す方法です。

本書では、そもそもこの「帰納」というのが正しい推論方法なのか、といった議論もされている一方で、「帰納」が成り立つための条件についても考察されています。その条件というのは、例えば、

・さまざまな実例が「同じ例」だということが分かること。
・これまでの世界と今後の世界が「同じ」だと言える程度に安定していること。


こういったものだと考えられます。
端的に言えば、世界が安定していて、同じものを同じと判別できることが、「帰納」を可能にし、ひいては科学という営みを可能にしている、といえます。

・・・どうでしょう? これって、何かと似ていると思いませんか?

そうです。自閉症児が抱えている問題って、この辺りの非常につながっているところにあるのではないか、そんな気がしてならないのです。

自閉症児にとって、世界は安定しない混乱したもので、「同じ」「違う」ということの判断もうまくいかない状態になっているとすれば、先に言った新聞の例のような日常生活の中のさまざまな「ルーチン」に気づくことができず、見通しも立ちにくく、環境とのかかわりにも障害が生まれるのではないでしょうか?

自分をとりまく「環境」を合理的に認知することは、日常生活に不可欠な「素朴科学」だとも言えます。私たちが当たり前に持っているこのスキルが、もしうまく発達しなかったとしたら・・・? それが、もしかしたら自閉症児の認知している「世界のありよう」なのかもしれません。

本書を読みながら、そんなことを考えました。

※その他のブックレビューはこちら
posted by そらパパ at 23:15
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