2009年06月25日

療育用サイン体系をオープンな環境で学ぶ

自閉症児のコミュニケーション力を訓練するための療育技法の1つに「マカトン・サイン」というものがあります。
これは、PECSなどと同類のAAC(代替的・補助的コミュニケーション)技法の1つで、厳選された語彙に対してハンドサイン(手話)を割り当て、それを教えることで音声言語の苦手な自閉症児のコミュニケーションスキルを向上させようというアプローチです。(実際にはマカトン法はサインだけでなく、シンボルや音声言語も取り混ぜたより複合的なアプローチのようです)

マカトンサインは、特別支援学校などを中心に療育技法としてはけっこう大きな勢力を占めているようなのですが、サインそのものが公開されておらず、日本マカトン協会の主催するセミナーに参加して初めて資料が手に入ります。それらの情報には厳しい守秘義務が課せられており、転載や勉強会等も禁じられているらしく、Webなどを覗いてみても情報はほとんど手に入りません。(一部、サインを公開されているHPなどもありますが、恐らくオフィシャルに認められているところではないでしょう。また、最近本が出たようですが、こちらでもサインはごく一部しか紹介されていないようです。)

当ブログは、「オープンな療育環境の実現」を目指しておりますので、こういったタイプの、クローズドな療育技法を積極的に紹介・推進することはしません。(もちろん、だからと言って否定するものではなく、当ブログのScopeから外すというだけです。)
AAC的なアプローチということで言えば、絵カードを使った療育(ここでも「PECS」と言ってしまうと、微妙にクローズドなところが出てくるので、一般的技法としての「絵カード」と呼びます。(参考記事))のほうがオープンで情報も手に入りやすいので、当ブログではそちらの情報を発信しています。

なお、サインと絵カードを比較すると、サインは「いつでもできる(手はいつでもそこにある。絵カードはないかもしれない)」という点では優位ですが、「知っている人にしか通じない(一般の人にサインをして見せても理解不能。絵カードは誰にでもわかる)」という克服しがたい弱点があるので、どちらかといえばサインよりは絵カードのほうが、将来の自立に向けたAACとしては優れているように思います。

ただ、そうは言いながらも、我が家の娘が特別支援学校に通うようになって、そこで使われているマカトンサインを割とあっさりと覚えた(特定のセリフを言うときに、手が一緒に動いてサインをするようになった(笑))こともあって、サインを使うというのも、選択肢の1つとしては面白いのかも、とも思うようになりました。

ただ、先ほどから書いているように、マカトンサインそのものをここで紹介することは、知的所有権等の問題から、どうしても不可能です。

で、いろいろ調べてみたんですが、次のようなやりかたで、「マカトンっぽいサイン」(マカトンサインそのものじゃないです。ここを間違えると各方面に迷惑がかかるので、ご注意ください)を、もっとオープンな環境のもとに使うことができそうだ、ということが分かったので、掲載しておくことにします。

(1)マカトン・サインの、もしくは類似の「語彙リスト」を手に入れる。

 これは、イギリスのマカトン協会のオンラインショップで無償で手に入れることができます。

http://www.makaton.org/khxc/gbu0-catshow/free.html
The Makaton Charity / Online Shop / Free Resources

 こちらのページの最初にある無償リソース「Signs Word List」をダウンロードします。そうすると、英語ではありますが、マカトン・サインで使われる語彙のリストを入手することができます。基本的には、このリストの「CV(Core Vocabulary)」とされている単語が、「基本語彙」になってくると思われます。
 もちろん、実際にマカトンサインを学ぶわけではないので、もし同様の「生活に必要最低限な基本語彙のリスト」があれば、そちらを使っても構わないと思います。

(2)日本手話の辞書を手に入れる。

 マカトンサインは、手話をかなり取り入れて作られているらしいです。(詳しくは知りません)
 まあ、仮に違っていたとしても、私たちが容易に知ることができるハンドサインといえば手話しかありませんし、何より手話はオープンなノウハウだというメリットがありますので、ここでは手話辞典を入手することにします。

 例えば、この辺りなど。



(3)(1)と(2)を組み合わせて、オリジナルのサイン体系を作っていく。

 療育という特別な目的のために厳選された(1)の語彙リストを参考にして、子どものために必要と思われるサイン(語彙)を、(2)の手話辞典から拾ってきて当てはめることで、オリジナルの「日本手話サイン体系」を作ることができます
 語彙数でいえば、(1)の語彙数<<(2)の語彙数という関係がありますから、仮に(1)に含まれない語彙を取り入れたい、と思ったときでも、すぐに(2)を参照して体系を拡張していくことができるという柔軟性もありますし、それによって構築された体系は単語レベルでは日本手話と互換性がある(手話には独自の「文法」がありますから、完全互換にはなりません)ので、手話を学んでいる人にはサインが通じるかもしれないというメリットもあります。


重要なことは、このやり方なら、公開されている情報のみからサイン体系を作るため、少なくとも守秘義務的なしばりからはまったく自由であり、このやり方で創作したオリジナルのサイン体系を、親の会などで共有したり、ブログで公開したりといったことが自由にできるはずだ、ということです。

もしかすると、有志によってネットに公開されたサイン体系が、語彙が整備されたり手の動きがブラッシュアップされて、誰もが自由にアクセスできる「オープンソースな療育用サイン体系」が生まれる、といった動きが出てくることもありえるかもしれません。

ネットというメディアの誕生によって、療育そのもののあり方もオープンかつフラット化していくんじゃないかと思いますし、そうなっていくべきなんじゃないだろうか、と個人的には思っています。
posted by そらパパ at 21:43
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