2009年10月05日

行動分析学を学ぼう-療育リテラシー最初の一歩

自閉症児の親御さんが療育について学んでいくにあたって、まず身に着けたい「考えかた」がある、と私は考えています。
その「考えかた」は、療育の見通しをよくして、「抜け出せない迷宮」に迷い込んでしまったり、ある種の「一見よさそうで、実は無意味な療育法」にだまされてしまうのを防いでくれます。

その「考えかた」について、具体的な例からみていきましょう。

例えば、仕事をさぼっている人をみて、「あいつは『やる気がない』から、いつもさぼっているんだ」と考える。あるいは、人前でうまく話ができない人を見て「彼は『内気』だから、人前で話すのが下手だ」と考える

常識的な説明に見えるかもしれませんが、実はこういった説明で納得してしまうことは、自閉症の療育にとっては、かなり「まずい」のです

なぜかといえば、

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2009年09月30日

自閉症のDIR治療プログラム(立ち読みレビュー)

この本といいPRTの本といい、ちょっと値段が高すぎです。
申し訳ないですが、今回も「立ち読みレビュー」でご容赦ください。


自閉症のDIR治療プログラム
著:S.グリーンスパン、S.ウィーダー
創元社

はじめに─よりよい関わりをめざして
第1部 明るい未来のために 誤解と事実、早期兆候と新しい枠組み
 第1章 自閉症再考─われわれのアプローチ
 第2章 ASDやアスペルガー症候群についての誤解と誤診
 第3章 ASDの早期徴候―乳幼児早期に発見し、関わりを始めるために
 第4章 ASDの新しい目標―DIR/Floortimeとは?
第2部 DIRとは? 子どもが周囲と関わりをもち、コミュニケーション能力を伸ばし、思考力をつけていくために家族ができること
 第5章 家族主導で
 第6章 注意を向け、関わりをもつために─子どもをみんなの世界に導くには
 第7章 双方向コミュニケーションと問題解決能力を身につける
 第8章 シンボル、考え、言葉
 第9章 論理的な考え方と現実の世界
 第10章 抽象概念と深く考える力
 第11章 生物学的特徴.─五感を通じて世の中を経験する
 第12章 生物学的特徴.─視覚と聴覚に問題がある場合
第3部 Floortime
 第13章 Floortime─家庭でのアプローチ
 第14章 Floortimeとは?
 第15章 いつでもどこでもFloortime─どこでも学ぶことはできる
 第16章 困難なとき─子どもからのリードに従いつつ発達を促すには
 第17章 思春期や成人期のASD.─生涯続く学習(ヘンリー・マンとの共著)
 第18章 思春期や成人期のASD.─学びの場の設定
 第4部 DIRによるアセスメントと療育
 第19章 DIR/Floortimeによるアセスメント
 第20章 DIR/Floortimeによる包括的療育プログラム
 第21章 教育プログラム―考える力、コミュニケーション、学力を伸ばすために
第5部 問題行動への対応
 第22章 お決まりの台詞とエコラリア
 第23章 自己刺激行動、刺激への強い欲求、過活動、回避行動
 第24章 日々の問題点―食事、トイレ・トレーニング、衣服の着脱など
 第25章 問題行動
 第26章 感情のコントロール
 第27章 気持ちの崩れと退行
 第28章 ソーシャル・スキルを伸ばすために
文 献
索 引
訳者あとがき

以前、記事にしたTIME誌の自閉症特集でも、妙に強調して取り上げられていた療育法「DIR」についての本。
異様に高い値段とがっしりした体裁から、専門家むけの専門書という位置づけなのは明らかです。

DIRの最大の特徴は、「フロアタイム」と呼ばれる働きかけですが、これは簡単にいうと、「20分間、養育者が子どもの目線まで降りて、子どもとインタラクティブにかかわりあう」というもののようです。

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2009年09月14日

心理学で何がわかるか(ブックレビュー)

完成度の高い心理学入門書。心理学に関心のあるすべての方に。


※いまならAmazonの書籍は金額にかかわらず送料無料です。

心理学で何がわかるか
著:村上 宣寛
ちくま新書 802

第1章 心理学とは
 なぜ心理学を選んだか
 科学的方法の基本
 エビデンス・ベイスドの動き
 心理学は統計を使う
 なぜ研究法が大事なのか
第2章 人柄を決めるのは遺伝か
 神話の時代
 発達研究の特殊性
 遺伝の影響
 出生順位の影響
 親の養育態度は子供に影響するか
第3章 人間は賢いか
 愛猫ジニー
 動物は考えるか
 類人猿に「言語」を教える
 心の理論とは
第4章 意識の謎
 意識を失う
 意識の神経心理学
 自由意志は幻想か
 意識が人間を規定するか
第5章 記憶は確かか
 最初の思い出
 幼児期の記憶
 偽りの記憶
 記憶力は鍛えられるか
 忘却理論
 記憶のためのプラン
 記憶のための最良の戦略とは
第6章 人と人の間で
 ある雨の日に
 他者を知る
 なぜ人を好きになるのか
 なぜ人は協調するのか
 なぜ人は攻撃するか
 あなたは凶悪犯か
第7章 異常な世界へ
 学長への抗議文
 臨床心理学とは
 アセスメントとはどういうことか
 うつ病とは
 うつ病の治療法
 あなたはうつ病か
 冷たい統計家と暖かい臨床家

心理学の入門書には大きく分けると2つあって、1つは「心理学にはどんなジャンルがあり、有名な実験にはどんなものがあるか」を羅列したようなもの、もう1つは「心理学とは何でないか」を中心に語るもの(曰く、心理学はフロイト・ユングの精神分析ではなく、血液型性格診断ではなく、読心術ではない、内面を洞察する学問ではない、etc.)ですが、前者はつまらない雑学本のようになりがちで、後者は哲学っぽくなるか特定の立場にしばられがちで、どちらにしても「心理学そのものを面白く解説する本」にはなかなかならないものです。
そんななか、本書はこの両方の要素を盛り込みつつ、心理学全体を統一したトーンでしっかりカバーしようという、かなり意欲的な内容になっています
(ちなみに、この2種類以外に、精神分析モドキや血液型性格診断、読心術・「心理操作」などを取り扱った「エセ心理本」というジャンルがあり、心理の本のコーナーで扱われている本の9割以上はこれになりますが、これらは心理学の本ではないので無視してください)

もちろん、新書という限られた紙面でそこまで欲張るからには、語れる範囲はかなり限定されたものになってしまいます。実際、本書で語られている具体的なテーマは、せいぜい両手で足りる程度のものに絞り込まれています。
とはいえ、目次をみてわかるとおり、数少ないテーマのなかで心理学のさまざまな領域が広くカバーされています(第1章:心理学研究法、第2章:発達心理学、第3章~第5章:認知心理学(知能/言語、意識、記憶/学習)、第6章:社会心理学、第7章:臨床心理学)し、1人の著者が書いているために、統一感があって論旨にもブレがありません。さらに言えば、こういった入門書でよくある、全体の半分が臨床心理学(の複雑怪奇な概念解説)で、残りの半分のうちの大部分が社会心理学(の変な実験)といった「バランスのおかしさ」がなく、「学問としての心理学」の全体像の、かなりいいミニチュアになっていると思います。

さらに、本書には以下のような高評価ポイントがあります。

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2009年09月03日

機軸行動発達支援法(立ち読みレビュー)

率直に言って「親御さん向き」ではないですが、ABAマニアな方なら。



機軸行動発達支援法
著:ロバート・L. ケーゲル、リン・カーン ケーゲル
二瓶社

1節 機軸行動の指導について
2節 コミュニケーションの発達
3節 社会性の発達
4節 行動問題の減少と子どもの興味の拡大

ものすごく堅苦しいタイトルになっていますが、この「機軸行動発達支援法」というのは、ABAの世界では多少有名な「PRT (Pivotal Response Treatments)」の(本書における)訳語です
PRTとは何か、というのは、いまだに私も完全に理解しているとは言いがたい(本書の該当するページをじっくり読んでも、なお分かりませんでした)のですが、ロヴァースの流れをくむ早期集中介入スタイルのABAの一種で、療育の対象となる重要な発達課題の一群を「機軸行動」として整理し、そこに重点をおいて行動形成していく(そうするとそれ以外の行動にも波及効果があるとする)療育法のようです。
トレーニング自体も、ロヴァース式にみられるような厳格なフォーマットにのっとった課題遂行(ディスクリート・トレーニング)よりも、より自由で緩やかなスタイルを好み、日常生活のなかでのフリーオペラント的な働きかけも重視しているようですね。
こちらに、参考になりそうなまとめPDFがありました。)

本書は本格的なPRTの入門書ということで、レビューのニーズもありそうですし、買ってしっかりレビューしようかな、とも思ったんですが・・・

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2009年08月03日

はじめての言語ゲーム(ブックレビュー)

ヴィトゲンシュタインと自閉症が、鮮やかにつながります。


はじめての言語ゲーム
著:橋爪大三郎
講談社現代新書

第1章 ヴィトゲンシュタインのウィーン
第2章 数学の基礎
第3章 ケンブリッジの日々
第4章 『論理哲学論考』
第5章 放浪の果てに
第6章 言語ゲーム
第7章 ルール懐疑主義
第8章 1次ルールと2次ルール
第9章 覚りの言語ゲーム
第10章 本居宣長の言語ゲーム
第11章 これからの言語ゲーム

著名な哲学者ヴィトゲンシュタインの、特に「言語ゲーム」と呼ばれる概念についての入門書です。

ですが、ただの哲学入門には留まりません。
著者さえも意図していませんが、この本は、自閉症の療育に極めて深い示唆を与えてくれる「自閉症療育の哲学」になっているのです

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2009年07月23日

「哲学的クリティカル・シンキング」の本(クイックレビュー)

クリティカル・シンキング(以下「クリシン」と呼びます)については、以前もまんがをベースにしたユニークな本をご紹介し、また、自閉症療育において非常に重要な考えかただという話題を繰り返し書いていますが、最近、「哲学的クリシン」というジャンル?があることを知り、いくつかの本を読んでいます。

これまでご紹介してきたようなクリシンは、どちらかというと「心理学的クリシン」で、人の認知の誤りやすい傾向とか、だまされやすさといったことを踏まえたうえで、そういう誤った議論をしないためにはどうすればいいかということを考える、どちらかというと「現状修復型」のアプローチです。
それに対して「哲学的クリシン」は、論理的な議論とはどういうものか、何を疑い、何を信じるべきか、といった「そもそも論」から出発し、論理的・合理的な議論をどのように構築していけばいいかを考える、どちらかというと「ゼロから建て直し型」のアプローチになるわけです。

ここまで読んで、そんな「哲学的なこと」を考えても、日々の生活にも療育にも何の役にも立たないよ、と直感した方にこそ読んでいただきたいのが、哲学的クリシンの入門書であるこちらの本です。


哲学思考トレーニング
著:伊勢田 哲治
ちくま新書 (545)

第1章 上手に疑うための第一歩―日常会話のクリティカルシンキング
第2章 「科学」だってこわくない―科学と疑似科学のクリティカルシンキング
第3章 疑いの泥沼からどう抜け出すか―哲学的懐疑主義と文脈主義
第4章 「価値観の壁」をどう乗り越えるか―価値主張のクリティカルシンキング
第5章 みんなで考えあう技術―不確実性と合意のクリティカルシンキング

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2009年07月13日

「七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!」をあえて読み解く(6)


七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!
七田 眞
KKロングセラーズ

シリーズ記事の最終回です。
いよいよ最後の仕上げとして、七田式の本が語る「ストーリー」が、自閉症児の親御さんにとって「有益」なものになりうる可能性があるのかどうかについて考えていこうと思います(残っている分を1回分にしたら超長文になってしまいました)。

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2009年07月06日

「七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!」をあえて読み解く(5)


七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!
七田 眞
KKロングセラーズ

このシリーズ記事では、七田式の本が語る自閉症についての「ストーリー」を、科学的根拠の乏しさは一旦脇において、一種の「ファンタジー」として読み解いたうえで、その「ストーリー」が自閉症児とその親御さんにとって有益なものになりうるのかどうかについて考えています。

自閉症についての「ストーリー」というものが、大きく分けて「障害の原因」と「療育法・治療法」から構成されると考えると、前回の読み解きでは、そのうち「療育法・治療法」を先に取り上げてきたことになります。

本書が述べる自閉症療育の中心には、「神としての脳」がある、と考えることができるでしょう。

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2009年06月29日

「七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!」をあえて読み解く(4)


七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!
七田 眞
KKロングセラーズ

本書を、科学的裏付けの有無とは切り離した、一種の「仮想的な療育フレームワーク」としての仮説モデルないしストーリー、という視点で読んでいくとするなら、その「ストーリー」には、いくつかキーワードがあるように思います。

※以下、いちいち突っ込んでいくときりがないですし、あえて反論せずに本書の主張をそのまま書いていきます。実際にはほとんどすべての議論が「突込みどころ満載」であることは留意してください。

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2009年06月18日

単純な脳、複雑な「私」(ブックレビュー)

最高に魅力的な「脳科学入門書」です。


単純な脳、複雑な「私」
著:池谷裕二
朝日出版社

第1章 脳は私のことをホントに理解しているのか
第2章 脳は空から心を眺めている
第3章 脳はゆらいで自由をつくりあげる
第4章 脳はノイズから生命を生み出す

池谷裕二氏は、私がいま一番注目している脳科学者です。
その理由は、以前池谷氏の別の本をレビューしたときにも書きましたが、彼が、脳を複雑系ととらえていて、その「複雑系らしさ」へのまなざしを死守しながら、何とか還元主義的な科学のフォーマットで研究していくという独特なスタンスをとっているからです。

脳科学者でありながら、還元主義者ではない。
そして、還元主義者ではないけれども、心身二元論者でもない。(むしろ、本書を読んでいくと、池谷氏が唯心論寄りであることが伺えます)
もちろん、還元主義の限界を見据えつつも、決して疑似科学に近づいていくことはない。

そういう池谷氏の科学者としてのスタンスに、私は強く共感します。

本書は、そんな池谷氏の視点から整理された脳科学の最新の研究成果が、母校の高校生たちに向けて噛み砕いて語られた、口語体の「講義録」です。だから、とても刺激的で、新鮮な驚きに満ちていて、しかもとても読みやすいです。

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2009年06月15日

「七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!」をあえて読み解く(3)


七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!
七田 眞
KKロングセラーズ

このシリーズ記事、特にこの第3回目の記事以降では、上記の七田氏の本が「トンデモ本」であることを前提としつつも、この本が自閉症とその療育についてどのようなストーリーを語り、親がそのストーリーに従うことは自閉症児にとってどのような意味を持ちうるか、という観点からある程度本格的に読み解いてみようと思います。

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2009年06月08日

「七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!」をあえて読み解く(2)


七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!
七田 眞
KKロングセラーズ

上記の本を「とっかかり」として、著者である七田氏、あるいは「七田式」の自閉症に対する考えかたについて、一定の影響力をもった存在だということもふまえ、いちど掘り下げて考察してみよう、というシリーズ記事の第2回です。

さて、前回の記事では、本書が述べる数々の「自閉症の原因」とされる指摘から、本書の議論が一見科学の殻をかぶっているように見えて、実は超物理的な精神世界や、「テレパシー」「波動」といったものを議論の中核におく、オカルト的なものであるということを書きました。

もう少し引用を続けます。
自閉症の「原因」も雑多にいろいろ書かれていましたが、一方、自閉症を「治す」方法も、いろいろ提案されていてよりどりみどりです(じゃなくて、「全部やれ」なんでしょうね)。内容に入っていくと引用が長くなりすぎますし、それにはあまり意味がなさそうなので、主にキャプション(表題)のほうを拾う形で見ていきたいと思います。

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2009年06月02日

「自」らに「閉」じこもらない自閉症者たち(立ち読みレビュー)

※どうも、無視できない「変な本」が続々と登場してきて、「変な本のレビュー」を続けざるを得ないような状況になっています。発達障害がクローズアップされるようになり、特定の勢力が「お金を稼げる場所」として集まり、一定の「影響力」を持ち始めているような、嫌な印象です。
そんなわけで、ブログのなかが「変な本のレビューだらけ」になってしまっていますが、いましばらくご容赦ください。


動きが活発化してますね。



「自」らに「閉」じこもらない自閉症者たち―「話せない」7人の自閉症者が指で綴った物語
編:ダグラス・ビクレン
エスコアール

エスコアールといえば、もはや自閉症界(というか自閉症FC界)の有名人と言っていい、東田直樹さんの本をたくさん出している出版社として知られていますが、この会社は最近、出版活動を越えた、FC(ファシリテイテッド・コミュニケーション:独力でコミュニケーションできない障害者が、特殊な他人の補助によりコミュニケーションできるようになると主張する代替療法)全般の普及活動を活発化させています。

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2009年05月14日

石川県にて講演をおこないます。

こちらにて案内されているとおり、きたる6月21日(日)に、いしかわTEACCH研究会のお招きにより、石川県金沢市にてお話をさせていただくことになりました。

日時  6月21日(日)9:30~12:30
場所  金沢市教育プラザ富樫 1号館121室
テーマ 自閉症の認知システム~療育のためのヒント~

※テーマは、上記のものが最終タイトルです。(Web上の仮題もまもなく修正されると思います)

今回は、前回前々回とは異なり、2冊めの本ではなく、1冊めの本の内容を中心にお話させていただく予定です。
具体的なトピックとしては、心の哲学心理学と「こころ」一般化障害仮説、プロジェクトとしての家庭療育、科学の目、といったものになる予定です。

参加申込受付中とのことですので、近隣にお住まいの方で、興味をお持ちいただけた方は、ぜひご参加ください。
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2009年05月11日

「七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!」をあえて読み解く(1)

※このシリーズ記事は、もう1年くらい前に書いて、そのままリリースする時期を逸して塩漬けになっていたものですが、先日この本の著者の七田眞氏が死去したこともあり、これ以上放置しておくと出せない記事になってしまいそうなので、まとめてリリースすることにしました。全6回、よろしくお願いします。

先日、古本屋さんで偶然、おお、これがあの有名?な!という本(良くも悪くも)を見つけて、105円だったので思わず買ってしまいました。


七田式超右脳教育法で自閉症の子が良くなる!
七田 眞
KKロングセラーズ
↑もう絶版になっているようで、古本しか買えないようです。古本なら興味本位で買っても、あちら方面に印税が払われることはありません。

第1章 ダメな子どもなど一人もいない
第2章 なぜ自閉症児・障害児がふえているのか
第3章 母親には子どもを治す力がある
第4章 心の子育てが子どもの異常を解消する
第5章 七田式右脳教育で自閉症児は治る
第6章 早期総合訓練でダウン症児もこんなに変わる
第7章 右脳の力を利用して左脳を育てるプログラム
第8章 毎日の取り組みプログラム
第9章 「食事」と「手当て」で子どもはどんどん変わる
第10章 小児科医・真弓定夫先生に聞く「子どもを元気に育てる方法」


これです。
この本の存在は知っていましたが、発行されてまだ6年(2003年初版)なのに既に入手が難しくなっていること、そもそもあちら方面に印税を払いたくないこと、他の著作をふまえれば本書も基本的には「トンデモ本」であることはほぼ確定だということなどから手を出していませんでしたが、まあ古本で105円なら、この人がどんなことを言っているかを知るのも悪くないだろうと思って買うことにしました。
実際、七田氏・七田式について調べていて当ブログにいらっしゃる方も少なくないようですので、彼と自閉症についての話題を改めて取り上げるのも悪くないとも思いました。

読んでみて、予想どおりだったことと予想に反していたことがありました

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2009年05月04日

心理学入門一歩手前―「心の科学」のパラドックス(ブックレビュー)

GWなので、ちょっと趣向をかえた本をご紹介。
心理学のまわりには、こんなにも豊かで思索に富む海が広がっているのだということを教えてくれる好著です。



心理学入門一歩手前―「心の科学」のパラドックス
著:道又 爾
勁草書房

序 章 学問としての心理学
 1 はじめに
 2 心理の学と心の理学
 3 本書の目的
第一章 心について考える
 1 「心」の語源
 2 心の三つの問題
 3 古代の心観
 4 現代の心観
第二章 現代心理学の姿
 1 心理学の対象と方法
 2 具体例――誤った信念課題
 3 現代心理学の諸分野とその関係――二重四環モデル
 4 心理学の四つの方法
 5 基礎と応用?
 6 対象と方法による統合
第三章 科学について考える
 1 科学とは何か
 2 一七世紀における近代科学の成立
 3 二つの世界観
 4 一九世紀における第二次科学革命
 5 「科学的」とはどういうことか
 6 科学は普遍的で絶対的な真理をもたらすのか
第四章 心理学の誕生
 1 経験論哲学
 2 医学における精神病理学の形成と力動精神医学の登場
 3 アメリカ合衆国における社会科学の形成
 4 ダーウィンによる進化論の確立
 5 四つの源流から二〇世紀の心理学へ
第五章 「科学的心理学」への道
 1 スピリチュアリズムとの決別
 2 意識心理学の問題
 3 行動主義宣言
 4 操作主義の確立
 5 チューリング・テスト
 6 認知革命
第六章 素朴実在論と中枢主義の克服――現代心理学の課題 (1)
 1 観念論と実在論
 2 素朴な実在論と認知システムの目標
 3 ハイデガーの存在論と認知システムの目標
 4 脳はいかにして身近なものを気遣うか
 5 まとめ
第七章 ギブソンの存在論――現代心理学の課題 (2)
 1 アフォーダンス
 2 直接知覚
 3 ギブソン批判
 4 ギブソンの「誤読」問題
 5 ギブソンの視覚理論は汎種的なものである
 6 間接知覚論と近代心理学
第八章 仏教の心観と存在論
 1 仏陀の教え
 2 唯識思想と存在論
 3 縁起説
 4 まとめ
あとがきにかえて――心の発見とアリストテレス的進化
事項索引
人名索引


心理学というのは、大いに誤解されている学問です。最も端的な誤解が「心理学者はヒトの心が読める」というものでしょう。
心理学は、心を読みません。それどころか、一部の心理学は、そもそも「心」を研究対象から外してしまっていますし、そうでない「心理学」についても、その多くは心を直接扱うことはしません

なぜでしょうか?

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2009年04月02日

「脳科学」の壁-脳機能イメージングで何が分かったのか(ブックレビュー)

発達障害に関する書籍を多数出している榊原氏が、発達障害の話題もからめつつ、脳科学ブームについて語った本です。



「脳科学」の壁 脳機能イメージングで何が分かったのか
著:榊原 洋一
講談社プラスアルファ新書

第1章 ヒトは「脳」から離れられない
 なぜ、という問い
 因果関係を知る乳児 ほか
第2章 脳科学氾濫の系譜
 デカルト
 ガルの骨相学 ほか
第3章 前頭葉ブーム
 前頭葉ブームの火付け役
 音読、計算と前頭葉機能 ほか
第4章 脳科学の到達点と限界
 脳機能イメージング法に内在する問題点
 血流が増えることの意味は? ほか
第5章 脳機能イメージングで何が分かるか
 研究成果の誇大表示の背景
 臨床医学と脳機能イメージング ほか


最近の脳科学は、ある意味現代の新宗教みたいなもてはやされ方で、以前私が支持していた茂木健一郎氏あたりもその「教祖様のひとり」みたいになってしまって幻滅を禁じえないのですが、本書はそういった「安易な脳科学ブームを批判的に検証した本」だといえます。

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2009年03月23日

ソーシャルブレインズ―自己と他者を認知する脳(ブックレビュー)

「自閉症の認知心理学」と言い換えてもいいくらい、ストライクゾーンど真ん中の本です。


ソーシャルブレインズ―自己と他者を認知する脳
著・編:開 一夫、長谷川 寿一 (編集)
東京大学出版会

はしがき (長谷川)
道案内 ソーシャルブレイン“ズ”の歩き方(開)
I  「自己」の発見―自己像認知の進化と発達
 1 動物の自己意識(渡辺茂)
 2 自己像を理解するチンパンジー(平田聡)
 3 自己像認知の発達(宮崎美智子・開)
II 「自己」と「他者」の境界―身体感覚のメカニズム
 4 自己と他者を区別する脳のメカニズム(嶋田総太郎)
 5 脳の中にある身体(村田 哲)
III 「他者」と出会う―動き・視線・意図の認知
 6 動きに敏感な脳(平井真洋)
 7 目はこころの窓(友永雅己)
 8 ソーシャルブレインのありか(加藤元一郎・梅田聡)
IV 「他者」の心を読む――共感のメカニズム・心の理論の発達
 9 他人の損失は自分の損失?(福島宏器)
 10 知識の呪縛からの解放(松井智子)
 11 ロボットに心は宿るか(板倉昭二)
 12 自閉症児は心が読めない?(千住淳)
終 ソーシャルブレインの探究(開)

本屋で背表紙のタイトルを見た瞬間に、「ああ、この本にはきっと自閉症のことが書いてあるな」と直感し、中を覗いて確かにあちこちで取り上げられているのは分かったのですが、ちょっと値が張るのと、「認知心理学」と「自閉症の療育への応用」というのは現時点ではあまり相性が良くないと感じていることもあって、しばらく買うのを躊躇していたのですが、思い切って買って正解でした

本題に入る前に、この本が「認知心理学」の本であるということから、そもそも「認知心理学」とはどんな心理学かということについて簡単に触れておきたいと思います。

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2009年02月23日

自閉症を含む軽度発達障害の子を持つ親のために(ブックレビュー)

中身を支持しているわけではありませんが、「研究用資料」としてはなかなか秀逸。


自閉症を含む軽度発達障害の子を持つ親のために
著:佐藤 真司、馬場 悠輔
監修:柿谷 正期
アチーブメント出版

第1章 GFCFダイエット
 消化酵素
 腸管浸漏(リーキーガット)症候群 ほか
第2章 軽度三角頭蓋
 軽度三角頭蓋の手術
 中断、そして再開 ほか
第3章 環境問題と発達障害
 化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity‐MCS)の定義
 原因物質 ほか
第4章 自閉症と水銀
 水銀は、どこからくるの?
 キレーションについて ほか
第5章 視覚機能と発達障害
 眼の問題とそれに起因する症状
 ヒトの発達と原始反射について ほか

最近、自閉症関連であまり面白い新刊が出ていないようですし、先日、代替療法がらみの本を立ち読みレビューしたということもありますので、最新刊ではありませんが、割と新しい興味深い本をご紹介します。
(電子タイマーの記事を出すかどうか迷いましたが、帰省から戻ったばかりでちょっと準備が万全でないので、こちらの記事をアップさせていただきました。)

えーっと、目次を見て分かるとおり、この本は「自閉症への代替療法」の本です。
当ブログをお読みいただいている方はご存知のとおり、私はこれらの代替療法については、子どもを生命・健康の危険にさらすものについては倫理面から積極的に反対、そうとも言えないものについては、時間とコストのムダになる可能性が極めて高いという理由から消極的に反対という立場です。

ですから、この本の内容を「支持」しているわけではまったくないのですが、この本は買ってもいいかな、と思っています。なぜなら、

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:36| Comment(15) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする

2009年02月16日

バロン=コーエン仮説に対する私の立場

自閉症とは「心の理論」の障害だとするサイモン=バロン=コーエンの仮説は、今はそうでもありませんが、かつては非常に脚光を浴びました。
その仮説をまとめた本「自閉症とマインド・ブラインドネス」については、ずいぶん昔にレビュー記事を書いていますが、この時点では私は彼の仮説に割と肯定的でした。

でもその後、「心の哲学」や「複雑系の科学」などを学んでいくうち、彼の仮説は実はほとんど何も語っていないのではないかという疑問を感じるようになり、現在では、彼の仮説が自閉症の本質に迫るものであるとは考えていません

このあたりの私の立場については、実は1冊めの本『自閉症-「からだ」と「せかい」とをつなぐ新しい理解と療育』で既に明らかにしているのですが、ブログのなかでは必ずしも明確に書いたことがありませんでしたので、1冊めの本の該当箇所からの引用をベースに、簡単に整理しておきたいと思います。

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posted by そらパパ at 21:44| Comment(10) | TrackBack(1) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする
子どもが自閉症かもしれない!どうしよう!という親御さんへのアドバイスはこちら
孫が自閉症らしい、どうしたら?という祖父母の方へのアドバイスはこちら

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自閉症関連のブックレビューも多数掲載しています。

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