2014年09月22日

障害者いじめの一つの「形」-「聲の形」から(18)

さて、福祉による支援を「段階的認定制度」から「段階のない、連続的支援制度」に切り替えるというアイデアには、2つの構造的な問題があると考えられます。


段階的認定制度のモデル。


段階のない連続的支援制度のモデル。

1つはマイナスのインセンティブの問題、もう1つは実務的な認定システムの難しさの問題です。

1つめのマイナスのインセンティブについて。

このシステムでは、困窮度が高ければ高いほど(グラフでいう左の位置に行けばいくほど)福祉制度から提供される支援の量が大きくなります。
福祉サポートを受ける人は誰でも、「できるだけ多くの支援を受けたい」と思うものです。ですから、「より多くの支援が受けられるように行動する」という動機付け(インセンティブ)が働くことになります。
したがって、このシステムの下では、「より多くの支援が受けられるように」、誰もが「より困窮度が高いと認定されるように」行動することになります。

具体的には、

1)困窮度の認定を受ける際に、意図的もしくいは無意識のうちに、「できるだけ実態以上に困窮しているように」認定者にアピールするようになる。

2)困窮度を改善するような努力をあえてせず、「弱者のまま」であり続けようとするようになる。


この制度の場合、特に2)の問題が深刻です

福祉制度を利用する「弱者」のグループに入った場合、そのグループ内では、どのポジションにいても最終的な利得は同じでまったく変わらなくなってしまうからです。
言ってみれば、このゾーンだけ社会主義になってしまうようなものですね。
このゾーン内では、努力してもしなくても結果が同じになってしまうことから、努力するインセンティブ(動機)がなくなってしまうわけです。

これが「段階的認定制度」の場合、少なくとも同じ段階内では、努力によって得られるものが増える(グラフが右上がりになっている)ため、「同じ認定の範囲内で努力をする」というインセンティブの構造は保たれているので、「努力」が否定されません。

この点において、「連続的に認定する福祉制度」は「段階的に認定する福祉制度」よりもむしろ劣っている側面さえあるわけです。

もちろん、だからといって「段階的認定制度」が優れていると言いたいわけではありません。
すでに説明した通り、段階的認定制度もまた「困窮度が高いと認定されるほど多くの支援が得られる」というマイナスのインセンティブは同様に存在するので、「できるだけ困窮度が高いと認定されるようにしよう」とか「認定ランクが上がってしまわないように努力をやめよう」といったことは同じように起こる、ということは既に書いたとおりです。

(次回に続きます。)

※既にまんがの内容とは別のポイントでの議論になっていますが、いちおうまんがのリンクも貼っておきます。10月17日に第6巻が発売予定です。


聲の形 第1巻・第2巻・第3巻・第4巻・第5巻・第6巻
大今良時
講談社 少年マガジンKC
posted by そらパパ at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | 更新情報をチェックする
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