2015年04月06日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(14)

前回書いたとおり、家探しを始めてすぐに、我が家が希望する条件に合致する建売住宅は、市場にほとんど存在しないことが分かってきました。

その理由の第一は、そういう条件に見合った家を建てるには一回り広い土地面積が必要で、そうすると建売り住宅の売り出し価格が一般的な売れ筋の価格帯よりもかなり高くなって「売れない物件」になってしまう、ということでした。

でも実際には、それだけが理由ではありません。

もしそれだけが理由なのであれば、あえてニッチな市場を狙って一定量の建売り住宅が供給されてもおかしくありません。
でも実際には、こういう「土地の広い建売り住宅」を建てるのは、業者側にとって「おいしくない、儲からない」という事情があり、だからこそ「供給されない」ようなのです

たとえばここに、400m2くらいの土地があったとします。
もしこの土地を3つに分割して、大きめのゆったりした4LDK+駐車場2台という家を建売りで建てて売りに出しても、割高感が出てまず売れません。結局、値下げして売らざるを得ないことになります。
それなら、最初から4分割して、3LDK+駐車場1台というコンパクトな4軒の家を建てた方が、値ごろ感が出て売れやすく、しかも3軒ではなく4軒も売ることができる、ということで、売り上げの合計もずっと大きくなることがほとんどです。

一般的に、家が小さければ小さいほど、売り出し価格の坪単価は割高となります。
これは、もちろん建築単価自体が割高になるということもありますが、それ以上に、家を小さくしてたくさんの人に売ったほうが土地としての「活用密度」、付加価値が上がり、投資不動産として利回りが良くなっていく、という傾向があることも見逃せません。
いわゆる投資マンションがことごとくワンルームマンションばかりで、ファミリー向けの物件を投資対象にする業者も投資家もほとんど存在しないのも、これと同じ構造です。

このような「不動産に投資する側・売る側」のメカニズムが働くために、建売りの企画というのもほとんど常に、「その土地で可能な最も細かい区画に分けて、コンパクトな家を建て、割安感を出してできるだけ多くの人に売る」といったものになってしまうわけです。

都心ではなく郊外にいけば土地が安くなるから広い建売りが選べるのでは?と思ったりもしますが、実際にはそうではなくて、郊外で家を探す人はそのぶん予算を下げて探しているので、結局同じような割安の企画の建売りばかりが流通する結果になってしまうわけです。

もちろん、「4LDKで駐車場2台」という建売りも、探せばあるにはあります。
でもそういった物件はたいてい、「駅から遠い」のです。
それは結局、建売りというのは「売れる値段帯」が決まっていて、その範囲内で「広い家」を建てようとすると、どうしても地価の安い「駅から遠い家」になってしまう、というからくりがあるわけですね。
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2015年03月30日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(13)

希望の条件に合う建売りを探し始めてすぐ、「そんな建売りはほとんど市場に存在しない」ということに気付かされることになりました。

私の中で、最低限これだけは譲れないと考えていた条件は(再掲しますが)だいたい次の4つでした。

1)駅近徒歩圏の物件であること。
2)駐車スペースを2台分確保していること。
3)狭小部屋のない4LDKの間取りであること。
4)一種低層地域の2階建て住宅であること。


不動産についてご存知の方ならすぐに気づくとおり、これらの条件をすべて満たすために絶対的に必要なものは、一定以上の「土地の広さ」になります

4)の条件があるため、都心によくあるような3階建ての狭小住宅は対象から外れます。
また、3)にあるとおり、一種低層の土地に3LDKではなく4LDKの家を建てようと思うと、土地面積は100m2(30坪)では足りず、最低でも110m2(33坪)、できれば120m2(36坪)程度欲しくなります(建ぺい率40%、容積率80%の場合。50-100%の場合、もう少し狭くても4LDKは建ちますが、その場合2)の駐車スペース2台分が確保できない可能性が高くなるため、やはり最低ラインは110m2程度になるようです)。
また、2)の駐車スペースの条件を満たすためには、土地の形は整形地に近くなければならず、かつ、かなり余裕をもった建物配置が求められます。
そして、そんな土地を、1)の条件にあわせて比較的地価の高い駅近エリアに確保しなければならないわけです。

一方、首都圏の住宅用不動産の価格を決める最大の要素は、言うまでもなく「土地の面積」です。
首都圏の建売住宅の場合、いわゆるパワービルダーと呼ばれる建築業者が超ローコストで規格化された家を建てるため、土地と建物のコスト比率は、通常でも3:1とか、ひどいのになると4:1とか、そのくらいになります。
しかも、土地だけじゃなく家の方も、建築費は「坪単価」が基準になるので、土地の広さに比例して値段が上がっていきます。
つまり、土地の面積が家の値段をほぼ決めるといっていいわけです。

首都圏で、「売れ筋の(閑静な住宅地の2階建ての)建売り住宅」の相場スペックというのは、概ね、

・100m2(30坪)程度の土地に、
・間取り3LDKの建物、
・駐車スペース1台分。


というもので、これだと同じエリアで売っているファミリー向けマンションと同じか、わずかに高い程度の値頃感が出せることが多いようです。

ここで、同じエリアで100m2ではなく120m2の土地を確保し、より広い家を建てようとすると、ほぼ単純にコストが20%アップします。
首都圏で家を建てるコストが20%上がるということは、シンプルに、売り出される価格が1000万円程度高くなるということです。

マンションや建売りを買いたいと思う人の多くにとって、ある物件の価格が他の物件と1000万円違っていたら、もうそれは「自分たちとは関係のない、検討対象外の物件」と映るでしょう。

そんなわけで、我が家が希望する条件に合致した建売住宅というのは、売れ筋から大きく外れてしまうため、企画されず、市場にも出てこない、ということになるわけです。
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2015年03月23日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(12)

さて、住替えのための家を郊外に探そう、ということで、さっそく不動産情報サイト等を活用して希望する条件の家を探し始めたのですが、ネットサーフィンを始めてからわずか2,3日で、かなり重大な事実が判明してきました。

その「事実」とは、シンプルに、

・希望する条件に合った家がほとんど市場に存在しない!

ということでした。

といっても、私が希望していた条件というのは、少なくとも私からみれば「ごく当たり前」の条件ばかりで、特殊なものはまったく含まれていません。

具体的には、

1)駅近の物件であること。具体的には最寄り駅から徒歩12分以内くらいでバス利用なし。
2)妻の実家の両親がいつでも来られるように、駐車スペースを2台分確保していること。
3)子ども部屋以外はすべて6畳以上、主寝室は8畳以上を確保した、4LDK(以上)の間取りであること。
4)今までと同等の住環境を維持するため、一種低層地域の2階建て住宅であること。


実際、周囲を見渡しても、こういった条件を満たす家はいくらでもあります。ですから、特にハードルが高い条件ではなく、たくさんの物件の中から選べるだろうと思っていたのですが、この条件をすべて満たす建売り住宅は、ほとんどありませんでした。
これは、現在も状況は変わっていないと思いますので、首都圏エリアの住宅情報サイトで実際に検索してみるとすぐわかります。

なぜでしょうか?

これはたくさん物件にあたって、だんだん気がついたのですが、私が上記であげたスペックは、

・建売り住宅を買いたい層に人気のある=売れやすいスペックではない。
・建売り業者にとっても、利益を最大化しにくいスペックである。


というのが理由だったようです。

簡単に言ってしまうと、私があげた条件をすべて満たす建売り住宅を作ると、建売り住宅としては割高になり、よく売れる価格帯をオーバーして売れない物件になってしまう、ということだったのです。

建売り物件は、売れやすい価格帯がだいたい決まっています。
簡単にいうと、「同じエリアで家族向けの新築マンションを買うのと同じ価格帯に収まっていること」が、「売れる建売り住宅」の条件になっているらしいのです。
それによってお客さんに「マンションか、一戸建てか」という選択肢を提示して、「やっぱり土地付きがいいよね」という形で建売りを買ってもらうというのが、建売りのセールスの一連の流れとしてあるわけですね。

ところが、私の希望する条件をすべて満たそうとすると、どうしてもその「売れ筋」から外れてしまうのです。
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2015年03月16日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(11)

前回書いたとおり、私は不動産を買うときには、実際に現地に足を運び、物件をたくさん見て多くの業者の方と話し、買いたい物件やエリアについての「カン」みたいなものをしっかり身につけたうえで、物件を選ぶようにしています。

もはや物件情報はみんなネットワークで共有されているから同じエリアに建ち並ぶ複数の業者をはしごしても意味がない、という意見もありますが、実際に動いてみるとこれはまったく正しくないことが分かります。
同じエリアで同じ希望条件を伝えても、営業マンが勧めてくる物件が丸かぶりすることはほとんどなく、そこでどういった物件を案内してくるか、現場でどんな説明をしてくれるかといったことによって、営業マンのセンスや能力が分かったりします。

そんなわけで、現地で実際に訪問・見学する物件の数はこれまでのどの不動産の購入の機会においても2桁に優に達し、だいたい最低でも20件ほどは現地で実際の物件を見ています。

後述しますが、今回は買う物件が「建売住宅」→「土地」と途中で変わったこともあり、エリアの選択にも相当悩んだこともあって、建売と土地を両方足すと50件ほども現地を見ることになりました
さらにその先に「工務店選び」「間取りの打合せ」「ショールーム巡り」「仕様打合せ」「外構業者選びと打合せ」など、ありとあらゆる要素でいろいろなところを飛び回りましたから、本当に忙しかったですね。

この「足を使う」というのは、これまで何度か不動産を購入したときと基本的にはまったく同じやり方でしたが、一方で、本格的にネットで物件探しをやったのはこれが初めてだったかもしれません。
引越前の家を購入した(2003年〜)2004年の時点では、まだ住宅情報誌のような「紙メディア」のほうが情報が豊富でしたし、それより後のリゾートマンションの購入(2006年)のときは、物件が物件だけに、「情報誌やネットでアタリをつけつつも、実際には現地の不動産屋を巡ってその場で物件を紹介してもらう」というのが事実上唯一可能なやり方でした。
一言で「現地」と言っても、実際には遠くの観光地ですから、まさに朝から晩までかかるひと仕事でしたし、それを熱海(2回)、湯河原、石和、富士五湖(2回)と6回も回ったので本当に大変でした。

さらに遡って、結婚したころに買った新築マンション(2000年)のときには情報誌すら網羅性に乏しく、希望の沿線の駅で1つ1つ降りて散策しながら、マンションの看板やのぼりを見つけてモデルルームに飛び込む(+情報誌で見つけた物件を訪問する)という、今では考えられないような物件探しをやっていたのを、今さらながらに思い出します。

ともあれ、今回もいつもと同じく「足」を使って希望の条件に近い物件を訪問して回ろうと考え、戸建ての中では最もコストパフォーマンスの高い「建売住宅」で探し始めたのですが、少し頑張ってみて、重大な事実にいきあたります
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2015年03月09日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(10)

さて、以上のような経緯で「家の買い替え」を真剣に検討することになりました。
この検討を開始したのが、2013年の10月ごろ、2人目の子どもを授かったことがわかり、妻が安定期に入ったころのことでした。

まだ本当に買い換えるのか、タイミングはいつなのかといったことははっきりしていませんでしたが、まずは情報収集ということで、ネットで不動産情報を収集し、興味のある物件を実際に見に行くところから始めたわけです。

ところで私は、不動産を選ぶときには、徹底的に頭と足を使います。

まず「足」のほうですが、思い立ったらすぐに情報収集を始め、本命だと感じた物件だけでなく少しでも興味をもった物件があればどんどん業者に連絡を入れて見学をさせてもらい、単に「買いたい物件をチェックする」ということにとどまらず、周辺エリアの雰囲気や環境を確認したり、物件の相場観や設備のグレード感などについて「勘どころ」を短期間で習得することに全力をあげます。

同時に、買おうと思っている不動産についての最新の知識をあらゆる手段を使って集め、勉強し、いい物件を的確に評価し、選べるように知識武装していきます。
こちらが「頭」のほうですね。

不動産については特にこれが重要で、さまざまな問題があって使い物にならない、「クズの不動産物件」がわんさかと溢れています。
特に、土地から買って家を建てるなんていうケースの場合には、ぶっちゃけ「売りに出ている土地の半数以上はろくでもない物件だ」と言っても過言ではないのではないでしょうか。
なぜなら、「住宅用の土地」というのは製品でいうと「最終製品」ではなく「原材料」であって、その買い主は個人だけでなく業者も含まれるからです。
個人で土地を買って家を建てようという場合、ライバルは、同じように家を建てて住みたい個人だけでなく、「(建売住宅を建てたり、きれいに整備・分割して分譲地にしたりといった)付加価値をつけて転売して利益を得たい」という業者も含まれます。
そして、業者のほうが資金力もあって情報も早いため、いい土地はだいたい先にそちらで押さえられてしまい、コネのない個人が見られるような場所(ネットなど)に情報があがる頃には既に「売れ残り」ばかり、という状況になりがちです。

そんな「ろくでもない物件だらけ」の魑魅魍魎の不動産の物件情報のなかから、自分にあった物件を見つけていくためには、「ろくでもない物件をろくでもない物件だと見分ける」ための知識武装が絶対に欠かせない、ということになります。
この「知識武装」の筆頭が、建築基準法をはじめとする建築上の法的規制に関する知識でしょう。用途・地域や建ぺい率・容積率、接道ルール、そして斜線規制・高さ規制などについて十分分かっていないと、ほぼ確実に「思ったような家が建たない」という事態に陥ります。
それが嫌なら、信頼できる大手業者が建てる家を買うのが無難な選択ですが、その場合、恐らく「自分で全部選ぶ」のに比べると1000万円単位での「割高な買い物」をする覚悟が必要になると思います。

そして最後は「足」と「頭」の融合です。
先にも書いたとおり、実はネットなどの不動産情報に出てくる物件は、「情報の早い業者」や「資金力のある投資家」、「不動産業者が持っている見込み客リスト」などによる「買い付け」が終わったあとの「残りもの」であるため、正直、魅力的な物件には乏しいです。
そこで、まずは多少でも条件に近い物件を見つけたらどんどん不動産業者とコンタクトをとり、物件を見せてもらいながら、営業マンに細かい希望や物件の気に入ったところと気になるところを伝えることで、先の「見込み客リスト」のなかに自分も入れてもらうのです。
そうすれば、その業者のもとに希望に近い新規物件が入ったとき、ネットに掲載されるよりも早く連絡がもらえる可能性が高まる、というわけです。

実際、以前セカンドハウスを探したとき、最終的に買った物件は、業者から直接「いい物件が新しく入ったんですがどうでしょう?」と連絡を受けた、ネットにまだ載せていない物件でした。それを即決して申し込んだため、この物件は結局ネットには出ませんでした。
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2015年03月02日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(9)

長女の高等部進学問題への対応から、「郊外への引っ越し」という、非常に大きなお金の動くアイデア(これまで整理してきたアイデアリストでは8)に該当)が浮上してきたわけですが、この8)のアイデアには、単に長女の高等部進学問題を解決すること以上のメリットもありました。

その中でももっとも大きなものは、

・今より広い家に住むことができる。

ということです。

今回、我が家には次女が生まれて4人家族になりましたが、次女が大きくなって個室が必要になるころには、いまの家がかなり手狭になることが予想されました。

もともと私が「モノの多い人間」で、本を自炊する前は本棚だけで壁一面相当くらいありましたし、それが自炊によりなくなった現在でも、デジカメ、ギターのエフェクター、スマホやタブレット、音楽CD、ゲームソフト(これは最近はまったく増えなくなりましたが)など、やはりモノは非常に多く、部屋がモノで溢れています。
そのために、現在の家の狭い部屋割では自分の個室と寝室を1つの部屋にまとめられず、2室使ってしまっている状態です。
ですから、このままこの家に住み続けるためには、レンタルロッカーみたいなのを借りるか、「断捨離」を断行して持ち物を劇的に減らすか、折りたたみベッドのような省スペース寝具を導入するか、私が寝るときはリビングを寝室にするといったトリッキーな環境を作るか、いずれにしても何らかの無理が生じる妥協が必要になると予想されました。

そしてもう1点、次女が生まれたことで現在の家が「手狭」になる要素がありました。

それが、

・小型車しか選べない駐車場の制約がある。

ということでした。

我が家には家の前の敷地に駐車スペースがありますが、ここが奥行き4mあって、長さ4m以下のクルマ(軽自動車や小型車が該当)だと縦に(道路に垂直に)クルマを停められます。
それより全長の長いクルマも停められるのですが、その場合は道路に平行な縦列駐車になり、自宅への侵入方向が1方向に限定されるうえに駐車の難易度が格段に上がります。

ですので、我が家では4m以下の小型車を選んで買っているのですが、次女が生まれ、子ども中心の4人家族になったことで、この大きさのクルマだとかなり狭いと感じるようになってしまいました。
あと20cmでもいいので長さを伸ばせると選べるクルマが格段に増えるため、できれば駐車場のもっと広い家に引っ越せないだろうか、という話がもともと出ていたわけです。

ですので、次女が生まれた時点で、我が家には(長女の問題抜きで)ある程度「住替え」のニーズが発生していた、ということになります。

だとすれば、

・長女の進学問題も解消し、
・家族が増えたことによる家の狭さ、駐車場の狭さの問題も解消できる、


「今の家を売却する、郊外への完全な引っ越し」を選ぶのが、もっとも合理的でしょう。

そんなわけで、今回の問題の解決方法として、8)のアイデアが俄然現実味を帯びてきたわけです。

※ちなみに、ここに並んでいないアイデアとして、「妻子のみ長女が高校の3年間だけセカンドハウスに引っ越す」というのもありました。富士五湖エリアにあるセカンドハウスのマンションは、意外と地域の特別支援学校に近く、一時はかなり真剣に検討したのですが、やはり卒業後の居場所の確保が非常に困難になるということと、病気などのときに対応しきれないだろうということで却下となりました。
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2015年02月23日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(8)

「長女の高校通学問題」を解決するための8つのアイデア、

1)現状維持
2)学区の高校の近くに家を借りる(家族全員)
3)学区の高校の近くに家を借りる(母子のみ)
4)隣の市区に家を借りる(家族全員)
5)隣の市区に家を借りる(母子のみ)
6)郊外に家を借りる(家族全員)
7)郊外に家を借りる(母子のみ)
8)自宅を売却して郊外に転居


の検討のプロセスについて書いています。主な評価基準は以下のものです。

①コスト
②通学の利便性
③卒業後の進路
④次女の幼稚園
⑤家族のつながりとバックアップ体制
⑥妻の実家からのサポートの受けやすさ
⑦住居の防音性能
⑧その他


2)から5)まで、どれもコストの割にメリットが小さく、納得して選択するのは難しいということが分かってきました。
残るは6)7)8)です。

6)7)8)は、現住所よりも郊外に出るプランになります。そして、その郊外の学区の特別支援学校とは、もともと小学校低学年のころから越境入学するつもりだった学校になります。
したがって、現住所よりも都心に向かうプランである2)から5)と比較すると、コスト面では負担が軽くなりますし、電車を利用するのもラッシュとは反対方向になるため十分に現実的です
さらに、郊外に住む妻の実家の両親にとっては現在よりも来るのが近くなり、次女の幼稚園の問題も生じないため、他の案に比べるとメリットが大きいのは一目瞭然でした。
一方、私の通勤時間が長くなることや、行政サービスが若干低下するなどのデメリットがありますが、これらは「そこに住めば当たり前のこと」でもあるので、妥協は十分に可能な範囲だと思われます。

ただ、この3つの選択肢のうち、6)7)の選択肢においては、「③卒業後の進路」という問題が残ってしまいます
郊外に引っ越して、郊外の学校に通って卒業した後、いきなり現住所に戻ってきても、いったん周囲とのつながりが「切れて」しまった現住所で、改めて長女の卒業後の進路を見つけるのは簡単なことではないように思われます。

そして、もっと率直にいえば、いったん家族が郊外に出てそこで生活を始めるのであれば、卒業後に現住所に戻ってくる必然性があまりない、ということもありました。
2)3)4)5)については、「一時的な」引越し先が現在以上に都心になるため、そちらに娘の卒業後も住み続けるというのは住環境と住宅コストの観点から考えにくかったのですが(上記⑦の住宅の防音の問題もあり、基本的に戸建て志向でもあるため)、引越し先が郊外で、いったん生活の拠点をそちらに移してしまうのであれば、いっそのこと現在の家を売却して、そちらにずっと住んでしまうほうが、さまざまな意味で合理的であるように思われます。
実際、「本来の用途で利用されない不動産を所有している」ことは、極めて非効率的でムダな資産運用であることは間違いありませんから。

もちろん、8)の選択肢は、他のどの選択肢よりも高額の費用がかかります。
でも、2)から7)までの選択肢が、せっかくの持ち家の利用を一時的に不全な状態にしたうえで、消えてしまうコストを賃貸住宅に大量投下するものであるのに対して、8)の場合、かかるコストは住宅という資産への投資という側面をもっており、また低金利の住宅ローンも活用できることなどもあって、「将来に残らない実質的なコストの費消がどの程度あるか」という視点で見ると、動くお金の大きさと比べ、実はそれほど「損失」が出るわけではない、と考えることもできます

私は、上京してから、結果的に不動産の売買を何度も経験するハメになりました(実はどれも計画的なものではないのですが、これについては改めて書きたいと思います)が、そこで分かったことは、不動産というのは上手く売買すると意外とコストがムダにならない資産であり買い物だ、ということです。
今回も、現在の住居を売却して得られた売却資金を「頭金」として郊外に新しい家を買うのであれば、資金計画的には十分に現実的な範囲に収まります。

そして、この8)の案にはさらに別のメリットもありました
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2015年02月16日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(7)

さて、「長女の高校通学問題」を解決するための8つのアイデア、

1)現状維持
2)学区の高校の近くに家を借りる(家族全員)
3)学区の高校の近くに家を借りる(母子のみ)
4)隣の市区に家を借りる(家族全員)
5)隣の市区に家を借りる(母子のみ)
6)郊外に家を借りる(家族全員)
7)郊外に家を借りる(母子のみ)
8)自宅を売却して郊外に転居


について、以下の評価基準にあてはめながら、検討していきました。

①コスト
②通学の利便性
③卒業後の進路
④次女の幼稚園
⑤家族のつながりとバックアップ体制
⑥妻の実家からのサポートの受けやすさ
⑦住居の防音性能
⑧その他


2)3)がコストと生活圏変更により厳しいということで、次に4)と5)です。

先のエントリでも触れたとおり、我が家は所属する市区の外れにあり、10mも歩くと隣の市区になります。そして、その隣の市区の場合、学区として指定されている特別支援学校が変わるという事情があります。
ですから、その隣の市区に引っ越すことで学区を変え、そちらで指定されている特別支援学校の高等部に通う、というのが4)5)の選択肢のミソになります。

この4)5)の選択肢については、前エントリの2)3)と似ている部分と異なる部分があります。

「似ている部分」としては、隣の市区の学校自体はいまの市区の学校と同じかそれ以上に都心にあるため、「学校の近くに引っ越す」という選択肢を選ぼうとすると、2)3)と同等以上にコストがかかる、という点があげられます。
それであれば、住所変更等の必要の必ずしもない2)3)のほうがまだメリットがあるため、4)5)を選択する必然性はありません。

ただ、4)5)が2)3)と「異なる部分」として、あえて学校の近くには住まずに現住所のそばに引っ越す、という選択がありうる点があげられます。
そして、自宅近辺から隣の市区の特別支援学校へ電車で送迎する場合、所要時間が1)の半分強、乗り換えは1回も必要ないので電車での送迎がある程度現実的になるだけでなく、車で送迎するのも幹線道路1本で近くまで行けるということもあります。

つまり4)5)の場合、あえて学校の近くではなく現住所の近くに部屋を借りる、という選択肢になる、ということです。
これにより、現在の生活や卒業後の進路に大きな変更を生じさせることなく、越境入学のような効果を得ることができるメリットが生まれます。マイカーも、いまある1台をそのまま家族で共有し自宅に停めておけばいいので新規取得コストも駐車場コストもかかりません。

言い換えると、4)5)の選択肢とは、3年間近所にセカンドハウスを借りるコストを支払うことで、実質、1)の「現状維持」に近い状態で確実に越境入学を実現する案だということになります。

ただ、この選択肢の場合、隣の市区に借りた部屋に住民票を移してそちらの住民になる必要が当然に生じます(ここが2)3)と違うところです)。
「新居」が現在の自宅のそばだったとしても、生活の実態を「新居」に移さなければ住所の偽装と受け取られかねないため、少なくとも平日、妻と子どもはそちらで生活することになるでしょうし、そのためにはやはりファミリータイプのマンションないしアパートを借りる必要はあります。
そうなると、2)3)のケースほどではないとはいえ、やはり3年間で数百万円の出費は避けられません。
しかも、それだけの出費と家族の一定の分断を伴いつつ、通学にはラッシュアワーの電車もしくはラッシュの渋滞道路に突っ込んで、現状維持よりは短くはなるものの片道1時間(妻は2往復なので毎日4時間)かかり、次女の幼稚園問題に困難が残るというのは、あまり納得できるものではないように感じられました。
とはいえ、この選択肢は比較的現実的であるため、実は最後の最後まで検討の俎上に残っていました。
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2015年02月09日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(6)

さて、「長女の高校通学問題」を私的に解決するための方策案として、以下の8つを検討の俎上に乗せました。

1)現状維持
2)学区の高校の近くに家を借りる(家族全員)
3)学区の高校の近くに家を借りる(母子のみ)
4)隣の市区に家を借りる(家族全員)
5)隣の市区に家を借りる(母子のみ)
6)郊外に家を借りる(家族全員)
7)郊外に家を借りる(母子のみ)
8)自宅を売却して郊外に転居


そして、これらの案を比較検討する際の評価基準として、以下の8つを考慮することにしました。

①コスト
②通学の利便性
③卒業後の進路
④次女の幼稚園
⑤家族のつながりとバックアップ体制
⑥妻の実家からのサポートの受けやすさ
⑦住居の防音性能
⑧その他


以上をふまえて、各案を検討していきます。

まず、1)はそもそも論外です。

1)では問題が解決できないから他のアイデアを探しているわけなので、せいぜい、他の全てのアイデアがダメだった場合の「やむを得ない選択」としてしか、選ぶ価値がないでしょう。

次に、当初は有力な候補だと考えていたのが、2)もしくは3)でした。

この選択肢のメリットは、住民票を移したりする意味での引っ越しが必ずしも必要でないということです。
住所は今のまま、セカンドハウス的に学区の特別支援学校の近くに部屋を借り、そこをある種の「拠点」にして長女の通学をサポートする態勢を組むのであれば、各種手続きはほとんど必要ないですし、借りる部屋は寝泊まりと平日の生活ができる最低限の広さにして、必要に応じて現在の自宅と行き来するようにすれば済みます。
学区の特別支援学校はいわゆる「より都心に近い人気のある住宅地」に所在しているため、賃貸住宅が非常に高く、コストの問題を考えるとほぼ必然的に選択肢は2)ではなく3)になっていきます。
ただ、そうは言っても⑦の問題があるため、選ぶべき住居はアパートではなくマンションの1階ということになります。
さらに、ワンルームではさすがに狭すぎるので(小さめの)ファミリータイプの部屋ということになり、さらに子どもを連れての移動にマイカーが欠かせないとなると駐車場も契約しなければなりません。そのような条件で相場をチェックしてみた結果、どうしても部屋+駐車場の賃料だけでも月15万円は確実に超えてきてしまうことが分かりました。
それ以外に、「拠点」のためのマイカーの購入費と維持費(税金・保険・車検等)も、軽自動車程度は必要になるのでかかってくるでしょうし、夫婦が別居になると生活費もダブルでかかりますから、そういったものを全体でならすと、やはり月あたり20〜25万円程度のコストがかかり続けることが確実です。

これを3年続けるとなると、800万円程度のコストになるでしょう。
しかも、このコストは全て「消えてしまって何も残らないコスト」であり、かつ家族はばらばらになり、妻の実家からも不便でサポートも期待できなくなります。
さらに、高校(および平日拠点)の場所と、卒業後に戻ってくる自宅とは、同じ市区とはいえまったく別の生活圏であるため、長女の卒業後の進路を見つける活動にも大きな支障が出ることが予想されます。

同じ大金をかけるにしても、それで十分に納得のいく解決になるならまだしも、このように妥協しまくり・問題ありまくりの「解決法」に、これだけの大金を費消してしまうことは、あまりにもったいなく、生産的ではありません。

というわけで、2)および3)については、主にコストの問題と卒業後の進路の問題から、選択肢としては問題があるという結論に達しました
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2015年02月02日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(5)

さまざまな事情により、このままでは長女が特別支援学校の高等部に進学しても通学が極めて困難になってしまうという問題が生じたため、我が家では家族全員で(といっても事実上は私と妻の2人ですが)解決策を模索することになりました。

そのなかで、具体的に考えついたアイデアは、たとえば以下のようなものでした。

1)現状維持。いまの自宅に居を構えたまま、なんとか越境入学できるように頑張るが、それができなければ学区指定の高校に送迎する。

2)学区で指定された高校の近くに賃貸住宅を借りて3年間だけそちらに住む(家族全員)

3)学区で指定された高校の近くに賃貸住宅を借りて3年間だけそちらに住む(母子のみ、土日は自宅に戻ってくる)

4)隣の市区に賃貸住宅を借りて学区を移し、3年間だけそちらに住む(家族全員)

5)隣の市区に賃貸住宅を借りて学区を移し、3年間だけそちらに住む(母子のみ、土日は自宅に戻ってくる)

6)市区が変わる郊外に賃貸住宅を借りて学区を移し、3年間だけそちらに住む(家族全員)

7)市区が変わる郊外に賃貸住宅を借りて学区を移し、3年間だけそちらに住む(母子のみ、土日は自宅に戻ってくる)

8)市区が変わる郊外に家を購入し(または賃貸で借りて)、自宅を売却してそちらに引っ越す。


他にもいろいろ考えましたが、それなりに現実的に検討できるものとしては、概ね上記のようなものに収まりました。

ここで、それぞれの選択肢を比較するためのポイントは、以下のようなものでした。

①コスト
 長女が高校にいる3年間にかかるコストがどの程度かかるか。不動産がからむため、選択肢によっては数千万円単位のコストがかかりうるので、これは検討にあたってのかなり大きなポイントになります。
 家族全員で引っ越す場合、現在の自宅を貸し出して収益を得るチャンスもなくはないですが、戸建ての賃貸というのは流通市場が極めて弱いのでカウントしないことにしました。(家を賃貸に出す場合、引越し先に入り切らない荷物をレンタル倉庫に預けることにもなり、さらにコストが膨らむという問題もありました。)
 家族が別居する選択肢の場合、マイカーをもう一台買うコストと維持費も必要でしょう。

②長女の通学(親の送迎)の利便性
 長女を高校に送迎する利便性が高いかどうか。大きなコストをかけて、結局ラッシュアワーの電車に1時間乗らなければならないような選択肢を選ぶ必然性はありません。

③卒業後の進路
 長女の障害の重さからいって、卒業後は福祉関連の施設に通うという進路になる可能性が高いでしょう。長女の進路を卒業までに確保しやすいかどうかは、実は「最大の重要ポイント」と言えるかもしれません。
 そういった情報の多くは学校で手に入るでしょうから、「学校の所在地」と「卒業後の住所」が違うことは、実は大きなハンデになります。

④次女の幼稚園
 長女の高校だけでなく、次女を幼稚園に預けやすいかどうかも検討すべき要素の1つです。子どもは熱を出したりもしますから、「妻が住む場所」と幼稚園は近くないとまずいでしょう。

⑤家族のつながりとバックアップ体制
 選択肢の中には家族が離れ離れになるものもありますが、これは家族のつながりが弱まる
だけでなく、家族の誰かが病気になったとき等のバックアップ体制も脆弱になるという問題があります。

⑥妻の実家からのサポートの受けやすさ
 妻の両親もだいぶ高齢になってきましたが、今でも何か外せない用があるときに長女を預かって留守番をお願いするなど、多大なサポートを受けています。
 引っ越しを伴う選択肢の場合、このサポートが今後も受けやすいか(妻の両親から見ると、負担なく来られるか)というのもポイントになります。

⑦住居の防音性能
 長女はときどきパニックを起こし、大声で泣いたり地団駄を踏んで大きな音を出したりします。
 これを完全に防ぐことは不可能なので、そういった事態になったとき、共同住宅の2階より上や壁の薄い木造アパートなどは選びにくいです。

⑧その他
 私の通勤の便、休日にセカンドハウスに遊びに行きやすいか(中央道へのアクセス)といったことも、同時に考慮の対象としました。
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2015年01月26日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(4)

我が家は市区の外れにあり、現在通っている特別支援学校は中学部までしかありません。
そして、学区で決められた高等部は同じ市区のほぼ反対側(かつ都心側)にあってスクールバスも出ていないため、通学が極めて困難だという問題がありました。

ただ、もちろんこの問題は我が家以外の「先輩家族」の方にもあったわけですが、そういった方たちはみな隣接する市区の学区にある特別支援学校に越境入学することで問題が解決できていました。
そのため、我が家も当然その選択をするつもりでいました。学校側もこの問題を認識しており、越境入学のための説明会や学校見学も校内で案内されていました。
ところが、この隣接市区の特別支援学校が再編され、それによって学区が変更されて規模に比較して非常に多くの生徒を受け入れなければならなくなったため、これまで比較的定常的に受け入れていた学区外からの越境入学を、突然認めなくなってしまったのです。

これが、長女が小学3年生くらいのころに起こった動きです。
それ以降は実際、中学部からの生徒の進学先の表を見ても、それまでずっと一定数存在していたその学校への進学者がある年を境にゼロになってしまっており、学校見学や越境入学の案内なども学校に届かなくなってしまったので、我が家も「これはこの学校への越境入学は無理になったようだ」と悟りました。

これによって、それまでは越境で解決できると思っていた長女の高校進学問題が解決できなくなり、突如として「無理ゲー」になってしまったというわけです。

それでも、似たような境遇の家族は他にもいるわけで、学校サイドからなにかしらの解決策が示されるのではないかと期待していたのですが、結局1年たっても2年たっても状況は変わりませんでした。
スクールバスについては、コストの問題、学校の駐車場の問題などがあり、嘆願は毎年出ているものの、いい答えはまったく得られていない、そういう状況のようでした。
そして、そういった境遇におかれてしまった「先輩家族」がどうしているかといえば、「往復何時間もかけてなんとか学区の高等部に通わせる(実際には学校を欠席する日がたくさん出てしまう)」か、「引っ越して学区を変えてしまう」か、あとはツテのある有力者を通じて越境入学を何とか押し込んでしまうとか、いずれにしても相当無理な解決法をとっていることも分かりました。
学区を変えるための引っ越しを選択した家族の中には、自宅が持ち家だということもあって、一時的な(子どもが高校にいある間だけの)引っ越しコストを抑えるために、妻と子どもだけが小さめのマンションなどに引っ越す「越境入学別居」を選択している家族もありました。

学校の案内にしたがって越境入学を申し込む、という形で、これまで「公」の側で解決できていたはずの問題が、いきなり、強引に「私」の側で解決しなければならない問題に移行してしまったわけです。
そしてそれは、我が家も同じことでした。
(ちなみにこのような動きは、子どもに希望の学区の学校に通わせたい普通校の生徒の家族や、より充実した公的療育サービスを受けさせたい未就学の障害児の家族でも現に起こっていることですが、この問題の場合「選り好みするつもりが全くないのに、与えられている選択肢を事実上選べない」という点が異なるのではないか、と考えます。)

そんなわけで、この問題を「私的に」解決するほかなくなった我が家にとって、どのような解決策が考えられるかを模索する日々が始まりました。
この問題を本格的に検討し始めたのが、次女が誕生することが判明し、かつ区切りのいい「小学校卒業」まで1年半ほどとなった、一昨年(2013年)の秋口でした。
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2015年01月19日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(3)

前回、長女の高等部への通学に、非常な困難が予想される事態となってしまったことを書きました。
電車、バス、マイカー、どれを使っても片道1時間半近い時間がかかり、かつ朝はラッシュのピークに巻き込まれてしまうことが確実です。
電車を使う場合、徒歩だけで往復毎日1時間以上歩くことになり、「送」と「迎」を両方やる必要がある妻はさらにその2倍の時間を毎日移動だけに費やすことになります。

そして我が家の場合、チャレンジはそれだけにとどまらず、さらにここに「次女」という要素が加わることになります

長女が高校生のとき、次女は3〜5歳で幼稚園等に通う年齢です。したがって、長女の高等部への送迎に加えて、次女の幼稚園への送迎も毎日のスケジュールに組み込まなければならないことになります。

地元に近い幼稚園では送迎が間に合わないので、長女の学校に近い(=何かあったときに迎えに行くのに1時間半近くかかる)幼稚園を探し、そこに預け、かつ長女の送迎もこなさなければならないことになります。
当然、ラッシュの電車には妻は2人の子どもを引き連れて乗り、乗り換えまでしなければならないことに。

いや、これはぶっちゃけ無理。
「自宅に住んだまま、普通に娘を学区に従った学校に通わせる」ということが、これほど無理ゲーになってしまうとは、ちょっと想像もしていませんでした。

もちろん、この問題はもっと早くから(小学部に入学した当初から)認識していたのですが、その時点では、それに対する手堅い「解決法」がありました。

そもそも、学区に従った高等部がこれほどまでに不便な場所になってしまう理由は、まあ1つは「特別支援学校は一般的に辺ぴで不便な場所にある(だいたい住民の反対運動とかで、そういう場所に追いやられていることが多いのです)」ということがあるようですが、それよりも我が家の場合は、自宅の住所が市区の境界近くの外れにあるということが大きかったのです。
家から10mほど歩くと別の市区ですし、当該高校のカバーする学区の範囲のなかで、もっとも遠く離れた外れにあたります。

ですから、実は他の学区の特別支援学校高等部のほうが、ずっと近かったりします
というわけで、小学校入学当初から、高等部進学の問題についての解決策として考えていたことは、「越境入学」でした。
実際、自宅の近所から中学部に通っているお子さんの多くは越境入学をしているという実績もありましたし、そちらの学校ならラッシュとは反対方向の空いた電車に乗れば、乗り換えなしで最寄り駅まで20分程度で到着するので、問題なく通えるし送迎もできると読んでいたのです。

ところが、この目論見はある事情によって外れてしまうことになりました。
posted by そらパパ at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2015年01月12日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(2)

さて、前回も軽く触れたとおり、今回我が家が家を建てることになったのは、娘の将来の療育環境に大きな問題が生じたからでした。

…と、その前に、もう1つの「きっかけ」がありました。
それは、次女が生まれることになったことでした。
長女が重度の障害をもっていたということで、「ふたりめ」をどうしようか?ということについてなかなか決断できずにいたのですが、妻の年齢的なところも考慮して、いまチャンスがあればいいね、と話し合っていたところ、幸運にも次女を授かることになりました。

これによって、長女と12歳違いのきょうだいが家族に加わることになったことが、結果的に今回の「決断」にも大きな影響を与えることになります。

さて、話を戻して、ここで言及している長女の療育の問題の「正体」ですが、実は高校(特別支援学校の高等部)への進学についての問題でした。

娘はいま小6で、あと3年と少し先には、高等部に進学することになるでしょう。
いま通っている特別支援学校は中学までしかないため、高等部で学校が変わることになりますが、自宅住所から決められた学区に基づくと、自宅よりずっと都心寄りの学校に通うことになります。
この、我が家から高等部への交通のアクセスが極めて悪いというのが、「問題」になります。

具体的にいうと、自宅から最寄りの鉄道の駅まで徒歩15〜20分、そこから電車2本を乗り継いで35〜40分、さらにそこから学校まで徒歩25〜30分、待ち時間も含めると、合計で片道1時間半程度かかります。徒歩時間だけでも片道40〜50分、往復だと1時間半ほど必要になる計算です。
しかも、行きは時間も路線も完全に通勤ラッシュと重なってしまうため、ラッシュにもまれながら通学することになります(電車もノロノロ運転)。

そして、学校に通う長女は毎日1往復ですが、長女を送り迎えする妻はこれを2往復することになり、片道1時間半だとすると送迎だけで毎日6時間、1週間で30時間を費やすことになってしまうわけです。自宅と生活圏が重ならない学校近辺で、毎日時間つぶしするわけにもいかないでしょう。

鉄道を使う以外のルートも考えましたが、バスを乗り継いでも同じ以上の時間と手間とやはり避けられないラッシュ(バスの中も混んでいて、経路の渋滞にも巻き込まれます)、車で送迎の場合は首都高または幹線道路をラッシュ方向に向かうため渋滞必至で電車より早く出発する必要があるうえ、そもそも学校に駐車場がありません。

もし、スクールバスがあれば問題は解決するのですが、こちらの高等部についてはそれもなく、全面的に介助が必要な生徒でも、家族が送迎しなければなりません。
これは他の生徒の家族も同じ問題があるため、スクールバスの要望が毎年出ているようですが、結局実現せず現在に至っているそうなので、当面の実現は望み薄と判断せざるを得ないでしょう。

そして、我が家の場合、問題はこれだけではありません
posted by そらパパ at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2015年01月05日

自閉症の子どもと暮らす家づくり(1)

当ブログにお越しくださっている皆さん、あけましておめでとうございます。
今年も当ブログともどもよろしくお願い致します。


さて、新年でキリのいいところでもありますので、新しいシリーズ記事をスタートしたいと思います。

今回取り上げるのは、療育のことを意識した「家づくり」についてです。

このブログで、療育にからんだ不動産の話を2回も書くことになるとは思いもよらなかったのですが、いろいろな状況の(一部は偶然も含む)重なりによって、「療育を考えた家えらび、家づくり」を行うことになりましたので、その話題を連続エントリとして書いてみることにしました。

(ちなみに1つめは「療育のためのセカンドハウス」というシリーズ記事です)

我が家は、このたび自宅を建てました。
その背景には、子どもの療育、子育てに関わるある重大な問題が生じた、ということがあります。
その状況の発生によって、どうしても「そのまま、いま住んでいる家に住み続ける」ことが困難になってしまったのです。
我が家では、その問題を解決するためにどうすればいいだろうか?ということを家族全員でじっくりと考えました。その結果、「いま住んでいる家を手放し、別の家に住み替える」のがもっとも賢明な選択である、という結論に達し、さらにその住み替えの具体的なやりかたを突き詰めていった結果、「土地から探してゼロから家を建てる」という判断をするにいたったというわけです。


上棟のころの様子です。

そして、今回の住み替えにあたっては、きっかけのみならず、その「検討」のプロセスのすべてにおいて、障害ある娘の療育や将来の生活のことを最重要の要検討ファクターの1つとして考慮し、進めていきました
乱暴ないいかたをすれば「療育のことを考えた家えらび、家づくり」を行なった、ということになると思います。

これから、この連続エントリで、今回家えらび、家づくりのプロセスを、「療育」という観点から書いてみたいと思っています。

ただそれは、「こういう風に、不動産に家庭のリソースを使うのが正しい」と主張したいわけではまったくありません。むしろ逆です。
子どもが障害をもって生まれてきて、そのことによってリソースをどこにかけるのか、ということはすべての家庭のケースごとに異なると思います。
そしてそれは、子どもや家族と向き合って決めたリソースの配分である限りにおいて、それぞれ個別に正当なものだと思います。

ですから、「こういう風に使うのが(絶対的に)正しい」ではなく、「こういう風に使うという我が家の経験を、(相対的な)1つのアイデア、経験談として提示してみる」というのが、このエントリの目的になります。

言い換えると、家庭のリソースの使い方として当ブログ以外ではあまり取り上げられていないネタとして、書いてみようと思っています。
これは、リゾートマンションの記事のときと同じです。

また、今回はエントリの中身を「療育」という話題に必ずしも限定せず、家づくりの過程で経験したさまざまなことや、「住」や不動産についての私の経験など、幅広い話題についても触れていくつもりです。
(「療育限定」のエントリをこのブログに書いて、家づくり全般の話題は別ブログで書こうかとも思ったのですが、両者は連動していて分けるのが難しいですし、それをやると「療育限定」のほうが早々にネタ切れになりそうだったので(笑)まとめてしまうことにしました。)
ですので、「療育」の話題だけを追いかけたいと考える方には、かなり遠回りな印象のエントリになりかもしれません。その点は予めご了承願います。

また、エントリの内容は、一部プライバシー等に配慮し、あえて事実と異なる記述をする場合があります。純粋なノンフィクションとしてではなく、事実に基づいたエッセイ的エントリとしてお読みいただければ幸いです。


↑いろいろ間取りを考えていた頃の案の1つ。家の真ん中に中庭があります。最終的にこの案はボツになりました。
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2014年10月27日

つながろ!にがてをかえる?まほうのくふう(ブックレビュー)

献本御礼。安心して読めるいい絵本です。


つながろ! にがてをかえる?まほうのくふう
著:しまだようこ
監修:井上雅彦
今井出版

※上記リンク先、Amazonの在庫ではなくマーケットプレイスの在庫のみ表示されるようですが、出版元の今井出版による出品としてAmazon倉庫から配送無料で配送されます。

こういった「絵本」のようなタイプの自閉症本は、私の場合、環境的にあまり読む機会がないので、今回興味深く読ませていただきました。



この本は、発達障害でない健常の子ども(と、そういった子どもを指導する先生)に向けて、発達障害とはどんなものであるか、どういった理解と支援をすればいいのか、といったことを誰にでも読んで理解できるようにまとめた「絵本」です。
対象は幼稚園~小学校低学年あたりだと思われます。

ページ数にして、本文で32ページしかない(しかも全ページ見開きの絵)ですので、すぐに読み終わることができますが、この少ないページのなかに、発達障害への特別支援教育のエッセンスがうまく濃縮して盛り込まれています


こちらのページでは、絵カードによる手順指導、タイムタイマー、表情の視覚化やルールの視覚化などがとりあげられているのが分かります。

しかも興味深いことに、その「エッセンス」がどんなものであるか、最後のページでまとめて解説がされているんですね。



こういう本は、具体的な内容をまとめても「ネタバレ」にはならないと思いますので、その全ポイントをまとめておきたいと思います。

<発達障害の理解に関連すること>

・声の調整が難しく大声を出してしまうこと
・じっとしているのが苦手なこと
・思いついたことをすぐにやってしまうこと
・同じことを繰り返すこと
・集中して周りのことが見えなくなってしまうこと
・順番やものの位置が気になってしまうこと
・他人の感情を読み取るのが苦手なこと

<発達障害の支援に関連すること>

・視界に入る無駄なものを取り除くこと
・絵カードを使うこと
・タイムタイマーを使うこと
・表情・感情を絵カードで表すこと
・ルールを文字に書いて示すこと
・相手の視界に入ってから声をかけること
・特別支援とはユニバーサル教育であること
・支援によって「ありのままで頑張れる」環境をつくること


この絵本に登場する発達障害の女の子は「まいちゃん」というのですが、この整理からすると、まいちゃんはADHDの特性をあわせもったアスペルガー症候群の女の子であるように思われます。

…はい、そしてこの写真を見て分かるとおり、この絵本は、

続きがあります・・・
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2014年01月27日

NOといえる(ようになる)療育 (23)

こちらのシリーズ記事では、後半部として、「しない」ということば(拒否の意思表示)を活用したコミュニケーションがなぜ「難しい」のかについて、さまざまな角度から考察しています。

ここ何回かは、「しない」と一見よく似ている、「えらぶ」というコミュニケーションが、実際にはかなり異質のものである(「えらぶ」は比較的易しく、「しない」はそれよりもずっと難しい)という話題を書いています。

さて、前回は、「えらぶ」というコミュニケーションを表す「動作」は、単に欲しいものに手を出すということと同じであり、特別な動作は必要ないのに対して、「しない」のほうは特別な動作(提示されているにもかかわらず選ばない)が必要だ、という話題に触れました。

「えらぶ」という動作は、非常に習得が容易な動作です。

なぜなら、

続きがあります・・・
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2013年12月23日

子ども観察力&支援力養成ガイド 家庭支援編(ブックレビュー)

マニュアルが書ける療育こそが、いい療育。


応用行動分析学から学ぶ 子ども観察力&支援力養成ガイド 家庭支援編 : 発達障害のある子の「困り」を「育ち」につなげる!
著:平澤 紀子
学研 ヒューマンケアブックス

はじめに
第1章 今の困りは次の育ち
 困った行動の正体
 なぜ、そのように行動するの?
 困った行動から読み解く子どもの育ち
 ABCから支援を考える
 うまくいくABCを探す
第2章 家族と考える家庭における支援
 困りを具体化する
 ABCから支援を考える
 子どもと家族が取り組みやすい方法を探る
 支援を行い、取り組みの成果が見えるようにする
第3章 ケースから学ぶ家庭支援
 母親のあいまいな「困り」を具体的な行動で考えた支援-帰宅後に泣き出すユキオ君(幼稚園4歳児)
 「イヤ」の正体を探り家庭での対応を工夫した支援-朝の洗面を嫌がるユウコさん(幼稚園5歳児)
 行動の意味がわかったことで家族が楽になった支援-延々と物の位置を直すヒロシ君(特別支援学校小学部1年生)
 自分で学ぶ楽しさを育てた家庭学習への支援-宿題に取り組まないケン君(小学校3年生)
 家庭で考えが違うきょうだい関係への支援-弟とのけんかが絶えないマミさん(小学校2年生)
 地域との連携で家族の困りを解決した支援-勝手に外へ出て行ってしまうユウキ君(特別支援学校小学部4年生)
 問題を避けることを優先した自傷行為への支援-自分の頭をたたくタカオ君(特別支援学校小学部6年生)
 母親が子どもの困りを整理し学校につなげた支援-「学校に行きたくない」と言うユキさん(小学校5年生)
 父親が主導した親子関係への支援-母親に反抗的なダイスケ君(中学校1年せい)
 家族に学校での困りを伝えられるようにした支援-会話に割り込み、延々と話すミツオ君(高校1年生)
 学校でできないことへの分析が家庭生活の改善に結びついた支援-課題の提出ができないサチコさん(高校1年生)
 学校が行う家庭支援プログラム-すぐにパニックを起こすダイチ君(特別支援学校小学部2年生)
おわりに
参考文献
著者プロフィール


学研教育出版様より献本御礼。
以前当ブログのブックレビューでもとりあげたABA療育本の「子ども観察力&支援力 養成ガイド」の続編が出ました。



このシリーズは、ABA(応用行動分析)をベースにした療育・支援について、誰でも同じように実施できるように「マニュアル化」することを強く意識した、実践寄りの療育本です。

その支援のやり方は、あらゆる問題に対して基本的にはすべて同じです。

1) 問題行動を具体的な行動として記述する(どういう状況で、どのような行動を、どれくらいの頻度で行なうのか。それによってどれくらい周囲が困っているのか等)。
2) その問題行動を、いわゆる「ABC分析」によって分解し、A,B,Cそれぞれに対してどう働きかければ問題が解決しうるかを考える。
3) それらの解決法のうち、実際に取り組みやすそうなものを選択して支援プログラムを決定。
4) 記録をとり、支援プログラムがうまくいっているかどうかを客観的に判定。
5) うまくいっていればさらに支援内容を発展させ、うまくいっていなければ再度分析・支援プログラムの策定をやり直す。


シリーズの新作である本書では、この「支援のマニュアル化」の方向性がさらにはっきりし、すべての問題について、上記の1)~5)をかっちりと当てはめて解決を目指すというやり方が徹底しています。

このようなやり方について、疑問を感じる向きもあるかもしれません。たとえば、

・なんでもかんでも同じやり方では、融通が利かなくて効果が出ないんじゃないの?
・ABAの達人の先生って、もっと柔軟にいろんなやり方で働きかけてるんじゃないの?


などなど。

それに対する私なりの整理としては、

続きがあります・・・
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2013年09月16日

ボクの彼女は発達障害(ブックレビュー)

愛だけじゃ、やってけない。でも、愛がなきゃ、やってけないかも。


ボクの彼女は発達障害: 障害者カップルのドタバタ日記
著:くらげ
マンガ:寺島ヒロ
監修:梅永雄二
学研(ヒューマンケアブックス)

はじめに
登場人物紹介

第1章 身だしなみといろいろな先入観
 かわいい服が着られない!?
 服を買いに行ったらパニック!
 化粧ができないよ
 メガネにはこだわる
 梅永先生のメッセージ1
コラム くらげとあお、二人の出会い

第2章 お出かけでドタバタ!
 チョイスができない!
 チョイスしたらそれがパターンに
 いつものレストランが満席でパニック!
 「お金を大事に使う」ってどういうこと?
 財布の中身は小銭だらけ!
 梅永先生のメッセージ2
コラム 発達障害の日常をイメージするには

第3章 日常生活、あれもこれも
 毒舌の理由
 メガネで人を認識してはいけない
 振り込め詐欺でパニック!
 朝専用コーヒーは朝しか飲んじゃダメ?
 確認することを確認するのを忘れる!
 子どもが怖い!
 梅永先生のメッセージ3
コラム 1 あお、診断を受ける
    2 あお、診断をうけて変わったこと
    3 あお、親にかミングアウトする

身近な人たちがまず理解して
特別ではなく普遍的なふたり
おわりに


ツイッターの私のタイムラインでは、発売前から大変に話題になっていた本でした。
本書の著者である「くらげ」さん(@kurage313book)は、ご本人も聴覚障害があり、そして本書のタイトルどおり、交際している女性には発達障害がある、という「障害当事者カップル」のひとりとしてツイッターで積極的に発言されている方ですが、そういう立場や境遇からかもし出されがちな「力(りき)み」みたいなものを感じさせない、とても肩の力の抜けた方です。

「肩の力が抜けている」というのは、例えば、交際相手であり、本書でも「実質的な主役」である「あお」さんのことを(ツイッターで)話題にするときも、そこには「発達障害という障害をもった女性」ではなく、「自分の恋愛対象である、他の誰でもない『あお』さん」が言及されているわけで、

要は、ほんとにただのノロケ。(笑)

でも、この「ただのノロケ」の対象になる、なれる、あたりまえの恋愛関係がつむぎ出される、ということが、どれだけの価値があることか、ということでもあって。

それを実感している「発達障害クラスタ」の皆さんから大いに支持され、くらげさんがノロケるたびに、周囲がみんなして「もげろ」とか「爆発しろ」と「温かい声援」を送る、そしてときどき「あお」さんが障害ゆえにパニックを起こしたり精神的に参ったりといったことが起こったときに、問題を乗り越えられるよう一生懸命頑張る「くらげ」さんにも、共感とある種の羨望が投げかけられる、そんな、ツイッターをぐるっと見回してみてもあまり他では見当たらないような、独特の「くらげ空間」が生み出されているのです。

本書は、簡単にいえば、そんな「くらげ空間」を紙面から追体験する本です。

全体の半分弱はとても読みやすいマンガになっていますし、それに続くエッセイ部分もくらげさんと「あお」さんの会話中心で易しくスラスラと読めます。
もちろん、「学研のヒューマンケアブックス」でもあるわけで、話題は発達障害であるがゆえの苦労話が中心になっているわけですが、それを力みなく受け止め、適切な配慮と対応で切り抜け、「それもまたあおの面白いところ」とノロけ、あろうことか最後は「XXXX、XX(自主規制)」と究極のノロケで終わっている(笑)この本を、私たちもそんなに力んで読む必要なんて全然ないはずです。

ぼくかの
↑学研ヒューマンケアブックスの一冊をコテコテのノロケで締めるという大暴挙。

すべての読者はこの結末を読んで「もげろ」「爆発しろ」と思うことでしょう(笑)。
そして同時に、とても手に入りにくい、とても大切なものに(うっかり)触れてしまったことで(うっかり)温かい気持ちになってしまうことを避けられないでしょう。
それこそが、読者もまた(うっかり)「くらげ空間」に取り込まれてしまったことに他なりません。

そんな「もげろ体験」ができれば、本書を読む意味は90%くらい達成されたと言っていいんじゃないでしょうか(笑)。

・・・

・・・さて。

これだけだとただのティーザー広告みたいなので(笑)、少しだけ本書について真面目な紹介や考察なども書きたいと思います(まあ蛇足といえなくもないですけど)。続きがあります・・・
posted by そらパパ at 20:50| Comment(3) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2013年08月26日

あたし研究2(ブックレビュー)

当ブログ殿堂入りの本、「あたし研究」の続編が出ました!

【送料無料】あたし研究(2) ...

【送料無料】あたし研究(2) ...
価格:2,100円(税込、送料込)


あたし研究2
小道 モコ
クリエイツかもがわ


↑2冊並べてみました。ほとんどの本を自炊してしまった我が家で残っている数少ない「紙の本」でもあります。

前作は、アスペルガー症候群の著者が、毎日の生活で感じている違和感、困難、周囲と異なる自分の認識傾向、そしてそのギャップを乗り越えて毎日を前向きに生きていくための工夫や考え方などを、著者自身の描くイラストと記事で紹介・解説し、さらにそれらとは独立したコラムとして著者の主治医の(より障害特性として一般化した)解説がはさまれる、という、非常にユニークな構成の本でした。

特にポイントは、「著者自身が描くイラスト」というところですね。

こういった、障害当事者自身がその障害について語る、いわゆる「当事者本」は、そこで語られるエピソードを過剰に一般化しないこと、そして当事者以外の第三者がヘタに「解釈」しないこと、この2つがとても重要だと私は考えています。

そのあたりは前作のレビューでも書いたところですが、あらためて簡単にまとめれば、次のようなことです。

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする

2013年08月05日

広汎性発達障害児への応用行動分析(フリーオペラント法)(ブックレビュー)

たまたまツイッターのTL上で知った本ですが、これはなかなかすごい。
他のどの本にも載っていない内容が書かれた、とても貴重な本だと思います。


広汎性発達障害児への応用行動分析(フリーオペラント法)
著:佐久間 徹
二瓶社

まえがき
第1章 広汎性発達障害について
 診断について
 人は学習によって人になる。しかし教育はセレクトしかしてこなかった
 「できの悪い子は落第」から「幸せ追求の支援」へ
第2章 応用行動分析の登場
 どうして行動療法は悪評まみれだったのか?
 応用行動分析(ABA)とは?
 ソーシャルスキルトレーニング(SST)
 ちょっとばかり付け加えます
 ロバースの行動療法
 ロバース手続きの改善
 私自身のスタート
 われわれは学者じゃない
 オペラント条件づけによる行動変容のカギ
第3章 フリーオペラント法実施への補足
 徹底的な甘やかし
 わがままが酷い例
 わがままと困難克服とは同一の行動パターンである
 自立の催促は無用
 くすぐり刺激
 皮膚刺激
 静かな抱っこ二十分
 逆模倣
 指導の優先順位
 喃語の発生頻度がその後の言語発達を大きく左右する
 単語が出だしたら
 ことばは意味を知っていても、発音がちゃんとできても、話せない
 構音障害
第4章 不適応行動への対応
 他傷行動、暴力行為
  1.思い通りにしたいための他傷行動
  2.嫌なことの回避手段としての他傷行動
  3.注意引きのための他傷行動
  4.試しの他傷行動
  5.フラッシュバックの他傷行動
  番外
 自傷行動
  1.人の存在が無関係な自傷行動
  2.苦痛の緩和手段としての自傷行動
  3.なんともお手上げの自傷行動
  4.人の存在が必須条件の自傷行動
 固執、こだわり行動
 五感のアンバランスによる不適応行動
 その他さまざまな不適応行動
 おしっこトラブルの解決策
  おねしょ
  具体的解決策その一
  具体的解決策その二
  具体的解決策その三
  具体的解決策その四
  トイレ排尿の困難
第5章 発達障害児をめぐる諸問題
 医師の診断について
 発達検査について
 児童相談所について
 民間施設について
 保育所、幼稚園について
 小学校について
 いい先生について
 お金と趣味について
まとめ


著者は「あの」久野先生のお弟子さんなのだそうです。
それを知っただけでも本書への期待が高まりますが、実際の中身はその期待通り(いい点も悪い点(笑)も)で、ものすごく個性的な本に仕上がっています。

ちなみに、本書はこの手の本としては定価840円(税込)と、びっくりするほど安いのですが、実物が届くと少し納得します。サイズ、ボリューム感が「新書」のそれなんですね。
コンパクトなので、短い時間でさっと読めて、繰り返し読み返せます(そして恐らく、繰り返し読み返すに値する本です)。

ところで、最初に、本書に関する非常に重要なポイントを指摘しておきます。
それは、この本が主に対象としている療育対象が、どのようなお子さんであるか、ということです。

続きがあります・・・
posted by そらパパ at 20:39| Comment(14) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
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