既に何度か出ていますが、こちらが、そういう私的制裁を生むような社会の福祉構造の認知モデルです。「認知モデル」と呼んでいるのは、このグラフが実際(を反映させたモデル)ではなく、「そう思われている」というものであって、「実際」のものよりも弱者が「多くもらっている」という誤解を含んだグラフになっていることを示しています。
水色の実線がその「誤って認知された」利得のグラフです。
これを見ると分かるとおり、この「誤った認知」のベースでは、弱者は「もらいすぎ」です。(繰り返しますが、本当はそうではないのですが、そう誤って認知されている、というグラフです)
しかもこの「もらいすぎ」は、社会によって保障されているので、社会の側からは「是正」されることはありません。
こういったとき、「社会によって正義が実現されないのであれば、われわれが自分たちで実現する」ということで、不公正を正すために特定の人間や集団に対してペナルティを与えるのが、「私的制裁=リンチ」ということになるわけです。
次に示すグラフが、先ほどのグラフに「私的制裁」を加えたものになります。
水色実線が、「社会によって与えられている(と誤認された)利得」のグラフですが、これが「多すぎる」と考える人達は、私的制裁によってさまざまな形で利得を奪うことによって、その水色の実線をオレンジの実線の位置まで「引き下げる」ようなペナルティを与えます。
つまり、紫色の矢印のような方向に、水色実線→オレンジ色実線の位置まで「利得を減らす」働きこそが、「私的制裁」ということになるわけです。
ここで、オレンジの線の左側のほうはフラットになっていますが、このフラットになっている位置は、その私的制裁を与える集団が考える「必要最低限の生活レベル」ということになるでしょう。
この、水色実線からオレンジ色実線にまで「引き下げる」のに必要な私的制裁のマイナス量は、グラフの下のほうの赤色の細い実線で示されています。
茶色の太い実線が「社会の側から与えられるサポートの量」ですから、私的制裁は、ほぼ、この社会からのサポートを無に帰すようなレベルでペナルティを課す形になっていることが分かります。
これが、今回のシリーズ記事で書きたかった「社会的サポートがあることによって逆説的に発生するいじめ(=私的制裁)」のモデル、ということになります。
ここで、以前も一度引用しましたが、改めて、まんが「聲の形」で出てきた、このような私的制裁を髣髴とさせる場面を引用しておきたいと思います。
(次回に続きます。)