今回は、実際にやってみようとするとなかなか難しい、「過剰修正法」についてです。
4)-b.過剰修正法
過剰修正法とは、問題行動に対して、その問題行動によって起こった環境の悪化を「過剰に」回復させる、あるいは問題行動に対応する「正しい行動」を「過剰に」練習するような活動を「罰」として強制する働きかけです。
具体的には、例えばパニックによって部屋を散らかしたとすれば、その散らかしたものを片付けるだけでなく、さらに部屋全体の掃除をやらせるといったことを考えます。(このように、問題行動によってもたらされた環境の変化を、問題行動の前よりも良好な状態にまで修復させる方法を「原状回復法」といいます。)
あるいは、他人に汚い言葉を言ったり他傷したりした場合は1回ではなく10回繰り返して謝らせる、パニックで床に寝そべった場合は、教室に入って正しい姿勢で1分間着席するという行動を5回繰り返す、といった方法が考えられます。(このように、問題行動に対応する「正しい行動」を何度も(過剰に)練習させる方法を「積極的練習法」といいます。)
これらは、端的に言ってしまえば、嫌なことをさせて問題行動を抑制するという一般的な意味での「罰」に過ぎないのですが、問題行動と「罰」との対応関係が比較的はっきりしていることや、一般に社会的に「良いこと」とされていることをさせることになるため、罰としては比較的穏健であり、かつ「やってはいけないこと」を子どもに理解させるといった一定の効果が期待できると考えられます。
ちなみに、過剰修正法で与えている「罰」そのものは、「適切な行動」ですから、これをやらせている間は叱ってはいけません。叱ると、その行動をするのがいいことなのか悪いことなのか混乱させてしまいます。あくまでも淡々とやらせるのがポイントの1つです。
ただ、これらの働きかけは、パニック自体を抑えたり予防したりというよりは、パニックによって起こる問題行動の「迷惑度」をコントロールすることが目的となります。パニックをしても、それに付随して他人に迷惑をかける度合いが少しでも減少すれば、社会への適応という観点からは状況が改善していると考えられますから、これはこれで有効な働きかけの1つだと言っていいと思います。
(次回に続きます。)
「最初の働きかけ」については、左の「幼児期の療育総論」タブでもまとめているシリーズ記事の24~27回あたりで触れています。
要は、こちらの働きかけに対して反応が返ってくる状態をまず作る、ということですね。
反応が返ってくるようになれば、その反応をうまく誘導する、いわゆる「ABA」などの働きかけを少しずつ(たとえば、毎日15~30分程度の簡単な課題など)取り入れていくのがいいのではないでしょうか。
先は長いですから息切れしないようにマイペースで取り組んでください。これからもよろしくお願いします。
自閉症が治らない障害か、ということについてはいろいろな議論がありますが、1つ明らかなことは、「治るかどうかは別にして、少なくとも『治し方』は分かっていない」ということです。
また、子どもと親が進むべき方向を冷静に考えるためには、「治らないんだ」と覚悟を決める?ことが、実は大切なことなんだという側面もあります。
自閉症の周辺には玉石混交の情報が乱れ飛んでいます。そんな中から、信頼できるものはどれかを見極めることも、とても大切です。
何事も無理をしないこと(その代わり、継続すること)が大切だと思います。
ちなみに、娘の療育、現在はこんな感じです。
幼稚園 週4日(普通級、介助つき)
病院にてTEACCH療育 週1日、2時間
センターにて一般的な療育 週1日、2時間
養護学校の体験教室(?) 月2回、1時間
音楽の個人レッスン 月2回、1時間
自宅で妻が課題演習 毎日、15分
一番下の「課題演習」は、もう3年ほど続けていますね。内容は、ごく簡単なABAです。時間は短いですが、私は、どの療育よりも、これが一番大きな成果を上げていると思っています。(妻に感謝ですね。)
自宅での継続的な療育と、定期的な外部での療育をうまく組み合わせるのがいいと思います。
外部での療育は、集団生活に慣れたり、外に出かけるのに慣れたり、親と離れて活動することになれたりといった副次的効果も期待できますので。
フォーマルトレーニングは、「ぜんぜん無理だ!」という間は無理にやらずに、感覚統合的なからだ遊びをしているほうがいいと思います。でも「まだちょっと無理かな?」くらいになったら、始めてもいいでしょう。
最初にやる課題としては、「マッチングカード」はおすすめです。我が家も、少しカードは違うのですが、ここからはじめましたので。
お子さんの状態にもよりますが、いきなりいすに座らせてマッチングカード、は難しいと思います。
最初は、子どもが落ち着いているときに(別にいすに座っていなくていい)、ただ単にカードを渡して、それを箱に入れる動作を全部手助け(プロンプト)して、すぐさまごほうびを与える、ただそれだけを練習して、子どもが自分でカードを手にとって箱に入れるという動作ができるようになるまで毎日少しずつ繰り返します。それができるようになって初めて、2種類のマッチングに進んでいけばいいと思います。