2009年06月08日

「七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!」をあえて読み解く(2)


七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!
七田 眞
KKロングセラーズ

上記の本を「とっかかり」として、著者である七田氏、あるいは「七田式」の自閉症に対する考えかたについて、一定の影響力をもった存在だということもふまえ、いちど掘り下げて考察してみよう、というシリーズ記事の第2回です。

さて、前回の記事では、本書が述べる数々の「自閉症の原因」とされる指摘から、本書の議論が一見科学の殻をかぶっているように見えて、実は超物理的な精神世界や、「テレパシー」「波動」といったものを議論の中核におく、オカルト的なものであるということを書きました。

もう少し引用を続けます。
自閉症の「原因」も雑多にいろいろ書かれていましたが、一方、自閉症を「治す」方法も、いろいろ提案されていてよりどりみどりです(じゃなくて、「全部やれ」なんでしょうね)。内容に入っていくと引用が長くなりすぎますし、それにはあまり意味がなさそうなので、主にキャプション(表題)のほうを拾う形で見ていきたいと思います。

心のエネルギーで治そう
(67ページ)

子どもの間脳意識に暗示を入れよ
(69ページ)

「抱っこ法」で自閉症は治る
(82ページ)

言葉が育っていない自閉症に対しては、言葉よりも大人の目線、テレパシー、音声、暗示などが容易に脳幹に届くのです。
(111ページ)

その方法(そらパパ注:右脳を活用した教育)が、抱っこ、愛撫、暗示、イメージトレーニングなのです。
(173ページ)

子どもが寝入った後、子どもの額に手をかざして気のエネルギーを注入してあげましょう。
(186ページ)

ビタミン、ミネラルで大幅に知能が改善する
(199ページ)

ルイボスティーを飲むようにするとよいでしょう。
(204ページ)

宿便を抜き血液をきれいにする
(209ページ)

エネルギーを入れれば、笑いが出てくる
(214ページ)

上記で分かるように、働きかけの中心は、「心への働きかけ」(当ブログでは最近よく「念力による療育」と呼んでいるもの)と、食事療法だということができそうです。それに加えて、ボリュームがありすぎて上記では引用できなかったのですが、フラッシュカードやドッツと呼ばれる「右脳課題」や、毎日何キロも歩かせたり何千回も「その場跳び」をやらせるような過激な「運動課題」などがあり、これらによって「七田式の自閉症療育」は構成されているようです。

やはり、ある意味すごい?なあと思うのは、これだけ多種多様な手法が提案されているにも関わらず、現代の自閉症療育の主流といわれ、実績もあがっていると言っていい、ABA、TEACCH、絵カードといった療育とはまったく無縁の世界で動いているということです。
実際、ここで紹介されている働きかけのうちどれにどの程度の効果があるのか(あるいは場合によっては「逆効果」があるのか)よく分からないのですが、そこはいかにもこういった本らしく、「こんなに良くなりました!」というエピソードが満載です。このような構成は「エピソード主義」と呼ばれ、統計的に効果が実証できないときに採用されがちなやりかただということをぜひ知っておいてください。

また本書には、そんな「自閉症を治すのに成功した」親からの「喜びの報告」がいくつも載っているのですが、さまざまな親御さんがばらばらに書いているはずなのに、どれも判で押したようにそっくりな文体なのはとても不思議です。さらに言えば、「言葉が出て普通の子になりました」というケースが大量に紹介されている割には、どれもみな親や指導者からの報告ばかりで、「私がその『普通になった』張本人です」という文章を寄せている当事者からの報告が皆無だということなど、つっこみどころが満載なのですが、もうここまでくるとその辺りは「ささいなこと」だという気もしますので、あまり深追いはしません。

ある意味「非常に面白い」本なので、興味があれば古本を探して読んでみてもいいでしょう。

話題を戻して、逆に「予想外だったこと」というのは、本書がまがりなりにも「自閉症の療育書」としての「体裁」を一応もっていることです。

中身がトンデモであることを脇に置くと、本書は、自閉症とはどんな障害で、何が原因で、どうすれば「良くなる」かを説明したうえで、家庭での毎日の療育として具体的にどんなことにどれくらい取り組んでいけばいいのかといった内容が、章をわけて構成的に解説されていることに気づきます。
単に、「教室に通うと自閉症が良くなりますよ!」とだけ書いて「良くなった」エピソードを大量に載せて(もちろん載ってはいるのですが)それで終わり、あとは教室に来てください、というのではなく、家庭で療育に取り組むとしたらどんなことをすればいいのかが、(繰り返しますが、トンデモではあるのですが)かなり具体的に書いてあるのです。構成だけ見れば、それなりにしっかりした本だ、とも言えるでしょう。

ここで、本書の目次を見てみます。
第1章 ダメな子どもなど一人もいない
第2章 なぜ自閉症児・障害児がふえているのか
第3章 母親には子どもを治す力がある
第4章 心の子育てが子どもの異常を解消する
第5章 七田式右脳教育で自閉症児は治る
第6章 早期総合訓練でダウン症児もこんなに変わる
第7章 右脳の力を利用して左脳を育てるプログラム
第8章 毎日の取り組みプログラム
第9章 「食事」と「手当て」で子どもはどんどん変わる
第10章 小児科医・真弓定夫先生に聞く「子どもを元気に育てる方法」

第1章は導入、第2章で自閉症の原因を説き、第3章から第6章までが療育論(自閉症の本なのになぜかダウン症の章が混じっていますが)、第7章から第9章がより具体的な家庭での取組み内容、第10章はある種のテスティモニアル(他の人に賛成意見を言ってもらうことで内容の信頼性を高める広告的手法)です。

このように、ある程度具体的な内容まで含みつつ、構造的に書かれている側面がありますから、本書内容の是非について、それなりに議論ができます。

そこで次回以降、野心的な試み(笑)として、この本が自閉症とその療育についてどのようなストーリーを語り、親がそのストーリーに従うことは自閉症児にとってどのような意味を持ちうるか、という観点から本書をある程度本格的に読み解いてみようと思います。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 21:42
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