2005年11月03日

最初の一歩-「ママは味方」

さて、理論の話はいったん横において、私達が最初に始めた「療育」について書こうと思います。

といっても、普通に考えるような、トレーニング的な療育とは全く違います。
一般に療育というのは、子どもが大人の働きかけに対して何かしらの反応することを大前提として成り立っています。仮に言うことを聞かないで大暴れしたとしても、修正して、やってほしいことをやらせるための「きっかけ」にはなりますから、まったく反応しないよりはずっとマシということです。
ところが、2歳前の時点で、娘にはこの前提すら成り立っていませんでした。つまり、

1.働きかけに反応しない
2.そもそも我々に興味がない
3.泣く以外には要求を表すことさえしない(赤ちゃんのまま?)

といった状態だったわけです。これを、

1.働きかけに反応する
2.我々に興味や愛着を持つ
3.泣く以外の方法で要求を表す

というところまで「引き上げる」のが、最初のテーマになりました。

ところで、この1~3というのはよく考えると依存関係があり、身につく順番はおそらくこうだろう、と考えました。

1.我々に興味や愛着を持つ、それによって、我々に対して、
2.泣く以外の方法で要求を表す、それに対して我々が応えることによって、
3.働きかけに反応する、ようになる

だとすると、何より最初に必要なのは、「我々に興味や愛着を持つ」ことだ、と考えました。

当時の娘は、いわゆる後追いのような愛着行動が過去にあったものの既に消えており、親に対しても、基本的には「無関心」でした。
ただ、よく観察すると、母親がごはんを与えるとおとなしいのに私が与えると泣き出してしまう、といったように、どちらかというと母親が好きなようでした。ただ、当然親なので叱ることもあるわけですが、そういったことがあるとしばらくは怖がって近づかなくなるといった行動も見られました。

恐らく、娘はまだ世界のことがぼんやりとしか分からず、混沌とした不安の中で、ごはんをくれる一方で突然大きな声を出して怖がらせる「親」というものが、自分にとっていい存在なのか悪い存在なのか分からない(もっと正確に言えば「存在」として理解することさえ難しい)のだろう、と考えました。
言い換えれば、普通であればおっぱいをもらうことによって生まれてすぐに成立する、(母)親に対する「基本的信頼」が、いまだに確立していないのだろう、と推理したわけです。

そこで、私は1つのアイデアを実行することにしました。
それは、「母親=味方」「父親=悪役」という構図を作り出すこと、です。

どういうことかというと、娘にとって楽しいこと(ごはんを与える、ほめる、抱きしめる、安心させる)は極力母親がやるようにし、逆に娘にとって辛いこと(叱る、ちょっと怖い遊びをする、嫌がることをやらせる)は父親である私がやるようにしたのです。もちろん、私は常に娘のそばにいるわけではありませんから完璧ではありませんが、少なくとも二人でいるときは何か娘にするときはいつも「これは味方か悪役かどっちがやるべきことかな?」と考えて役割分担していました。
できるだけ、「母親は楽しいことばかりしてくれる」という状況を作ることで、まずは母親への基本的信頼を作ることに努めたのです。

これは、大げさにいえば、子どもにとっての親の役割を分かりやすくする一種の構造化(TEACCHでいう、自閉症の子にとって分かりやすいように環境に働きかける)だと考えられます。これは、つい最近までずっと続けていました。

これによって、私はますます「嫌われ役」になりましたが、明らかに娘が今までよりも長い時間、母親のそばにいるようになりました。(その後、改めて本格的な「母親べったり」の時期も出てきました。)
私達の「療育」は、こんな本当に小さなことから始まったのです。
posted by そらパパ at 20:39| Comment(2) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
奥様のところから参りました。

我が家も女児ですが、多分、最近はアスペまで、含めると、女児も多いと思います。
(自伝を書いている方も多くは女性ですし)

というわけで、今後ともどうぞ、よろしくお願い致します。
Posted by シャハラザード at 2005年11月06日 17:56
シャハラザードさん、はじめまして。

そうですね。そう言われてみると、自閉症について自ら語っている本で有名なものは、ほとんど女性のものですね。

「そらまめ日記」とは全然趣向の違うブログですが、実は両方読むと、とらえ方の違いなどが分かって面白い(?)かもしれません。

これからもよろしくお願いします。
Posted by そらパパ at 2005年11月06日 23:27
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