2014年06月09日

1週間主夫をやってみて(あるいは、エコサイクル家事のススメ)(6)

今回、妻の次女の出産にあたって、まるまる1週間家事一切を担当して、かつ、長女の世話や介助もやるという生活を経験することになりました。

この経験から、「家事」というものに対する見方がこれまでと大きく変わったこと(家事の本質は、掃除・洗濯といった個々の作業ではなく、家庭のもつ機能を発揮させつつ復元することにあると気づきました)に加えて、毎日家事ばかりやっていて子どもくらいしか接する相手がいない生活を続けていると、つい愚痴の1つも言いたくなるし、その愚痴を聞いてもらうということが、たまったストレスを解消できるとても大切なコミュニケーションの機会だ(翌日への活力源だ)、ということについても、心から実感しました。

この2つの「気づき」、どちらもこれからの人生にとってとても価値のあるものだと思っています。

ところでさらに、この2つに加えて、もう1つ、これも頭では分かっていましたが実際に経験することで心から実感できたことがありました。

それは、

「子どもの世話に一義的に責任を持たなきゃいけない」という「役割」と、「会社で責任のある仕事を任される」という「役割」の相性の悪さです。

私はふだんから仕事で、プロジェクトの管理をやったり複雑な業務の交通整理をして期日までに目的を達成したり、あるいはそういった事項を上司や役員や会社の各種決裁機関にあげて決裁をとったりといった業務をやっていますが、私がこういった仕事で最優先で考えていることが、「不測の事態への依存関係を極力排除する」こと、言い換えると、先が読めないことや確実性のないことをできるだけ排除して、「確実に読めること」の積み上げで業務を組み立てて、それを着実に遂行することです。

不確実なことがたくさんあって、それらがすべて期待通りに転がってうまくいかない限り失敗する、というのは、その状況を管理している人間にとって非常にストレスのかかる状況です。かつ、実際には「不確実なこと」はかなりの確率で期待通りに転ばないので、実際問題として失敗する確率が高くなります。

「子育てに関するもろもろのことに一義的な責任を負う」という役割をうけもつことは、自身の仕事、キャリアに対して、まさにこの厳しい状況のなかに身を置くことに他なりません。

今回、出産に伴う入院は1週間程度でも、産後の状況によっては1か月くらい仕事に影響が出るレベルで子育てに関わらなければならないかも、ということで、その場合にやらなければならないことを具体的に確認してみました。
そして、そのときに端的に思ったことは「あ、これ無理ゲーだな」ということでした。

・「○○時に必ず××に行かないといけない」といったしばりが多数生まれ、急な会議が夕方に入ったり急に上司から仕事が降りてくるような「よくある」業務環境とまったく相容れない

・さらに対照的に、子どもの病気やアクシデントで突発的に呼ばれたりして会社にいけない、早く帰らなければならないケースが一定頻度で発生するため、「定例で入っている仕事」にさえ影響がときどき出てしまう。

・そういった不測の状況のなかで、締め切りが決まっていて他の人の作業を受けて自分の仕事をして、さらにその結果が次の人の作業につながる、といった仕事を担当すると、必ず周囲に迷惑をかけてしまう。


・・・いや、これはほんとに無理ゲーだ。
プロジェクト管理でいえば、まっさきに排除したくなるような不確実性の塊みたいなものですよ。

これも、自分がほんとに抜きさしならないレベルで役割をもつことになるまでは「理解のある職場なら十分やっていけるだろう」くらいの感覚でしたが、実際に自分がその立場になると、「周囲の理解がある・ない」というよりむしろ、「自分自身が納得できるレベルで仕事ができない」という感覚になることもわかりました。

幸い、妻は元気に退院し、妻の退院後の私の「役割」の主なものは、朝の娘のスクールバスの「送り」を1か月やることだけですみましたが、もしこれをずっとやる、という「子育て兼業主婦」の立場になったと考えると…

まず、出世(昇進)を必ずしも希望しなくなる(できなくなる)でしょう。

昇進すると、より仕事の側に「不確実性」が高まり、また打合せする相手も部長や役員になり、相手の都合に会わせなければならない度合いが高まっていきます。
そうすると、「子育てと両立しながら納得できる仕事を失敗せずにやる」ことのリスクがどんどん高まっていきます。
そのリスクは、端的に言えば失敗したら失職してしまうかもしれないというリスクな訳です。
そういう失職リスクを高めてしまうくらいなら、昇進を避けて現状の仕事を着実に継続することを好むようになる、これは間違いのないところだと思います。

同じ意味で、非定型的な難易度の高い業務に挑戦することも、(子育てとバッティングして失敗するリスクが高いがゆえに)避けようとする傾向は高まるでしょう。

そう考えて、気がついたわけです。
これもまた、性別とか「母性」とかではなく、「立場と役割」が規定している行動パターンなのだ、と。

私はなんだかんだ言っても男なので、やはりどうしても「子育てしてる女性って、男と違って…だよな」みたいな感じでレッテルを貼って、例えば「思ったより熱心に働いてくれない」といった行動を頭の中で説明してしまいがちですが、何のことはない、ちょっと自分がそれに近い立場になっただけで、その行動が「立場と役割(と責任)」をふまえれば最も合理的な行動なんだと気づかされたわけです。

避けがたく自分の中にある偏見、先入観、そういったものに気づかされたことも、今回の1週間の経験からのとても大きな収穫でした。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々の話 | 更新情報をチェックする
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