さて、前回のスキナー箱の話の続きに入る前に、行動療法のもう1つの重要な考え方である行動随伴性と、そのツールとしてのABC分析について書きたいと思います。
行動随伴性とは、ある状況のもとで、ある行動をとると、ある結果が起こる、という、行動と状況の関係のことです。この、「ある状況(Antecedent events)」「ある行動(Behavior)」「ある結果(Consequences)」をそれぞれ、A,B,Cと省略し、このABCの関係を考えることを「ABC分析」といいます。
行動療法では、このABCのうち、主にC(結果)をコントロールすることによって、望ましい行動を学習させていきます。つまり、望ましい行動(B)に対してごほうびを与え(C)、そうでない行動(B)にはごほうびを与えない(C)ことにより、望ましい行動を形成していくわけです。
※一方、TEACCHでは、環境の構造化を第一に考えますので、ある意味、「A」をコントロールすることに力を入れていると考えることができます。「そらまめ式」も同様で、AおよびCをトータルでコントロールしていくことで、自閉症児にとって望ましい環境で望ましい行動を学習できるように働きかけていくことを目指します。
パニックのコントロールをしようとするときにも、このABC分析がとても大切です。
行動療法では、パニックは行動随伴性によって強化されている、と考えます。つまり、我々はパニックに対して何らかのごほうびを与えている、ということなのです。次のような例を考えてみましょう。
1) 子どもがスーパーでパニックを起こしたので仕方なくお菓子を1つ買ってやった。
2) 子どもがレストランで食べ終わるとパニックを起こしたのであわてて店を出た。
1)の例では、「スーパーにいる」という状況(A)で、パニックを起こす(B)と、お菓子を買ってもらえる(C)という形で、パニックが強化されています。
2)の例では、「食べ終わって退屈だ」という状況(A)で、パニックを起こす(B)と、店を出られる(C)という形で、パニックが強化されています。
このように、パニックをコントロールしようと考えるときには、そのパニック(B)がどういう仕組みで強化・維持されているかを客観的に考える必要があるのです。そして、パニックを起こす前の状況(A)またはパニックに対する対応(C)のどちらかまたは両方をコントロールすることによって、結果的にパニック(B)をコントロールします。
パニックに対する対応方法は後日体系化して整理したいと思いますが、上記1) 2) に対する対応は、例えばこうなるでしょう。いずれの対応も、パニック前の状況(A)またはパニックに対する対応(C)を、パニックが強化されないように変更するものです。
1) パニックを起こしてもお菓子を買い与えない(無視する)
パニックを起こす前(入店直後)にお菓子を買い与えてしまう。
パニックを起こさずに買い物を終えられたら、レジ横のお菓子を買ってあげる。
2) パニックを起こしても急いで店を出ない(無視する)
食べ終わった後、退屈しないようにおもちゃを与える。
パニックを起こさず店を出られたら、子どもが喜ぶことをやってあげる。
次回はスキナー箱の話の続きです。
(次回に続きます。)