2005年12月26日

パニックを減らすために(3)

今回、過去の記事にリンクを張るために記事を読み直していたところ、「パニックを減らすために」の記事が、「次回に続く」のまま残っていることに気づきました。

そこで、ずいぶん期間が空いてしまいましたが、残りの部分について書いておきたいと思います。

パニックを一言で表現すれば、「不適切な要求行動」だといえます。
「パニックを抑える」という考え方は、「パニックは不適切な行動だからやめさせなければならない」という発想から生まれてくるもので、もちろんこれはこれで意味があります。
これまで書いてきたとおり、パニックを抑えるためには行動療法の「消去」というテクニックを使い、「パニックを起こしても無視する」という反応パターンを取ることになります。
また、「パニックを起こしたら慌てて対応してパニックをやめさせる」、あるいは「パニックを起こしたら罰を与える」という対応は、パニックを強化、もしくは望ましくない方向に変容させる可能性があるので、意識して行なわないようにしなければなりません。

でも、これだけではきっと、パニックを多少は減らせるかもしれませんが、十分なコントロールができるところまではいかないでしょうし、問題の根本的な解決にはなっていない、と思うのです。

もう一度、先ほどのパニックの定義を見てください。
パニックとは、「不適切な要求行動」です。

行動療法によりパニックを減らす働きかけだけを行なった場合、子どもがパニックで表現したかった「要求行動」は、一体どこへ行くのでしょうか

子どもは、パニックが楽しくてやっているわけではありません。(もしそうだとしたら、それは「自己刺激」ですから、まったく違う対処方法が必要になります。)
何か要求があって、それを表現する方法としてパニックを起こしているわけですから、パニックだけに対応していては、パニックの問題を本当には解決できないのです。

ここでたとえ話を2つ書きます。

おもらしをする子どもに、「おもらしするな」と言って禁止しただけでは、「おしっこしたい」ときの対処方法がわからず、結局がまんできなくなってまたおもらししてしまうでしょう。おもらしという「不適切な行動」を減らすのと同時に、トイレで用を足すという「適切な行動」を教えることで、初めておもらしの問題を解決することができるのです。

あるいは、貧困ゆえに犯罪を犯してしまう若者をただ罰するだけでは、結局「まっとうに食っていく」ことができず、きっとまた犯罪を犯すほかなくなるでしょう。犯罪という「不適切な行動」を罰するのと同時に、貧困を解決し「適切な生産行動」ができるような各種政策を実施することが、真に有効な犯罪対策になるわけです。


パニックに対する対処もまったく同じです。パニックを抑える働きかけをするなら、パニック以外の「適切な」要求行動を伸ばす働きかけを同時に行なうことが絶対に必要なのです。

パニック以外の「適切な」要求行動とは何でしょうか。
ことばが出るお子さんであれば、ことばによる要求は適切な要求行動ですから、それを伸ばしていくことを考えます。
そこまで到達していないお子さんでも、例えば指差しやカードの提示ができるならそれを伸ばすことができますし、クレーン行動しかできないお子さんであっても、パニックに比べればクレーンは十分に「適切な」要求行動です。

クレーン行動(大人の手をつかんで目的物まで運んで要求をかなえようとする行動)を、自閉症の問題行動の1つとしてやみくもにやめさせようとする考え方があるようですが、クレーン以外の要求行動が発達していないのにクレーンをやめさせるのは、子どもにとって要求を表現する方法がなくなってしまう、非常に危険なやり方だと思います。

だって自分が同じ状態になったら、あとはパニックするしかないじゃないですか。

自閉症児の要求行動は、泣くだけから始まり、クレーン、指差し・手差し、ことばと、ゆっくりと発達していきます。それらすべては、その発達段階のお子さんにとって、「適切な」要求行動なのです
それがどんなに周りの「普通の子」と比べて遅れていても、その要求に(応じるにせよ断るにせよ)そのつど応えていくのが大変であったとしても、そういった要求行動にちゃんと応えてあげて、「適切な要求行動」が強化され伸びていく環境を作らなければ、結果として適切な要求行動の発達を阻害し、パニックを奨励しているのと同じことになってしまうわけです。
なお、「適切な要求行動を伸ばす」やり方については、また機会をみて改めて考えてみたいと思います。

最後に、前回と一部かぶりますが、適切な要求行動を伸ばしパニックを抑制するための親の「反応パターン」を整理しておきます。

1.適切な要求行動があった時点で、応じるか応じないかを決める。
 応じる場合はすぐに応じ、適切な要求行動を強化する。

2.応じないと決めた場合は、その後パニックが起こっても絶対に応じず、パニックを絶対に強化しない。

3.いきなりパニックで要求を開始した場合も、応じるか応じないかを決める。
 応じる場合は、パニック中は無視を貫き、パニックが終わった後で応じるようにして、「パニックをやめる」という行動を強化するようにする。応じないと決めた場合は、パニック中もパニック後も何もしない。
posted by そらパパ at 23:14
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