これは、段階を決めてその段階のどこにあたるかを認定するというやり方をやめて、障害の程度に応じて連続的に支援レベルを変える(重い人ほど手厚いサポート、軽い人ほど少ないサポート、一定基準以上の人にはサポートなし)、というモデルを導入したらいいのではないか、という考え方です。
このやり方を「理想的に」実施できると、支援を受ける人たちの、「支援後」の生活困窮レベルは、すべての人が同じレベルにまで改善されます。
その「理想状態」を、これまでのグラフを使ってモデル化して図示すると、次のようになります。

このモデルを見るとわかる通り、この制度が導入された社会では、ある「支援によって達成されるべき生活水準」が設定され、そこに届かない「弱者」のゾーンの方には、「達成されるべき生活水準-その人が支援なしで得られる生活水準」の差分に相当する「支援」が提供されることによって、あらゆる弱者が同じ生活水準にはまで引き上げられることになります。
これを見ると、一見、これは非常によくできた制度のように見えます。
憲法第25条に定められているような意味での「最低限の生活水準」を基準として、サポートなしに生きていく場合、生活に困難が生じて「その最低水準」に到達しない人に対して、ちょうど「足りない分」を福祉システムから補助することで、あらゆる弱者(福祉支援がなければ困窮する人)が最適な支援を受け、最低限の生活水準を保証されている、そういうモデルのように見えます。
でも、ここで描かれている素晴らしい環境は、残念ながら、おそらく「机上の空論」でしかない、と考えられます。
なぜなら、実際の運用にあたっては、このモデルには2つのかなり致命的な問題があるからです。
1つは、ネガティブなインセンティブの問題。
もう1つはアナログな認定制度の難しさの問題です。
「ネガティブなインセンティブ」とは、「弱者であるほど多くの支援をもらえる」という「インセンティブの構造的問題」のことであり、「アナログな認定制度の難しさ」とは、弱者の困窮度を正確に測定するということに対する「制度上の構造的問題」のことを指します。
どちらも、この制度自体が抱えてしまう「構造上の」問題であり、簡単には解決ができません。
次回はこの2つの問題について考えてみたいと思います。