2008年03月03日

「適応」という視点(5)

障害をある種の「適応状態」として見る視点と、その障害に対して働きかけることの正当性とは、両立するのでしょうか?

答えは、イエスだと私は考えています。

「適応している」というのは、「いちばんいい=ベストの状態になっている(全体最適になっている)」ということとは少し違います

適応というのは、少し理論的にいうと、「探索」を行なうことによって「最適化」を図ることだ、と言えます。言ってみれば、環境に対し試行錯誤(行動して、そのフィードバックを受け取ること)を繰り返すことによって、より生きていくために有利な行動パターンを学習・形成していく過程を「適応」といっているわけです。

適応の過程は、一種の「山登り」のようなものとしてイメージすると分かりやすいでしょう。

tekio1.gif

このイメージ図では、山の高さが「適応度」に対応しており、高い場所ほど、環境を有効に利用し生きのびるという観点からみて適切な行動パターンになっているということを示しています。

横軸は、ある環境(状況)に対するさまざまな行動パターンの広がりを擬似的に1つの次元で表したもので、簡単にいえば「左の位置と右の位置とまんなかの位置では、それぞれ、同じ環境(状況)に対して反応する行動パターンが異なっている」ということを示しています。
横軸についてもう1点重要なことは、「ある特定の行動に対応する位置から見て、近接する位置に対応する行動は似ていて、離れた位置に対応する行動は大きく異なっている」ということです。例えば、目の前にボールがあるという「状況」に対して、「親指と人差し指でつまむ」という行動を基準にすると、「(手全体で)にぎる」という行動は比較的近いですが、「投げる」という行動は(関係は残っているものの)かなり異なっていると考えられます。このような関係をこのイメージ図で表現するとすれば、「つまむ」と「にぎる」は近い場所に、「つまむ」と「投げる」は遠い位置関係にある、ということになります。これを言い換えると、イメージ図の横軸にそって、ある環境に対する行動パターンが、連続的かつゆるやかに変化していく、ということでもあります。
(横軸だけという1次元で語るのはさすがに無理がありますが、そこは単純化のためということでご理解ください。)

このように考えていくと、このイメージ図に表されたグラフを連続的になぞる、つまりこの図に示したように「山登りをする」ということは、「さまざまな行動を少しずつ変化させて試行錯誤していきながら、環境に対しより有利に生きられるような行動を見つけていく」ということを意味していることが分かると思います。
これこそが、発達的な意味における「適応」なのです。(そして、このような「試行錯誤」を、世代をまたがってより大掛かりに展開していくことが、「系統的適応」、つまり進化だと言えるでしょう。)

次回以降も、このイメージ図を使って、「適応」という過程についてさらに深く考えていきたいと思います。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 22:43| Comment(0) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
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