2007年06月04日

自閉症-「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育(著者による紹介)(2)

今回は内容について、少し触れたいと思います。

  自閉症-「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育


※Amazonが品切れ気味なので、他のリンクも紹介します。

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自閉症-「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育
著:そらパパ・神谷 栄治
新曜社
2007年5月29日発行

第1章 自閉症はどう理解されてきたか
第2章 認知科学の新たな流れ-ギブソン理論とコネクショニズム
第3章 従来の自閉症モデルの問題点
第4章 新しい自閉症のモデル
第5章 具体的な療育の取り組みについて

本書は、当ブログでシリーズ記事「一般化障害仮説」を公開したことをきっかけに書籍化されたものです。
ですので、内容の一部はこのシリーズ記事やその他の記事と重なっていますが、もちろん単なるブログの転載本ではなく、基本的にはゼロから書き下ろしており、当ブログでは触れていない内容も多く含まれています

その「違い」の1つが、第2章で、「一般化障害仮説」をより深く理解するための認知科学とその歴史について、ひととおり説明を加えている点です。
何度か書いているとおり、本書での自閉症理解のベースになっているのは、認知科学(認知心理学)におけるコネクショニズムという考え方とギブソンの生態学的知覚心理学(アフォーダンス論)ですが、さらにこれらの理論を重視する背景になっているのが、「複雑系の科学」と呼ばれる、科学の新しいアプローチです。

そして第3章では、認知科学における人工知能研究が経験した「挫折と復興」の歴史と、現在の認知心理学的な自閉症研究が直面しつつある「挫折」の歴史が非常に似ていることを指摘します。
だとすれば、人工知能研究で成し遂げられた「復興」の道すじをたどれば、自閉症の認知心理学的研究も「復興」させることができるはずだ、という論理から、新しい世代の人工知能研究がもつアプローチで自閉症を探求することを提案しています。

その具体的な自閉症の「理解」が、本書のメインである第4章です。
第4章は、「一般化障害仮説」のシリーズ記事がベースになっていますが、神谷先生のアドバイスをもとに用語や概念を改めて整理し、論旨をすっきりとさせたうえで、ボリュームを大幅に増やしています。(この章だけで80ページ以上になりました。)

そのうえで、その「理解」に基づく「療育への応用」について触れたのが、第5章ということになります。
第5章の記事は、シリーズ記事「幼児期の療育を考える」の、第24回から第38回までの記事がベースとなっていますが、こちらも、第4章で詳しく解説した自閉症のモデルをベースに、なぜそのような療育が有効なのかといった解説を加え、再構成してあります。また、「家庭で実践できるABA」の解説部分については、ブログでのシリーズ記事よりも項目数を増やしています。
(この第5章では、ちょっとしたお遊び的要素として、療育の実践例の1つに娘の写った写真を使ってみました。(^^))

本書の最後には、関連する書籍について、自閉症論に限らず、かなり広いジャンルの読書案内(簡単な内容紹介つき)を合計約10ページ、掲載しました。

全体のボリュームとしては、単行本サイズで約240ページになります。イラストが少なく字が多い(妻からは文句を言われましたが・・・)ため、文字の分量としては原稿用紙換算350枚程度あります。
一点ご了承いただきたいのは、本書は当ブログのコンテンツを幅広く収録したものではなく、「一般化障害仮説」を中心に据えたものであり、TEACCHやABA、PECSといった個々の療育の具体的なテクニックなどについては、家庭での療育という観点からまとめた比較的シンプルな内容になっている、ということです。

なお、本書の内容についてご質問などありましたら、このエントリへのコメント等でもお受けいたします。すべてに十分なご回答ができるかどうかはお約束できませんが、できる限りお答えしたいと思います。

自閉症に関連するブックレビューはこちら
posted by そらパパ at 22:00| Comment(10) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そらパパ様
ご出版おめでとうございます。
わたしはbk1で頼みましたが、一昨日注文して今日届きました。ワクワクしながら早速読んでいます。
Posted by あやぱぱ at 2007年06月05日 19:01
あやぱぱさん、こんにちは。

うまく注文すると買えるネット書店もあるようですね。
(書店で見かけて買いました、というお話もいただいています。)

もし機会がありましたら、感想などいただけると嬉しいです。
Posted by そらパパ at 2007年06月05日 23:16
頭から1度読み、第4章から5章を読み直し、2回目へと思います。
とてもよかったです。
「具体的な療育」で結ばれていて、既存の有効とされている療育に矛盾しない(というか、根拠を与える)仮説ですね。
今まで以上に自信を持って、それらの方法を使っていけるというか、あらためてシッカリ身に付けていきたいと思わされましたよ。
「私の本棚」でも、また知り合いにも、紹介しておきますね。
Posted by 初代 at 2007年06月07日 07:25
初代さん、

感想コメントありがとうございます!

既存の療育との整合性については、実は仮説を立てていくときにはまったく考慮していなかったんです。
ところが、最終的に出た結論はTEACCHやABAと非常に親和性が高かったので、私自身も驚きました。

自閉症の療育について、どの方向が正しいのかについて、私なりに結論を出せた内容になっていると考えています。
Posted by そらパパ at 2007年06月07日 23:38
そらパパさん、初めまして。りんごのたねと申します.日頃,ブログでは勉強させていただいています.療育の仕事をしています.今日18日,私の住む県で,県下の障害関係施設の新規職員の研修会がありました.私、研修の枠をひとつ受け持たされたので,話をしてきました.参加者110人.テーマはTEACCHと応用行動分析。専門家ではないけれど,療育支援をする立場の人間は一度は勉強しておくべきだよ,みたいな話をしました.で,その話の中でそらパパさんのブログと本の紹介をし,ぜひ読んでみると良いよ,と話しました.私自身,そらパパさんの発言が勉強にも刺激にもなっている,と率直に話したつもり.終わったあとで,「ブログ、見に行きます」と言っていた若い人もいました.というわけで、お邪魔して,発言もされる人がいるかも知れません.よろしくお願いいたします.
Posted by りんごのたね at 2007年06月18日 22:42
りんごのたね さん、はじめまして。

そんな風に紹介いただいたというお話を聞いて、恐縮しています。
もちろん、多くの方にこのブログにおこしいただいて、活発な議論をするのはとても嬉しいことです。

これからもよろしくお願いします。
Posted by そらパパ at 2007年06月19日 22:37
こんにちは。
とてもよかったです。

特に第2章の内容は新鮮でした。
難しい内容にもかかわらず、大変分かりやすく、一気に読めました。

一般化障害化仮説をブログのほうで読ませていただいた時にも思ったのですが、抽出処理能力と一般化処理能力のアンバランスは、定型発達の子どもにも一時的に起きるんでしょうか?

二歳くらいの時って、こだわりは強いし、場面の切り替えは出来ないし、言葉は話すけど意味が分かってなくて丸暗記だったり、実際うちの長女は10分くらいあるアニメのせりふを全部覚えちゃって、ひとりで話していたり、となんだか自閉症みたいだなあと思いまして。
3歳くらいで急激に物分りが良くなったんですよね。

抽出処理能力がある時期急激に伸びて、一般化処理能力が後から追いつくとしたら、なんだか納得!と思ったんですけど。
Posted by みけ at 2007年06月21日 11:00
みけさん、

コメントありがとうございます。

第2章と3章はほとんど書き下ろしで、特に第2章は自閉症とは全然関係なさそうな内容になっている(実際は関係大ありなのですが)ので、出版前は少し心配だったのですが、実際にはこのあたりを興味深く読んでいただけるケースが多いようで、とても嬉しく思っています。

健常の子どもでも、自閉症の子どものような状態を「一時的な過程」として通過するということはよく指摘されることですね。
ですから、一時的には、健常の子どもであっても抽出(抽象化)と一般化のバランスが崩れることはありえると思います。
(それに、一般化のほうが抽出よりも高度な処理だと考えられますしね。)

これはなかなか面白い視点だと思います。
ありがとうございました!
Posted by そらパパ at 2007年06月21日 23:13
こんばんは。
初めてのコメントです。
中学校の特学担当者で、現在長期研修中のものです。
今日、県内のある療育施設へ見学に行きました。多目的広場の柱に比較的大きな鏡が1枚。「これはもしや、鏡の療育では。」「みんな勉強してるんだなあ。」となんだか不思議とうれしくなりました。

話は変わりますが、本読みました。
あっという間に読めてしまいました。
研修中の身としてはいろいろな本を読み漁っているのですが、ぴか一で読みやすかったです。(心に残りました。難しい本は活字を目で追っただけというのが正しいぐらいなので・・・)
何度か読み返そうと思っています。
ギブソン理論とコネクショニズムはもっと勉強してみたいと思いました。

今後もそらパパさんのブログで刺激を受けたいと思っています。よろしくお願いします。
Posted by kotetsu at 2007年06月26日 21:28
kotetsuさん、はじめまして。

拙著をお読みいただき、ありがとうございます。
今回の本は、「自閉症」という謎に対して、私たちの手元にある手がかりを使って、整合性があってちゃんと始まりと終わりがつながっている「物語」を書き上げてみたい、という気持ちから生まれたものです。
そういった「思い」が、少しでも伝わったら嬉しく思います。

ちなみに・・・療育施設にあったという鏡ですが、さすがに私が提案している「鏡の療育」とは直接関係ないのではないかと思います。(笑)
鏡を子どもに見せることは、赤ちゃんのおもちゃにもそういったものがあるように、いろいろな場面で活用されている働きかけだと思います。
私の提案する「鏡の療育」は、その働きかけについて、「自閉症療育」という具体的な視点から、今まで以上に明確な意味づけを行なったものにすぎないと思っています。

これからもよろしくお願いします。
Posted by そらパパ at 2007年06月26日 23:24
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