2009年10月29日

自閉っ子的心身安定生活!(立ち読みレビュー)

明らかに間違った方向に進んでる気が。



自閉っ子的心身安定生活!
著:藤家 寛子、浅見 淳子
花風社

まえがき
自閉っ子は進むよ
うつとの長い戦いを乗り越える
「自立」の難しさを乗り越えられた理由
セルフ・エスティームを保つためには
家族に思いやりがもてるようになった理由
心身を安定させるため、自分に言い聞かせていること
ほしい支援、いらない支援
あとがき

花風社が5年ほど前に出した「自閉っ子、こういう風にできてます!」は、新しい発見に満ちた興味深い本でした。


自閉っ子、こういう風にできてます!(レビュー記事

弁が立ち、自らの内的世界を詳細に描写できる2人のアスペルガー症候群の人に、花風社の浅見氏が「定型者」として少し離れたところからツッコミを入れる、という形式がうまくはまっていて、「当事者もの」の自閉症本として、今までにない魅力を放っていました。

ところで、「当事者もの」は、一般論として読まれるべきものではありません。

ある自閉症者Aさんが体験したり感じたりしていることは、Aさんにとって真理であることは間違いないにせよ、それを「自閉症者は一般的にこうである」と書いてしまうと、それは過度の一般化であって、得てしてうさんくさくて信用できないものになってしまいます。
一般論を語るのであれば、個人のエピソードに頼るのではなく、統制された疫学的調査なり実験なりに基づくべきですし、仮にエピソードベースでいくなら、少なくとも何百人単位の自閉症者のエピソードから共通項を抜き出そうという努力をするべきです。

また、「当事者もの」独特の読み取りの難しさもあります。
アスペルガーの人はアスペルガーの世界しか経験していないわけですから、仮に当事者であっても、「アスペルガーの世界はこんなところが『違う』」と語る内容には、既に想像と解釈が含まれています。ですから、そのベールの向こう側にあるもっとリアルな「世界」を、読者の側が頭をしぼって見つけ出していくところにこそ「当事者もの」のおもしろさがあり、逆説的ですが、「一般化されない、生々しい個別の経験」がそこにあればあるほど有意義だということになります。

ですから、ニキさんや藤家さんという限られた個人の経験が素直に表現される、この「自閉っ子」シリーズというのは、一般化して何かの「自閉症論」とか「ソリューション」を提供しようという方向性からは一番遠いところに本来の居場所があるはずなのですが・・・。
最近のこのシリーズは、どちらかというと彼女たちの経験を解釈し一般化して、一般論やのリューションを提供する方向にどんどん進んでいってしまっていて、もともとあった魅力をすっかり失っているように見えます。(そしてそうなってくると、このシリーズに元々ある「彼女たちは典型的なアスペルガー症候群とは言い切れないのではないか」という、本来なら無視できるはずの批判が、重みを持ってきてしまうわけです)

今回の本も、一言でいえば藤家さん個人の経験を語る「当事者エピソード本」なのに、そこに、過度の一般化による「社会適応のソリューション」という意図がかぶさってきて、散漫な印象です。
一応、この本は藤家さん個人の記録だ(なので一般化する意図はない)といったような予防線は張ってあるようですが、それでも、対談相手である花風社の浅見氏の立ち位置が、かつての「自分の立場からツッコッミを入れる定型者」から、「自閉症者の体験を解釈して一般化し、解決案を出そうとする人」に変節してしまっていることは覆うべくもありません。

加えて後半では、「『専門家』でないカウンセラーはよく分かってないから余計なことはするな、重要なことは『自閉症の専門家』に任せる」といったメッセージ性が非常に色濃く出ていて、端的にいえば「政治性」を感じます(支援者を「無能な大多数」と「特別なカリスマ」に分断するような方向性は私は嫌いです。)。
そもそも、ここで出てくる「自閉症の専門家」と「カウンセラー」の定義の違いが私にはあまりよく分かりません。少し前に出た本の先生が「自閉症の専門家」として扱われているところから推測すると、単なるトートロジーが書いてあるのかな、と思ってしまいます。(つまり、ニキさんや藤家さんにとって役立ったと感じた=「自閉症の専門家」、役に立たなかった=「専門家でないカウンセラー」ということを言ってるに過ぎないのではないか、ということです。)

ともあれ、たった1人の、しかもこれまでにも既存の書籍で何度も言及されてきた同じ人のほぼ同じエピソードをソースに、「過度の一般化によるソリューション」を提供しようとするこの本は、商業出版として(つまり、お金を新たに払ってまで読む本として)評価することは難しく、やはり残念ながら、花風社がこのシリーズを間違った方向に展開していると感じざるをえないものでしょう。(というか、単なるネタ切れ?)

※その他のブックレビューはこちら

※追記:いま、以下の3冊を購入したまま積んでる状態です。できれば近日中にレビューしたいと思います(大判本なので、どちらも通勤中に読めないのが辛いですが・・・)。

posted by そらパパ at 21:35
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