2006年04月29日

ブックガイド〈心の科学〉を読む(ブックレビュー)


ブックガイド〈心の科学〉を読む
編:岩波書店編集部
岩波科学ライブラリー 105

“心”とは何か
「動物の心」+「ことば」=「ヒトの心」そしてぼくの心は?
思い続けることの不思議―心と身体の倫理学
意識の迷宮
「心を読む」心の科学
臨床神経心理学者が読む“心の科学”
ことばから見た心
言語によって動的に構築される世界
俳句・漢字・自分
地面や空気から「心」について考えることもできる―早わかりアフォーダンス


自閉症児(というか自分の娘)の「内面」(これも曖昧な言葉ですが)に近づこうと考えて本を読んでいた私は、1年ほどは自閉症療育に関する本ばかり読んでいましたが、やがてそれでは飽き足らなくなって、「心の科学」という荒野に足を踏み出すことになりました。

ただ、私も最初から「心の科学」の勉強をしよう、と思って読む本のジャンルを広げたのではありません。

例えば、自閉症児が障害を持つといわれる「心の理論」をもっと知りたいと思って認知心理学へ、さらに心の理論の前提となりそうな「自己意識」から認知科学や動物心理学へ、さらに遡って「そもそも意識って何だ?」という疑問から分析哲学へ、そして行動主義への疑問から科学哲学や心脳問題へ、ABAが事実上「手も足も出ない」ことばのゼロからの獲得について知りたくて言語学や発達心理学へと、まさに興味のおもむくまま、手当たり次第にいろいろなジャンルの本を読み始めたわけですが、改めて振り返ってみると、それが全部「心の科学(哲学)」に関する本だった、というわけです。

最近は、空間認知が時間認知に極めて大きな役割を果たしているのではないか(そして自閉症児が時間認知に障害があるのは空間認知に障害があるからではないか)という関心から(物理学的/哲学的)時間論について考えたり、「知覚の恒常性障害」からさらにさかのぼってニューロンの側抑制やフィードバック機構の異常が自閉症児の汎化・分化・恒常性の障害、さらにはてんかん体質を引き起こしている可能性はないかと考えて大脳生理学へと、興味の幅が拡散する一方で、本が積みあがっている状態ですので、そろそろ収束させないといけないかなあと思っているわけですが、そんなところで本書を買って、ますます買いたい本が増えて困っています(笑)。

さて、そんな「心の科学」に興味をもったとき、まず当惑するのが、その守備範囲のあまりの広さと、まだまだ定説が固まっていないという科学としての未成熟さ(それが魅力でもあるのですが)、それゆえの理論の変遷のスピードの速さです
見当はずれの内容にがっかりすることも少なくありませんし、ちょっと古い本を買うと既に時代遅れになっていたりもします。その一方で、古くても必読の定番書もあったりして、初めて読もうとするとわけが分からなくなります。

そんなときに、本書のようなブックガイドは非常に参考になります。

本書は、心の科学の世界で活躍する10人の選者による、心の科学に関連する本のガイドブックです。
10人の選者は、アフォーダンス理論で有名な佐々木正人氏や、小説「パラサイト・イブ」で有名な瀬名秀明氏、「心の理論」の専門家である子安増生氏、心脳問題で多くの著書がある信原幸弘氏など、幅広くかつツボを押さえた人選で、紹介文を読んでいると、どの本もぜひ読んでみたいと思わされます。新書や文庫など一般向けのやさしい本や、訳書ではない日本人による著作も数多く紹介されているところも魅力です。

特に私が興味を持ったのは、環境を「通り抜けられない固いもの」と「通り抜けられる水と空気」に区分し、変化しつつも安定した世界を構築する「固いもの」の表面が、我々にとってさまざまな意味を持つ、という、ギブソンの生態幾何学という考え方です。
これは、私が「知覚の恒常性障害仮説」で引用したピアジェの「物の永続性」の概念とつながる考え方だと思います。

そして、この理論が、有名なアフォーダンス理論につながっていると知り、今までスルーしていたけどやっぱりアフォーダンス理論も勉強しなければ、と思い立たされました。

あとは、本書で紹介されている本のうち、時間論に関連して、過去の記憶がどのように脳に残されているかについて書かれた本や、子どものことばの獲得に関連した、チョムスキーの生成文法の入門書あたりは、絶対に読もうと思っています。

そんなわけで、自閉症療育本を数冊読んで、さらに自閉症児の心に迫りたい、より高い目線から療育について考えたい、と思ったときのツアーガイドとして、あるいは心の科学がどういう広がりを持っているかを知るためにも、本書はとても役に立つと思います。

※その他のブックレビューはこちら
posted by そらパパ at 13:05
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