2005年11月02日

行動療法、TEACCH、そして認知心理学

 昨日のブログで書いたとおり、娘が自閉症である可能性が高いと考えた私たちは行政を通じて専門家の診断を受け、「ことばが遅く自閉傾向がある」ということで、簡単な療育プログラムに参加できることになりました。
 ただ、行政から提供される療育は週1~2回、1回2時間程度。これだけでは不十分だと考えた私たちは、まずは病院などを当たってみましたが、これらは療育の専門機関ではなく、定期的な療育を受ける機会は極めて限られていることが分かりました。
 娘が大きくなっていく貴重な日々を有効に活用するには、家庭でしっかり「療育」するしかない、というシンプルな結論に達した私は、自閉症とその療育についての勉強を開始しました。幸い、大学時代に心理学を専攻していたおかげで、専門書も比較的容易に読み解くことができました。
 その結果、現在自閉症の療育で成果をあげている手法として、行動療法(もしくは応用行動分析=ABA)とTEACCHという2つがあることを知りました。また、療育ではありませんが、「心の理論」のような、認知心理学と呼ばれる分野からの自閉症へのアプローチが存在することも分かりました。
 実は、私がかつて深く勉強したのも認知心理学でした。認知心理学とは、人間をコンピュータシステムのようにとらえる新しい心理学で、人間の活動は脳というコンピュータに蓄えられたさまざまなプログラムが複合的に動作することによって成り立っていると考えます。このような立場に立てば、自閉症とは、そのコンピュータに何らかの問題があってプログラムが正しく動いていない状態だと考えることができます。

 私は、既に実績をあげている行動療法やTEACCHの枠組みをふまえつつ、それらとは「異質なもの」と考えられがちな認知心理学のアプローチをうまく取り入れることで、家庭で負担をかけずに実行できて、かつ効果のある療育プログラムを作れるのではないか?と考えました。そして、娘に対して実際に私のアイデアを実行していきながら、同時に、応用が効くようにその考え方を体系化しようとチャレンジしています。それが、これから紹介していきたいと思っている「そらまめ式療育法」です。


認知心理学―知のアーキテクチャを探る
著:道又 爾 ほか
有斐閣アルマ

認知心理学の入門的専門書ですが、自閉症の療育を考えるヒントとして認知心理学の全体像を知りたい、というニーズに非常にしっくりくる本です。行動療法と認知心理学との歴史的関係についても触れられています。
この本の196ページ(初版)にとても興味深いことが書いてありました。

サルやヒトの脳には、他人が行動しているのを見たときに自分が行動したのと同じように信号を発する「ミラー・ニューロン」というのがあるそうですが、これがヒトの場合には言語をつかさどる「ブローカ野」と同じ場所に見つかるそうです。
ミラー・ニューロンは、他人に対する共感やコミュニケーションの発達と関係がある可能性があり、それが脳の言語に関係する場所に存在しているということは、コミュニケーションや共感性、言語などに特異的に障害をもつ自閉症との関係を連想させます。今後、この分野で、自閉症に関する新しい発見があるかもしれません。

さらに補足・・・
自閉症の子どもの認知障害に焦点を当てて療育をすすめるという考え方は、専門的な著書の中には存在するようですが、一般向けの書物では見当たらないようです。その部分に「そらまめ式」の存在意義があると思うので、私自身も勉強しながら、分かりやすい療育プログラムを作っていきたいと思います。
posted by そらパパ at 23:12| Comment(2) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして。
いつも、そらまめママさんのブログを拝見している
者です。
いろいろとがんばっていらっしゃるんですね。
我が家はABAを主治医に薦められ、勉強しています。
動作模倣とか、音声模倣ぐらいしかやってませんが。。。

うちも、3歳半で自閉君です。
市の通園施設に毎日バスで通園しています。
あ、上の子がぐずりはじめたので、これで失礼します。
Posted by あんあん at 2005年11月03日 07:02
あんあんさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

お医者さんは基本的にABA・行動療法が好きですね。非常に「理系的な」方法だからということもあるかもしれませんね。
娘のかかっている主治医も、最初に「行動療法はやったほうがいいですよ」と言っていました。

行動療法については、椅子に座らせて課題をやらせることも大切ですが、「行動療法的な考え方」を日々の生活に取り入れることがとても重要だと思っています。
(うちもこれから課題セッションの時間です(笑))
Posted by そらパパ at 2005年11月03日 17:53
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