2015年06月08日

ことばの発達が気になる子どもの相談室(ブックレビュー)

著者の村上さんより献本御礼。


ことばの発達が気になる子どもの相談室―コミュニケーションの土台をつくる関わりと支援
村上由美
明石書店

第1の部屋 ことばの遅れってどういうこと?
  2歳を過ぎてもことばを話しません。
  3歳を過ぎても文章を話しません。 ほか
第2の部屋 ことばを通して社会性を育てる
  何度言ってもこちらの言うことを聞いてくれません。
  落ち着きがありません。 ほか
第3の部屋 ことばのコミュニケーション能力を育てる
  保育園(幼稚園)のことを質問しても答えられません。
  質問しても不適切な返答をします。 ほか
第4の部屋 家庭でできることをすこしずつ
  「たくさんことばをかけてください」って、どうすればいいの?
  好き嫌いが多いです。「様子を見ましょう」と言われますが…。 ほか


著者の村上さんとTwitter経由で別件で資料等のご相談をさせていただいた際に、あわせて献本いただきました。ありがとうございます。



本書は、お子さんの成長にともなって生じてくる「ことばの発達についての遅れ・偏り」などの心配ごとについて、言語聴覚士である著者が具体的な対応法などのアドバイスを提供してくれる、親御さん向けの指南書といった位置づけの本になっています。

本書は「第○の部屋」という名前のついた4つの章にわけられており、大ざっぱに整理すると、

第1の部屋:子どもの「ことばの発達」についての解説と、その遅れや問題についてのアドバイス
第2の部屋:子どもの「社会性の発達」についての解説と、その遅れや問題についてのアドバイス
第3の部屋:子どもの「コミュニケーションの発達」についての解説と、その遅れや問題についてのアドバイス
第4の部屋:「療育」について、専門家をどう利用するか・家庭での療育をどう進めればいいかについてのアドバイス


といった内容になっています。
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2014年03月31日

自閉症スペクトラムとは何か: ひとの「関わり」の謎に挑む(ブックレビュー)

ありそうでなかった、「自閉症それ自体を知る」というカテゴリの、素晴らしい入門書。


自閉症スペクトラムとは何か: ひとの「関わり」の謎に挑む
千住 淳
ちくま新書

はじめに
第1章 発達障害とは何か
第2章 自閉症スペクトラム障害とは何か
第3章 自閉症はなぜ起こる?
第4章 自閉症者の心の働きI――他者との関わり
第5章 自閉症者の心の働きII――こだわりと才能
第6章 自閉症を脳に問う
第7章 発達からみる自閉症
第8章 社会との関わりからみる自閉症
第9章 自閉症という「鏡」に映るもの
第10章 個性と発達障害
おわりに
参考文献


多くの科学に基礎と応用があるように、学問の世界?における「自閉症の研究」にも、基礎と応用があると言っていいと思います。

ここで「基礎」とは、「自閉症の定義」「自閉症のメカニズム」「自閉症をもっている人の認知の機制」といった、自閉症そのものを理解し、そこで何が起こっているのかを問うことを指しています。
当然、自閉症をひきおこす遺伝子とか、自閉症の人の脳で何が起こっているのか、といった問題意識も、この「基礎」のほうに含まれます。

いっぽう「応用」のほうは、「自閉症の診断」「自閉症の療育」「自閉症の人の社会参加」「自閉症の人を支援する法整備」といった、そこに「自閉症」の人がいる、ということを前提に、その人にどう働きかけていくのか、その人をとりまく社会にどう働きかけていくのか、といったことを考えていくことを指しています。
その中でも特に「自閉症の療育」の部分が、「応用」のなかでは極めて大きな位置を占めています。

これは、端的にいうと、自閉症に対する「基礎(実験)心理学」と「応用(臨床)心理学」という区分に近いですね。

そして、これまで自閉症に関する多くの優れた「入門書」はほとんどのものが「応用」に関するものでした

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2014年03月24日

自閉症という謎に迫る 研究最前線報告(ブックレビュー)

情報収集のためにサブテキスト的に読むのなら、アリ。


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(上がAmazon、下が楽天。AmazonはKindle版も選べます)

自閉症という謎に迫る 研究最前線報告
金沢大学 子どものこころの発達研究センター
小学館新書

はじめに
自閉症をめぐる五つの謎
第1章 自閉症は治るか―精神医学からのアプローチ
第2章 遺伝子から見た自閉症―分子遺伝学からのアプローチ
第3章 自閉症の多様性を「測る」―脳科学からのアプローチ
第4章 自閉症を取り巻く文化的側面―心理学からのアプローチ
第5章 社会的なものとしての自閉症―社会学からのアプローチ
執筆者紹介


タイトルにあるとおり、本書は自閉症をめぐるさまざまな研究について、それぞれの分野の専門家が研究の現状を整理し、それを一般向けにかみくだいてまとめた文章をまとめた本になっています。

新書という限られたボリュームで、さらに複数著者がさまざまなトピックについて触れた文章を集めているわけですから、1つ1つのトピックについては「ちょっと充実したパンフレット・雑誌記事」程度のボリュームしかなく、また文章のテイストが統一されていないため、かなり散漫な印象を受けます。
(特別支援教育などの専門雑誌の特集記事のような感じですね。)

いちおう、序章で全体を概括するために、「自閉症の5つの謎」というのが列挙されます。

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2012年12月10日

メリットの法則――行動分析学・実践編(ブックレビュー)

痛快に読めて、発見もたくさんの良書!


メリットの法則――行動分析学・実践編
著:奥田 健次
集英社新書

まえがき
第1章 その行動をするのはなぜ?
 1.実用的な心理学
 2.奇声をあげるアキラくん
  奇声をあげたら、お母さんと離れ離れに/通常学級に入学したアキラくん
  陥りがちな「循環論」の罠/原因を「行動随伴性」で考える
 3.身近な例で考える行動分析学
  すぐに弱音を吐くタカシさん/「甘えているから」では、問題は解決しない

第2章 行動に影響を与えるメカニズム(基本形)
 1.原因と結果を「真逆」に考える
  「症状」と「行動」は異なる
 2.行動とは何か?
  「試験勉強」「破壊行為」は具体的でない
  行動の前に原因がある「レスポンデント行動」
 3.行動を強める「強化」の原理(基本形)
  「好子」出現の強化/「嫌子」消失の強化
 4.行動を弱める弱化の原理(基本形)
  嫌子出現の弱化/好子消失の弱化
 5.四つの行動原理で、あらゆる行動を説明する

第3章 行動がエスカレートしたり、叱られても直らないのはなぜ?
 1.行動の直後に何が起こったのか注目せよ
 2.なぜダイエットが難しいのか
 3.行動が消えてしまうメカニズム(消去の原理)
  恋に敗れて、行動が消去される
 4.とても大切な消去の原理
 5.社会生活に重大な変化を及ぼす「強化スケジュール」
 6.強すぎる消去抵抗、消去バースト
  消去の連続に耐える
 7.叱られても止められないのはなぜ?(回復の原理)
  失敗はこうして繰り返す
 8.「アメとムチ」という発想を捨てよう
  「ムチ」の副作用

第4章 行動に影響を与えるメカニズム(応用形)
 1.日常の行動はもっと複雑
  人間の行動をより深く理解するために
 2.行動を強める強化の原理(応用形)
  嫌子出現「阻止」の強化/嫌な思いをしないために
  好子消失「阻止」の強化/持ち物が増えると悩みが増える
 3.行動を弱める弱化の原理(応用形)
  嫌子消失「阻止」の弱化/好子出現「阻止」の弱化
  「じっとしている」は死人にもできる
 4.阻止の随伴性に伴うリスク
 5.強迫性障害を形成するメカニズム
  不安を引き起こす刺激を与え続ける/刺激を自動的にシャットアウトする
 6.阻止の強化による強迫性障害
 7.エクスポージャーを行動分析学でとらえ直す
  不安を減らそうとしてはいけない

第5章 行動は見た目よりも機能が大事
 1.行動の機能は四つしかない
  物や活動が得られる/注目が得られる/逃避・回避できる/感覚が得られる
 2.同じ行動のように見えるが同じ行動ではない、という落とし穴
  機能の重複
 3.家庭での問題から(不登校の連鎖、そして回復へ)
  3兄弟の不登校/不登校を支える行動随伴性/学校に行かない兄は「かわいそう」
  “心の中身"は不毛な議論
 4.ウソを簡単に見抜く方法
  (1)学校を休むと家で遊べる(物や活動)
  (2)母親と一緒にいられる(注目)
  (3)学校に嫌なことがある(逃避・回避)
  (4)機能が複合している場合、シフトしていく場合
 5.てんびんの法則
  家庭で過ごす理由/おのずと学校に行く確率を高める方法
 6.奇声をあげる男の子
 7.嘔吐を繰り返す女の子
 8.リストカットがやめられない女子学生

第6章 日常にありふれた行動も
 1.トークンエコノミー法
  トークンエコノミー法とは何か/お店がポイントカードを作る理由
  視覚的な達成感/トークンエコノミー法は「さじ加減」が決め手
  手応えのある仕事/トークンエコノミー法のバリエーション
  不登校と「そもそも」論/「ワクワク感」を大事にしよう
  ポイントを減点するレスポンスコスト
 2.FTスケジュール
  ニューヨークでのこと/「わんこそば」方式/強度行動障害者の施設において
  その日のうちに現れる明確な効果/迷信行動/迷信行動とエクスポージャー
 3.“任意の努力"を目指して
  「したからやる」行動随伴性を

あとがき
参考文献


ABA界?では知らない人がいないであろう有名人、奥田先生の新刊です。
当ブログでも、何冊かの奥田先生の本を過去にレビューしており、その中で下記の2冊は「殿堂入り」させています。


叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本(レビュー記事
自閉症児のための明るい療育相談室ー親と教師のための楽しいABA講座(レビュー記事

さて、そんなわけで今回の本ですが、かなりかっちりした「教科書」的内容のABA本になっています。

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2012年04月02日

ライブ・自閉症の認知システム (15)

このシリーズ記事は、以前、石川にて行なわせていただいた講演の内容を、ダイジェストかつ再構成してお届けするものです。


Slide 18 : プレイングマネージャーの役割とは?

それではさっそく、家庭での療育をすすめる中核となる「プレイング・マネージャー」の役割についてお話ししていこうと思いますが、そもそも、リーダーっていうのは何をする人なんでしょうか?
プロジェクトのリーダーの、究極の役割ってなんだと思いますか?

それはもちろん、「プロジェクトの目的、ゴールを達成すること」だと思います。
そのために、やるべきこととやらなくていいことを整理して、やるべきことをチームのなかで役割分担をして、切り盛りしていくわけです。それが、プロジェクトのリーダーの、第一の役割であり、責任です。

ですから、療育をプロジェクトだと考えるのなら、何よりもまず、そのプロジェクトの目的、ゴールを決めなければいけません。
子どもと家族にとって、どういう将来をこれから作りあげていくのか、家族にとって一番大切なものはなんなのか、そういう、療育をすすめていくときの軸になる考えかたを、家族で話し合って決めましょう。

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2012年03月26日

ライブ・自閉症の認知システム (14)

このシリーズ記事は、以前、石川にて行なわせていただいた講演の内容を、ダイジェストかつ再構成してお届けするものです。

※前回の記事が、既に約2年前になってしまいました(^^;)。過去の記事は、左のタブの「ライブ・自閉症の認知システム」からご覧になれますので、ぜひそちらもあわせてご覧ください。

page17.gif
Slide 17 : プロジェクトとしての家庭療育

さて、時間ももうあまりありませんが、残りの時間を使って、心理学の話からは一旦離れて、家庭での療育について、思うところをお話ししたいと思います。

絵カードの作りかたといった具体的な療育法についてお話ししようかとも思ったのですが、限られた時間のなかで、私だからお話しできることを優先したほうがいいと思いましたので、今日は、そういったことではないお話をしようと思います。

自閉症のお子さんをお持ちのご家族にとって、家庭での療育というのは、家族全員を巻き込んで、さらには家庭の時間をまるごと巻き込んで、しかも何十年と続いていくような、非常に密度が濃くて息の長い取り組みになります

やることはいっぱいありますね。

最終ゴール、目標は、子どもと家族の幸せ、人生の幸せを実現することです。
もちろん、これとは違う目標をイメージされる親御さん、ご家族もいらっしゃると思います。どんな目標でもいいと思いますが、家族の中の誰かが犠牲を払うとか、重い負担に耐えるとか、そういった内容は「最終」ゴールにはならないはずですよね。
仮に途中のプロセスでそういう苦しい時期があったとしても、最終的には家族全員にとってハッピーな状況を目指す、そういったものが「最終ゴール」になるんじゃないかと思います。

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2012年03月19日

殿堂入りおすすめ本・まとめて再レビュー(20)

過去に「殿堂入り」として強くおすすめした本を、現在の視点から改めてレビューしつつ、まとめなおすシリーズ記事の20回目です。

今回は、障害者論の金字塔とも言える「すごい本」をご紹介します。


障害者の経済学(増補改訂版)(レビュー記事

この本は、2007年ごろに一度読んで、それで「すごい本だなあ」と思って当ブログでレビューを書き、殿堂入りさせた本です。

その後、去年(2011年)の秋ごろに増補改訂版となり、同時に電子書籍がリリースされたようです。(上記リンクも「増補改訂版」へのリンクになっています)
私は先日、ソニーの電子書籍リーダー、「Sony Reader」を購入し、ストアで面白そうな本を物色していたところ、この「増補改訂版」を発見し、さっそく購入、ダウンロードして改めて読みました。


Sony Reader
(左の2つはコンパクトで読書特化型の5インチモデル。右の1つは多機能でWifiダウンロードやSDカードも使える6インチモデル。私は5インチモデルを買いました。)

増補前の本と、増補改訂版とを比較すると、冒頭「はしがき」と第9章「障害者就労の現状と課題」が新設されています

目次

はしがき
序章 なぜ『障害者の経済学』なのか
第1章 障害者問題がわかりにくい理由
第2章 「転ばぬ先の杖」というルール
第3章 親は唯一の理解者か
第4章 障害者差別を考える
第5章 施設は解体すべきか
第6章 養護学校はどこへ行く
第7章 障害者は働くべきか
第8章 障害者の暮らしを考える
第9章 障害者就労の現状と課題
終章 障害者は社会を映す鏡


それに加えて、既存の章についても加筆修正があるようです。
著者自身が「はしがき」で触れていますが、当初の版が出てから増補改訂版が出るまでの間に、障害者自立支援法の施行、その後の混乱という大きな状況の変化があったことを考えると、本書が増補改訂されたことは、本書が今後も長く読まれ続けるためにとても意義あることだったと思われます。

本書に対する印象は、当初のレビューから大きく変わっていません。
今読んでも新鮮な気持ちで読めますし、「転ばぬ先の杖」型社会から「案ずるより産むがやすし」型社会への転換を目指し、障害ある人の人生の選択肢を増やし「自ら人生を選べる」ことを目指すことこそが、「自立」なんだ、というメッセージの存在感は圧倒的です。

そんなわけで、今回は増補改訂版で新設された「第9章」について触れたいと思います。

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2011年07月24日

「名誉健常者」問題に続くいくつかのTwitter議論

以前、障害者に対するある種の差別を考える視点としての「名誉健常者(ロールモデル)」問題というのをとりあげましたが、その後も、関連するいくつかの議論がTwitter上で行なわれ、それがまとめられています。

もうかなり前のことなのですが、なぜか昨日から今日にかけてふたたび注目されている(特に「キラキラ差別」のほうの議論)ようなので、改めてこちらでもご紹介しておきます。

http://togetter.com/li/104697
「障害者もあいさつする明るい職場」という言葉の背後にある問題

 障害者の働く姿の1つの理想イメージとして「障害があっても元気にあいさつする明るい職場」というのがある。これに対する問題提起から始まった一連の議論をまとめました。


http://togetter.com/li/110188
「前向きさ」を押し付ける善意の差別、「キラキラ差別」について

 「感動をありがとう!」とか「障害に負けずに頑張って!」「明るく前向きにいこうよ!応援してるよ!」的な、相手の立場や困難を見ない善意から生まれる「キラキラ差別」。その問題についてのやりとり。


どちらも、「マイノリティに対するマジョリティからの特定のロールモデルの強要」という点において、以前の「名誉健常者(ロールモデル)問題」とも根っこでつながっている問題です。

よろしければご覧いただき、当時の熱い議論を共有していただければ幸いです。
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2011年05月02日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (15)(完)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の、第15回にして最終回です。
今回は、いわゆる「ポイントカード」についてと、あとがきです。


4.ポイントカードについて

自閉症療育でよく使われるのが、「ポイントカード」です。
これは、家事や課題など、子どもが期待される行動をしたときにシールや花マルなどの「ポイント」を与え、ポイントが一定数たまったら、欲しいものが手に入ったりやりたい遊びができたりする、というシステムです。

少し考えると、これはABAの「強化」のしくみを応用していることが分かりますね。

ポイントがたまったときに手に入るものや遊びが、「ごほうび」であることはもちろんです。
そして、その「ごほうび」を手に入れることができる権利=ポイントも、子どもがその意味を理解することができれば、同じように「ごほうび」としての力を発揮します。

これによって、

・全部強化のメリット=望ましい行動をするたびごとに「ポイント」を与えることで、望ましい行動を着実に強化できる
・部分強化のメリット=ポイントがたまるまではリアルな「ごほうび」を与えずに済むので、「ごほうび」の総量を抑制できる


という、2つのメリットをうまく両方とも得ることができるため、家庭でのABA療育でもしばしば利用されます。

ポイントカードの仕組みを活用するときのポイントは以下の通りです。

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2011年04月25日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (14)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の第14回です。
今回は、強化についての少し難しい(でもとても重要な)話題を取り上げます。


3.全部強化と部分強化について

これまで、行動に対して「ごほうびを与える」のが強化(その行動が増える)、「ごほうびを与えない」のが消去(その行動は減る)、というお話をしてきましたが、それでは、ある行動に対して「ときどき(あるいは「稀に」)ごほうびを与える(つまり、言い換えると「ときどきはごほうびを与えない」)」という働きかけをすると、どうなるのでしょうか?

このような働きかけは、「部分強化」と呼ばれます。
これに対して、行動に対して、常に「ごほうび」を与えるやり方のことは、「全部強化」と呼ぶことがあります。
部分「強化」とあることから分かるとおり、このような「ごほうび」の与え方であっても、「強化」、つまり、行動を増やしたり維持したりする力があります。

全部強化と部分強化は、次のように使い分るのがいいと言われています。

・新しい行動を学習させるとき :全部強化を使う
・学習できた行動を維持するとき:部分強化を使う


新しい行動を学習させるときは、「適切な(学習させたい)行動には常にごほうびを与える」という「全部強化」の働きかけを行なうことで、学習をスムーズに進めることができます。
一方、一度学習できた行動には、必ずしも常に「ごほうび」を与える必要はなく、ときどき「ごほうび」を与える(部分強化)だけで、その行動は維持されます。

興味深いのは、「行動を維持する力」は、実は全部強化よりも部分強化のほうが強いことがある、ということです。

例えば、スロットマシンと自動販売機という2つの機械を考えてみましょう。
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2011年04月11日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (13)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の第13回です。
今回は、ABAのなかでも「罰」というデリケートな問題について取り上げたいと思います。


2.「罰」について

今回のシリーズ記事では、問題行動を減らすために「消去」という方法を使っています。
「消去」というのは、それまで問題行動に与えられていた「ごほうび」を与えなくすることで、問題行動を徐々に減らしていくというABAのアプローチです。

これに対して、私たちは問題行動を減らすために、しばしば「罰」を使いがちです。
罰というのは叱ったり、痛みなどの嫌悪刺激を与えること、つまり、ごほうびとは逆の「嫌なこと」を与えることで、行動を減らしていこうというアプローチであって、もちろんABAの中でも「そういうやり方もある」ということで整理されています。

こちらの方法を記事の中で使わなかったのには、理由があります。
それは、「罰で行動を減らす」というアプローチにはさまざまな副作用、問題があり、ABAの世界でも「できるだけ使わない」ことが推奨されているからです。

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2011年04月04日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (12)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の第12回です。

前回までの記事で、ABAの基本となる考えかた(内面モデルを使わずに、「目に見える」世界で考える)と、問題行動への王道対応パターン(機能分析、代替行動の設定、代替行動への切り替え)をご紹介しました。
これで、まずは「ちょっと工夫のある子育て」として、家庭の療育にABAを取り入れるための基礎知識としてのお話は、一応終わりです。
ここまでの知識があれば、今日からでも、ABAを家庭の療育に取り入れ、毎日の子育てに「ちょっと工夫をする」ことができるようになるはずです。

今日は、これまでの記事でカバーしきれていない、もう少し高度なABAの話題について、家庭の療育に関係しそうな範囲で、簡単に整理しておこうと思います。

1.「環境づくり」について

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2011年03月28日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (11)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の第11回です。

パニックという「問題行動」を、絵カードを見せるという「代替行動」に切り替えるために、最初は絵カードを見せるための行動をすべて支援者の側が「手助け」します。そして、「絵カードを見せる」→「ごほうびが手に入る(=ゲームコーナーで遊べる)」という「成功経験」を何度も繰り返します

これが、ABAで何かを学習させるときの、基本的なステップになります。
例えば、机に座らせて課題をやらせるためにABAを活用する場合でも、最初はすべて手助けして、それでうまくいったらごほうびを与える、の繰り返しです。

ともあれ、手助けつきの学習を繰り返していくうちに、少しずつ、お子さん自身の自発的な「絵カードを見せる」という動きができるようになってくるはずです。
自発的な動きが出てくるようになったら、「できる」という成功体験を壊さないように、少しずつ少しずつ、「手助け」の量を減らしていきます

手助けを減らすときには、これも常識とは少し違うかもしれませんが、「後ろから」減らしていきます

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2011年03月21日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (10)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の第10回です。

前回までで、今回のパニック問題を解決するための「仮説」と、そこで活用するテクニックが整理できました。

1.ゲームコーナーに行きたいという欲求をかなえる手段としての「パニック」という行動は減らしていこう。→消去を活用しよう。
2.ゲームコーナーに行きたいという欲求をかなえる新しい手段として「絵カードを見せる」を学習させよう。→強化を活用しよう。
3.上記1.と2.によって、「パニックという行動」を、「絵カードを見せるという代替行動」に切り替えよう。


あとは、パニックという行動を絵カードを見せるという代替行動に切り替えていくだけなのですが・・・。

もちろん、ただ放っておいても、パニックしている子どもが突然絵カードを見せるようにはなるわけはありません。
恐らく、「ほら、絵カードを見せなさい!」と口頭で注意しても、それだけで絵カードを使えるようにはならないでしょう。

ここで、ABAのもう1つの重要テクニック「手助け」が登場します。

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2011年03月07日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (9)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の第9回です。

ところで、このシリーズ記事では、個々の発達課題個別の対応法などについては触れません
なぜならそういった話題は、豊富な経験をもつ臨床家にしか書けませんし、個別テーマになりますからボリュームも膨大になるからです。
そういったニーズに対しては、既によくできたマニュアル本も出ていますから、そちらを参照してください。今回のシリーズ記事と合わせて読むと、理解も深まると思います。



自閉症児のための明るい療育相談室(レビュー記事
家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46(レビュー記事


今回のシリーズ記事で掘り下げているのは、個別の問題への対策ではなく、ABAの「根っこにある考えかた、ものの見方」(これは逆に、相当詳しいABAの療育マニュアルでもあまり明確に語られていないのではないかと感じています)です
その上で、汎用性の高い「ABAによる問題分析・解決法の模索・実践・検証」という王道の流れを、まずは「1本道」として理解すること。
この2つの話題に絞り込んで記事を書いています。

これらを理解することで、「ちょっと工夫のある子育て」としてABAを活用していくこと、これこそが、本格的なトレーニング技法としてABAを導入するよりも、より幅広く、多くの家庭でABAを有効に活用できる方法なのではないかと考えています。


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2011年02月28日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (8)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の第8回です。

前回、「番外編」を1回はさみましたが、その前の「第7回」の記事では、ABAの理論の基礎となる「強化と消去、ごほうび」という考えかたについて解説しました。

いよいよ今回からは、問題行動のABA的解決法の1つの王道である「代替行動への切り替え」についてご紹介したいと思います。

改めて、今回のパニックについての「仮説」を説明するABC分析を見てみましょう。

ABC
ゲームコーナーに寄らずにスーパーを出るパニックするゲームコーナーで遊べる(↑)


今回のABC分析による「機能分析」では、お子さんのパニックは「ゲームコーナーで遊びたい」という欲求を伝える、コミュニケーションの機能を持っているという「仮説」を立てることができました。
そして、その機能は実際に果たせており、パニックという「行動」はゲームコーナーで遊ぶという「ごほうび」が続くことによって、今後もより起こりやすくなった=「強化された」と考えられるわけです。(強化された、ということを示すのが、最後にある上向きの矢印(↑)です。)

さて、この仮説によると、現在の状態(対応)を続けると、パニックという行動は強化され続け、より起こりやすくなっていくだろう、という予測が立てられます
ところが、パニックが強化され、よく起こるようになることは、社会適応という観点からは望ましくありません。
でも一方で、「ゲームコーナーで遊びたい」という欲求を伝えるという、ここでのパニックがもつコミュニケーションの「機能」は大切にしなければいけません。
単にパニックを抑えこむだけでは、「ゲームコーナーで遊びたい」という欲求がかなえられずにさらなる大パニックを呼ぶかもしれませんし、仮にパニックが静まった場合でも、欲求を伝えるコミュニケーションの「芽」を摘んでしまうことになる恐れもあります

では、どうすればいいのでしょうか。

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2011年02月21日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (番外編)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事ですが、今回は「番外編」です。

前回、ABAが想定する「行動の起こりやすさが変化するパターン」として、5つあるうちの2つだけを紹介しました。
さらに、その変化のパターンを理解するためのキーワードとなる「ごほうび」についても、ABAにおける本来の定義とは異なる説明をしています。

このあたりについてもう少し正確を期すために、本来のABAにおける定義について説明する記事を書いておこうと思います。

ただし、専門用語が頻発しますから、このシリーズ記事の他の回と比べると、ずっと難しい印象となると思います。
今回の内容については、以下の2冊が詳しいですので、このあたりをしっかり学びたい方は、どちらか1冊をお読みになるのがいいと思います。



行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由(レビュー記事
行動分析学マネジメント-人と組織を変える方法論(レビュー記事

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2011年02月14日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (7)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の第7回です。

さて、前回までで、今回のパニックは、「ゲームコーナーで遊びたい」という欲求を周囲に伝えるというコミュニケーションの「機能」を持っている、という「仮説」を立てるところまでの、ABA的思考法の流れを簡単にご説明しました。

もう一度、その仮説に基づくABC分析の表を見てみることにしましょう。

ABC
ゲームコーナーに寄らずにスーパーを出るパニックするゲームコーナーで遊べる(↑)


ここで素朴な質問ですが、なぜこのお子さんの場合、「ゲームコーナーで遊びたい」という欲求が「パニック」という行動につながったのでしょうか。

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2011年02月07日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (6)

家庭の療育に活用するための、ABAの考えかた、使い方についてご紹介するシリーズ記事の第6回です。

前回までで、今回とりあげているパニックの例について、最初のABC分析が終わり、「仮説」を立てることができました。

ABC
ゲームコーナーに寄らずにスーパーを出るパニックするゲームコーナーで遊べる(↑)


これを見ると、今回の例におけるパニックは、「ゲームコーナーで遊びたい」というメッセージを伝える、という機能を果たしている(という仮説を立てることができる)ことが分かりました。

ここから、今回のパニックについて、非常に重要な視点を得ることができます。

それは、少なくとも「コミュニケーションが成り立っている」という観点からは、ここでのパニックを100%全否定してはいけないのではないか、という「視点」です。
なぜならこのお子さんは、「ゲームコーナーで遊びたい」という意思を「パニック」によってあなたに示して、(結果として)その意思に沿った結果を得る、というコミュニケーションを成功させているのですから。

もちろん、だからといってパニックを放っておいていい、という結論になるわけではないでしょう。
多くの場合、パニックは社会的に不適応な行動であって、パニックでコミュニケーションする傾向が強くなればなるほど(あるいは年齢が上がっていけばいくほど)、社会のなかでうまく生活していくこと、ひいては本人が社会のなかで楽しく安定した人生を生きていくことが難しくなってしまいます。

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2011年01月31日

「子育ての工夫」としてのABA入門 (5)

前回は、「子どものパニック」を例にとって、ABA的思考法が、よくある「内面モデル」に基づく思考法とどのように違うかをご説明しました。
前回の「分析」で、今回例にとったパニックは、次のように理解できることが分かりました。

このパニックには、スーパーという場所において、ゲームコーナーで遊ぶことができるようになる、という機能をもっている。
パニックはゲームコーナーで実際に遊ぶという「ごほうび」によって強化されたので、今後も続くだろう。


すっきりしていますね。パニックという問題行動の「前」と「後」を考えることで、その意味=「機能」も見えてきます。

※これに対して、内面モデルによる問題行動への対処は、いろいろ考えているようでいて、実は「問題行動それ自体しか見ていない」ことが多くなります
 問題行動に「きっかけ」とか「結果」が関係している、というのは冷静に考えれば分かることですが、内面モデルによるアプローチでは「いま」何を考えているんだろう、という思考パターンに陥ってしまい、「前」も「後」も考えずに「いま」の問題行動だけを見てしまうことがしばしばあります。
 そのために、つい私たちはただ放置したり、逆に厳しく叱ったりという、その場その場の場当たり的な対応に追い込まれてしまいがちになるわけです。


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