2014年03月24日

自閉症という謎に迫る 研究最前線報告(ブックレビュー)

情報収集のためにサブテキスト的に読むのなら、アリ。


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自閉症という謎に迫る 研究最前線報告
金沢大学 子どものこころの発達研究センター
小学館新書

はじめに
自閉症をめぐる五つの謎
第1章 自閉症は治るか―精神医学からのアプローチ
第2章 遺伝子から見た自閉症―分子遺伝学からのアプローチ
第3章 自閉症の多様性を「測る」―脳科学からのアプローチ
第4章 自閉症を取り巻く文化的側面―心理学からのアプローチ
第5章 社会的なものとしての自閉症―社会学からのアプローチ
執筆者紹介


タイトルにあるとおり、本書は自閉症をめぐるさまざまな研究について、それぞれの分野の専門家が研究の現状を整理し、それを一般向けにかみくだいてまとめた文章をまとめた本になっています。

新書という限られたボリュームで、さらに複数著者がさまざまなトピックについて触れた文章を集めているわけですから、1つ1つのトピックについては「ちょっと充実したパンフレット・雑誌記事」程度のボリュームしかなく、また文章のテイストが統一されていないため、かなり散漫な印象を受けます。
(特別支援教育などの専門雑誌の特集記事のような感じですね。)

いちおう、序章で全体を概括するために、「自閉症の5つの謎」というのが列挙されます。

・自閉症は個性か障害か?
・社会性の障害とこだわりがなぜ同時に出現するのか?
・なぜ自閉症は増えているのか?
・原因は遺伝なのか環境なのか?
・自閉症は治すべきものなのか?


…うーん。
そもそも「謎」の設定からして違和感がありますねえ。
第5の謎とか、あまりに哲学的すぎて「謎」というよりは「倫理的な問題設定」に過ぎないと思いますし、普通にみんなが悩む「どうすれば状況を改善できるのか」みたいなものが「謎」に含まれていないし…

ともあれ、その後が全5章構成になっていることもあり、第1章から順にそれぞれの謎が解明されていくのか、と思って読み始めてみると、いきなり第1章は「自閉症は治るか」と、ぶっちゃけどの謎とも直接関係がない(5つめの謎は倫理的な問題提起なので)話題に突入し、続く第2章は「遺伝子から見た自閉症」…って、もう「第4の謎」に飛んじゃってるじゃないですか!
そして第3章と第4章は「自閉症って多様で複雑」という、またもやどの謎とも直接関係のない章、第5章では自閉症を社会のなかに位置づけることで自閉症の増加を説明しようとする章(つまり「第3の謎」に関する章)、で…

あれ、もう終わってしまった。
序章の5つの謎はなんだったんでしょうか。全然あとの章と有機的につながってないといわざるを得ません。

そして、各章の中身をみても、ほとんどのトピックの大まかな流れが「○○について、従来はこんな風に理解されてきました→それに対して、最近は新たにこんな可能性やこんな仮説が出てきました→その新説についていろいろ検討されてますが、現時点でははっきりしたことは言えません」みたいな感じになっています。
まあ、それはそれで「研究の最前線」ではごく普通にあることで、リアルといえばリアルと言える(とはいえ、実際にはそんなに「最」前線、という感じでもない)のですが、この本を読んで、日々の療育なり、場合によっては「治すこと」にすぐに役に立てたい、といった期待をもって本書を読むと、裏切られることになると思います。

その端的なトピックの1つが、「オキシトシン」という化学物質についてでしょう。
オキシトシンについては、「自閉症の治療薬になるのではないか」といった形で新聞などのニュースでも大きくとりあげられ、ここ1~2年くらい、自閉症スペクトラムの当事者や家族、支援者の間でも注目の的となっています。

現在も、オキシトシンについては、これを使った社会性改善の実験の結果などが散発的にニュース等で出てくることがありますが、特にそれ以上の盛り上がりもなく、結果的にはこれまでもさまざま登場しては消えていった「自閉症の治療薬」の有象無象の1つとしてこれも消えていくのかな、といった雰囲気が漂ってきています。

本書ではこのオキシトシンについてもほぼ1章を使って解説されていますが、実際に読んでみると、要は「いろいろ散発的に興味深いレポートが出てきているもののその結果は一様でなく、またオキシトシンの効果も単に信頼度や社会性があがるといった単純なものではないこともわかって来ており、また効果の永続性が見られているわけでもない」みたいな結論で、要は「結局よくわからない」といったレベルにとどまっていることがわかります。

これを読んで、自閉症にかかわる(研究の専門家でない)当事者や関係者は、何を読み解けばいいのでしょうか?

それはおそらく「支援に近道なし、従来から定評のある支援こそが王道だ」ということについて確信を深める、ということなのかもしれません。
ニュースなどではよく、自閉症が治る特効薬やすごい治療法が登場した、といったものが定期的に流れてきます。
こういったものに触れると、日々支援・療育に苦労している私たちは、ついそちらに「近道」があるのではないかと期待してしまいます。

でもその期待は非常に高い確率で裏切られ、「実はやっぱり思ったような効果がありませんでした」という結果に終わることがほとんどです。

ただ、だからといって「これまでのやり方」だけにこだわっていてはいけない、それも事実です。
「これまでのやり方」という王道を着実に歩んで目の前の支援を着実に重ねていくのと同時に、一部の(でも大きくない)リソースを常に「新しい情報・新しいやり方」にアンテナを張って、よさそうなものについては試してみるというところに投入し続けることもとても大切なことだと思います。

そういった視点でこの本を眺めると、初めてその意義が見えてくると思います。
つまり、「自閉症をとりまく新しい研究の流れを、効率的に情報収集する(それがたとえ結果として日々の具体的な支援に役に立たなくても、自分をアップデートすること自体に価値がある)」ということなのだ、と思います。

「すぐに役立つ」ことを求めると、期待を裏切られると思いますが、「手早く情報収集する」という目的にはとてもよくできた本だと思います。
本書の「最新」が、陳腐化して最新じゃなくなる前に、軽く読んでおいてもいいのではないでしょうか。

※他のブックレビューはこちら
posted by そらパパ at 21:15| Comment(4) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最近はもっぱら論文検索サイトを利用しているのですが、古かったり内容も研究者の考えを主張しすぎている傾向があり、参考にはなるかもしれないけど、支援にはあまり使えないかな?と思うものばかりで。 殿堂入りはしていないものの、興味はあるので購入してみたいと思います。ありがとうごさいました。
Posted by rin5papa at 2014年04月23日 02:47
rin5papaさん、

コメントありがとうございます。

まあ、私は専門家ではないので、「最新」といってもこの本で出ているような内容を「最新」に近いと認識している、ということに過ぎませんが…

ともあれ、組織だった知識というよりはさまざまな研究の方向性をざっと眺める、といった目的にあった本だとは思います。

Posted by そらパパ at 2014年04月30日 22:24
自分はもう自閉症研究に興味を失いました。
自閉症ってゆうのは詰まるところ地頭が良くない人が
どうしても東大行きたいと思い込んで苦しんでる状態だと。それで塾が3つあってそれぞれ看板掲げてるんだと。

1絵カードで地頭良くして東大へ。
2コツコツ反復学習で東大へ。
3東大行かなくても人生は大丈夫。

まあ、1はうさんくさ過ぎるし、2は限界あるし、結局3に落ち着くしかないって話でよね。
思うのは、1をまじめに研究してる人は何ともご苦労なことだなと。
Posted by かめ at 2014年06月15日 08:26
かめさん、

コメントありがとうございます。

まあ、確かに「自閉症研究」が目の前の子育て、療育にすぐ役立つということはほとんど考えられません。
ですので、「興味を持たずに淡々と子育てする」というのは1つの見識だと思います。

あとは、もうある意味「好奇心」でしかないでしょうね…。
一応、私はまだ「好奇心」は(少なくはなりましたが)ゼロではないので、ときどきこういったものを読むことは意味があるのかな、と感じて読んでいます。
Posted by そらパパ at 2014年06月23日 21:33
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