でも実際には、我が家では、「イントラバーバルを教える」ということに限定していえば、比較的スムーズに娘に身につけてもらうことができたのです。
というのも、娘は、ことばを覚えたてのころから、なぜかイントラバーバルとして通じる魔法のことばがあったのです。
それが、
「なに?」
という質問でした。
娘は、私たちが語りかける「なに?」ということばに対して、その場の状況に応じて、欲しいもの、やって欲しいこと、気になっていることなどの「マンド的発話」を返す、ということがかなり小さいころからできていたのです。
もともと、絵本などを指さして名前を(親に)言わせる、という遊びから「ことば」の世界に入ってきた娘は、逆の遊び(私たちが絵本を指さして娘が名前を言う)のときに、「なに?」と問いかけながら指をさす、といったことを続けた結果、「なに?」という問いかけにイントラバーバルで答える、ということが偶然できるようになっていったわけです。
でも、特に自閉症の子どもにとって、「ある瞬間にできている」ことは、「その後もずっとできる」ことを必ずしも意味しません。
これは、娘を育てていて日ごろから実感していることでもありますし、また同時に、私自身がもっている自閉症に対する仮説からも導かれることだったりします。(たとえば、俗にいう「折れ線現象」のように、一度できていたことができなくなる傾向とも関連しています。そして、こういう「学習の困難」がある意味、自閉症の「本質」なのではないか、というのが、私が以前1冊めの拙著で書かせていただいた「一般化障害仮説」というものになります。)
自閉症―「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育
新曜社
※拙著です。
そういった「自閉症がゆえの学習の定着の困難」をふまえ、我が家でことばの療育をするときに、強く意識していたことについて触れておきたいと思います。
それは、
「コミュニケーションのキモになるような超重要な反応に対しては、可能な限り100%強化する」
ということでした。
例えば、私たちの「なに?」という質問に対して、欲しいものを返答する、というイントラバーバル的反応は、当時の娘の言語行動のなかでは、最も高度で最も有意義な「最重要反応」だと言えました。
だから、この反応が出た場合には、それに対して、何より「強化する」ことを最優先にしました。
仮に、「なに?」という質問に対して要求されたものが、普段なら欲しがっても与えないようなもの(おやつの時間以外のおやつなど)であったとしても、この反応で要求されたときに限っては、可能な限り与えるようにしたわけです。
これによって、「なに?」という質問に欲しいものを答えると「必ず」その欲しいものが手に入る、という分かりやすい強化の随伴性を設定し、刺激と反応の関係がノイズに埋もれないようにして学習を定着させていこうと考えたわけです。
そして、その「最重要反応」が完全に定着して、日常の生活で普通に使えるようになったら、それ以降はそういう「特別扱い」はやめます。
そういうことを繰り返して、娘が獲得しつつある、本当に重要な(厳選された)反応に対しては、徹底的に強化することで、コミュニケーションの「土台」を少しずつ作っていったわけです。
さて、ちょっと話が遠回りしましたが、娘の場合、イントラバーバル系の言語行動のほぼ唯一にして最強の武器である、この「なに?」を使うことで、「しない」というイントラバーバル的反応を引き出す突破口にしました。
(次回に続きます。)
無事作成できました。またわからないことがあった時にはよろしくお願いします!
コメントありがとうございます。
絵カードテンプレート使えたということで、よかったです。
これからもよろしくお願いします!