2008年07月10日

マンガでわかる心理学(立ち読みレビュー)

心理学の本とか自閉症、発達障害の本は非常にたくさん出ています。
そのなかで、当ブログの「ブックレビュー」の記事は、実際に買って最後まで読んだものに限定して書いています。(そうでないと無責任だと思っているので)

ただ、書店で立ち読みの段階で「これはだめだ」と思って購入しないで終わらせてしまうものも多くて、そういった本はこれまでレビューを書いたことはありません。
ただ、そういった本のなかでも、当ブログを読んでくださっているような方が、「つい買ってしまいそうな本」については、「立ち読みレベルでしか読んでいません」ということを断ったうえで、なぜその本を「だめだ」と思ったのかについて書いておくべきかな、と最近思っています。

そんなわけで、「立ち読みしかしていない本の(原則として)批判的なレビュー」の記事を、今後ときどき書いていこうと思います。

今回はこちら。


マンガでわかる心理学-座席の端に座りたがるのは?幼いころの記憶がないのはなぜ?
著:ポーポー・ポロダクション
ソフトバンククリエイティブ
↑買うことを推奨しているわけではありませんが、「インデックス&入り口」としてアフィリエイトリンクを貼っておくことをご容赦願います。
 このリンクからAmazonに入って、この本以外の他の本を買っていただくと、当ブログからの紹介扱いになりますので、そういう風に使っていただければ幸いです。


序章 心理学とは?
第1章 自分の知らない本当の自分(深層心理学と性格心理学編)
第2章 人はなぜエレベーターの上を見る?(社会心理学編)
第3章 なぜバーは薄暗いのか?(恋愛心理学編)
第4章 知覚と記憶の不思議(認知心理学編)
第5章 いろいろな心理学(産業、発達、犯罪、色彩心理学など)
第6章 もっと使える心理学(心理学応用編)


心理学に関する新書や実用書(?)って結構出ていますが、正直、「科学としての心理学(大学の実験心理学課程で学ぶような心理学)」をちゃんと学べるような本は極めて少ないのが現状です。
実際、心理学関連の新書はほとんど目を通しているつもりですが、「これはまあまあだな」と思えるものは、だいぶ以前にご紹介したこの本くらいしかありません。でもこの本ももう絶版のようです。

最近出たこの本は、ソフトバンクがうまくプロモーションしているせいなのか、書店で平置きにされているのをよく見かけます。
私も、もし心理学をうまく一般の人むけに紹介している新書があればぜひレビューを書きたいと常に思っているので、早速買うことを前提に立ち読みしてみたのですが・・。

こ れ は ひ ど い

序章にわざわざ「心理学とは」という章まで置いて始めているから、てっきり心理学に対する世間の誤解を解こうという話から始まるのかと思ったら、いきなり「ロミオとジュリエット効果」とか「タイタニック効果」といった、率直にいってあまり実質があるとは言えない社会心理学の実験が「心理学だ」という話で始まって、「あーあ、またいつものパターンだ」と相当がっかりさせられます。

そして、1章でいきなりユングなどの「深層心理学」に入ってしまいます。
一般に実験心理学の世界では、ユングは「文学や哲学(思想)としては面白いかもしれないけど、『科学としての心理学』では断じてない」という評価になっていますから、そういう意味では第1章の段階で、私が評価する心理学の本としては落第です。(実際、内容をみてみると、「こんな夢を見たときのあなたの心理は○○だ」といった占いレベルの「夢診断」が延々10ページにわたって書かれていたりして、この時点ですでに「心理学の本」ではありません

その後も、「恋愛心理学」なんていう、少なくとも大学の心理学の課程ではまともに取り上げられていないような話題に1章まるごと使っていたり、「認知心理学」にはどんな内容が書いてあるかと見てみたら、延々と錯視図形が掲載されているだけだったりで、まさに「大学で学ぶような心理学から逃げまくっている」内容になっています。
そして最後の章は、「夫のウソを見破る」とか「買って欲しいものを夫に買わせる」とか、完全に「心理学で相手をあやつる!」みたいな低俗な心理学もどきの本とほとんど同じ内容に堕して終わります。

本当に驚くのは、本書は心理学の世界で一世を風靡して、今でも心理学の研究スキームとしては王道中の王道である、「学習理論」に関する話題がすっぱりと抜け落ちているということです。
当ブログを読んでいる方なら、「強化」とか「強化子(ごほうび)」とか「消去(無視)」とか「代替行動分化強化」といったことばに触れたことがあると思いますが、これらはすべて学習理論と関連している用語ですね。この「学習理論」だけに徹底的にこだわる心理学が「行動主義心理学」と呼ばれる立場になりますが、そういった立場をとらない場合であっても、この「学習理論」を知らないと心理学の実験は絶対に成り立ちません。

ところが、この本では、心理学を学ぶときには絶対に避けて通れないはずの「学習理論」の話がまったく出てこないのです。これは本当にありえない。
これはほんとに心理学を専攻した人が書いたんだろうか、と疑問に思って奥付を見ても、グループ名が書いてあるだけで著者のプロフィールはありません。代表っぽい人のプロフィールもどこにも書いていなくて、少なくとも積極的に著者のプロフィールを明らかにするつもりはないらしいということが分かります。

簡単に書きます。
この本はダメです。類書と比べても、特にひどいと評価せざるを得ません
この本を読んでも、心理学がどんな学問かは見えてきません。それどころか、世間で誤解されている「心理学もどき」を追認するだけで終わってしまいます。

こんな本を読むくらいだったら、心理学全般ではなく、先の「行動主義心理学」に限定した内容にはなりますが、当ブログ殿堂入りの下記の本を読み直したほうが断然学ぶところが多いと思います。


紹介記事

こちらの本は、少なくとも大学の教養レベルは軽くクリアしている「本格派の心理学入門書」です。心理学の、スリリングな本当の面白さが伝わってくる名著です。
posted by そらパパ at 19:59
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