2006年06月08日

TIME誌の自閉症特集

これもちょっと話題遅れかもしれませんが、TIME誌が自閉症の特集をしたようですね。



表紙にも大きく「AUTISM(自閉症)」と書いてあって、けっこう大きい扱いのようです。記事は以下のように3つに分かれているようですが、本文にご興味のある方はまとめて1ドル99セント(6記事まで)で記事を購入できるようです。

http://www.time.com/time/archive/preview/0,10987,1191843,00.html
http://www.time.com/time/archive/preview/0,10987,1191852,00.html
http://www.time.com/time/archive/preview/0,10987,1191859,00.html

私も購入しようかどうか迷っています。(^^)

ただ、この特集、いきなりFC(Facilitated Communication)という、一般には「いかがわしい」とされている療法で良くなったという子どもの話題から始まっていたり、基本的には「否定されている」と言っていい自閉症と水銀の関係(参考記事)も紹介されているなど、必ずしも専門的な目で見て妥当な記事だとは言い切れないようです。
このあたりは、日本の有力マスコミで取り上げられる自閉症の話題と似たような状況なのかな、と思います。

ちなみに、記事を購入して英語で読まなくても、以下のブログなどで概要が紹介されています。

AUTISTICな日々
  TIME誌の自閉症特集記事1
  TIME誌の自閉症特集記事2

ASDNews International
  FC:『タイム』誌の自閉症特集
  タイム誌の特集: 自閉症研究の全体像
  タイム誌の自閉症特集: 教育的介入について

内容としては、自閉症の原因についての研究(脳の損傷に関連する知見が中心のようですね)と療育のトレンド(歴史のあるABAと台頭しつつあるDIR、という比較)が話題の中心のようです。

これら日本語のエントリーを見て(実際の元記事を読んで、ではないのでご注意ください)、特に療育に関連して、気になったポイントを整理しておきたいと思います。

1.いわゆるロヴァースのABAによる早期集中介入の効果について。
 ABAによる早期集中介入を推進している人たちが必ず引用するロヴァースの1987年の実験の「素晴らしい効果」ですが、どうやら再現性がないようです。
 ロヴァースの後継者による2000年の追試では、ロヴァースと同様の早期集中介入を行なったにも関わらず、知的な面の改善効果もそれほどではなく、最も重要だと思われる社会性の改善には効果がなかったということです。
 同様のことをやった、ということは、週数十時間(25時間程度のようです)のトレーニングを年単位で行なったはずですから、冷静に読むと療育のボリュームの割には信じがたいほど効果が低かった、ということになります。
 この結果に、ABAを信奉する人たちの間では、「やはりロヴァース先生の療育技術には他の人には真似できないものがあるのでは」といった意見も出ているようですが、そんなことを言った瞬間に(ABAが拠って立っているはずの)科学ではなくなります。
 私自身、ABAを勉強すればするほど、問題行動の解消や行動レベルの課題習得以外の分野(ことばや社会性など)にまでピュアなABAを全面応用することへの疑問が広がっていったのですが、その疑問に対抗する、私の中でのある意味「最後の砦」であったロヴァース実験が、科学的には非常に弱い位置にまで落ちていることを知り、自分が向かおうとしている方向への「自信」が少し増えた気がします。

2.ABAに続く療育法、として紹介されているDIRについて。
 ABAの効果が疑問視され始めている、という文脈に続いて、新しい療育法としてDIR(developmental, individual-difference, relationship based)が紹介されています。直訳すれば「発達的、個別、関係性に基づく」とでもなるでしょうか。
 ただ、これを読むと、やっていることというのは、

・床に寝そべって子どもの「世界」に入り、社会的な遊びに導く「フロアタイム」
・構造化しない学習環境、複雑で社会的な遊び
・ごほうびは物ではなく、拍手などの社会的強化子
・作業療法 (感覚統合) も取り入れる


 といった内容で、昔の「受容的療育」に戻っているような印象が強いです。特に目新しい手法が使われているようにも見えませんし、「社会性」に焦点を当てすぎている気もします。
 先日書いたプルキンエ細胞の話題などでも触れたとおり、自閉症児の場合、複雑な学習環境のもとでは、むしろ学習が阻害されて適応が悪くなる可能性さえあると私は考えています。
 「社会的相互作用」に着目する部分は賛成できますが、そのやり方として、複雑な対人関係や集団ゲームを経験させて「実社会に適応させる」という考え方が本当に期待どおりに働くのか(もしかして逆に働かないか)は分からない、と思います。

 もし私が、自分の娘をこの記事の後半部分に出ている2つの学校(ABAとDIR)のどちらに行かせるとなったら、ABAをやっているほうを選ぶでしょうね。ABAのほうが方針が明確ですし、学校でABAをやらせて、家に帰ってからは親子の関係のなかで社会的相互作用を伸ばしていけばいいんじゃないか、と思いますので。
posted by そらパパ at 20:54
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