2014年09月29日

障害者いじめの一つの「形」-「聲の形」から(19)

さて、弱者への福祉制度について、「段階的認定制度」の問題を解決するために「段階のない連続的な認定制度」を導入するというアイデアは、必ずしもうまくいかない、ということについて書いています。


こちらが、「現状」に近い、段階的認定制度のモデルです。


いっぽう、こちらは、いま検討している、段階のない連続的支援制度の新しいモデルです。

前回は「マイナスのインセンティブ」について話しましたが、あともう1つ残っている問題として「実務的な意味での認定の難しさ」というものがあります。

これは、そもそもなぜ現状の制度が連続的ではなく段階的な認定制度になっているのか、ということともつながっていますが、弱者の「困窮度」がどの程度か=その程度の福祉制度からのサポートがなければ生活に困窮するのか、というのは様々な要素によって複合的に決まるものであって、しかもそれらの「要素」は必ずしも外から測定できるもの、あるいは測定した結果として一義的に「値」が決まるといったものではない、ということがあるわけです。

例えば、知的障害を伴う自閉症の人がいたとして、「知的障害の重さ」を「連続的」にとらえ、さらに「自閉度」を「連続的」にとらえ、その組み合わせによって「困窮度」をとらえる、というモデルは、理論的には想定できるかもしれませんが実務的な運用は非常に困難だと思われます。
また、そうやってできあがった困窮度算出の連続モデルと、別の障害、例えば身体障害、視覚障害、聴覚障害などにそれぞれ算出される「困窮度連続モデル」の間に、「同じ値が出たら同じ困窮度である」という整合性が保てるでしょうか
現実的には、ほとんど不可能だと思います。
それは、りんごとみかんを比べて「どちらがおいしいか」と聞いているようなものです。

それに対して、「段階的認定制度」は相対的に安定しており、実務的に運用も容易だといえます。
たとえば「常時全介助が必要」というのを「重度」、「生活の30%以上で介助が必要で、完全な自立生活は困難」というのを「中度」、「一定のサポートは必要だが、そのサポートがあれば自立生活をおくることができる」というのを「軽度」といったように、まず段階ごとの「支援像」を設定し、そこにフィットするように「認定基準」を作っていくことが可能です。
このようなアプローチであれば、知的障害と身体障害をそれぞれ別の認定基準で、でも同じ「重度・中度・軽度」という段階の枠組みで共通運用していくことも十分に実用的です。
また、知的障害や自閉症などは特に、「発達」の要素も加わり、同じことができていても年齢が上がるにつれて逆に障害の程度としては「重い」という風にみなす必要があったりしますが、これも、「その年齢の健常者を基準として、その子に必要な『支援像』はどの認定段階だといえるか」といった考え方をすることで、「子ども向けの認定基準」を別途作ることもそれほど難しくないはずです。

そして現に、我々の社会ではそのような形で、「段階的認定制度」が構築され、運用されているわけです。

そう考えていくと、この一見よさそうに見えた「連続的な認定制度」というのは、現状を改革する有効な福祉制度改革にはなりえない、ということが分かってきます。

でも、繰り返しになりますが、「いまの制度」がパーフェクトなわけではありません。
ずっと述べているとおり、「マイナスのインセンティブ」の問題は現行制度でも存在しています。

それに加えて、「認定制度」に基づいた支援システムにあるもう1つの問題として、「認定制度」がなければ発動しないシステムである、という点を指摘したいと思います。
当たり前のことを書いているように見えますが、実はこれは実は本質的かつ構造的で深刻な問題です。

(次回に続きます。)

※既にまんがの内容とは別のポイントでの議論になっていますが、いちおうまんがのリンクも貼っておきます。10月17日に第6巻が発売予定です。


聲の形 第1巻・第2巻・第3巻・第4巻・第5巻・第6巻
大今良時
講談社 少年マガジンKC
posted by そらパパ at 22:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | 更新情報をチェックする
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