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http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070323/detail.html
プレスリリース 独立行政法人 理化学研究所
自閉症に関連する遺伝子異常を発見
- 自閉症の病因解明や早期診断に向けた新知見 -
平成19年3月23日
三歳までに発病する精神疾患のひとつである「自閉症」は、“対人関係”や“言語等によるコミュニケーション” 、“活動や興味の範囲が狭くなり、常に同じ行動を繰り返す”といった障害を持ちます。
人口千人当たり一人以上の割合で発症する珍しくない病気ですが、その発症メカニズムはまだ分かっていません。最近では、脳の発達障害によるものと考えられており、遺伝的な要因が関与する疾患と予想されています。この病気は、改善はあっても完治しないため、家族への負担が大きく、社会的に深刻な問題となっています。
理研脳科学総合研究センターの分子神経形成研究チームは、マウスを使って、神経細胞の生存や分化に重要な神経栄養因子の分泌を調節する遺伝子(CADPS2遺伝子)の異常が、この病気に関係していることを突き止めました。今回の研究成果は、自閉症の発症メカニズムを解明する大きな手がかりをもたらしました。
こういったニュースはこれまでもいろいろ出てきましたが、今回の発見は、いくつかの点においてそれらよりも先をいっていると考えられます。
その第一は、この研究が次のようなステップを順に踏んでいることにあります。
1.ある遺伝子が欠損したマウスが、自閉症様の行動を示すことを確認した。
2.ヒトの自閉症者の当該遺伝子を確認したところ、特異的な異常が見つかった。
3.その特異的な異常によってどのような器質的異常が生じるのかを調べたところ、神経ネットワークの形成に影響があることが分かった。
ここでは、まず1.のステップで、原因(遺伝子異常)から結果(自閉症様行動)までが途切れなくつながった、自閉症を説明できるかもしれないモデルをマウスによって導くことに成功しています。
さらに、1.で構築された説明モデルに基づいて、2.でヒトの自閉症者を調べたところ、確かにその遺伝子に異常があることが確認できました。
これが事実だとするとかなり画期的なことです。
なぜなら、当該遺伝子の異常と自閉症発症との間にかなり精度の高い因果関係があることが、(マウスではなく)ヒトについて確認されたことになるからです。
それはつまり、自閉症の超早期診断への道を開くことになります。(理屈のうえでは生前診断も可能になるわけですが、ここではその辺りには踏み込みません)
さらに、3.のステップで、その遺伝子異常が具体的にどのような器質的異常を引き起こすのを調べた結果として、脳の神経ネットワークの形成の異常につながっているということが指摘されています。
この発見は、実際に自閉症であると診断された人、あるいは超早期診断によって将来自閉症になる可能性が高いと診断された人に対する医学的な治療・予防法の研究につながっていくことが期待できます。
第二のポイントとして私が注目しているのは、この遺伝子異常によって引き起こされるのが「神経ネットワーク形成の阻害」である、ということです。
というのも、神経ネットワークの形成が阻害される、つまり脳のネットワークが高度に組織化されない状態は、私が「一般化障害仮説」で想定している「一般化能力の弱さ」につながっていくように思われるからです。
(一般化能力は、脳の情報処理ネットワークの階層性の深さと密接な関係があると考えられ、階層性を深くするためにはネットワークが高度に組織化されている必要があるのです。)
このリリースを出しているのが、日本の脳科学の最高権威機関の1つであるといってもいい理研であることを考えれば、今回の発表はきわめてエポックメイキングなものであると評価できるでしょう。
この研究が、これまでにないレベルで自閉症に関する「真理」に肉薄していて、ここから自閉症研究の新たな地平が開けることを期待したいと思います。
とはいえ、これまでもさまざまな「自閉症の原因がわかった!」というニュースに期待を裏切られているので、まだ信じられないという気持ちが強いのも事実です。
しばらく、このニュースは追いかけたいと思います。
個人的には従来の遺伝子ネタ同様にone of themになるかもと感じていますが、日本発であるところに今後期待したいと思います。
ブログの記事も読ませていただきました。
私は文系なので高度な内容にはついていけないところもありますが(^^;)、私も今回の研究が自閉症の全貌を明らかにするようなものだとは全然思っていません。
私が特に注目しているのは、この説明モデルに再現性があって、少なくともマウスではかなり自由な実験ができるだろう、ということにあります。
恐らく自閉症の原因というのは1つではなくて、遺伝子異常というのは自閉症という「表現形」に至るさまざまなルートの1つでしかないと思いますが、それでも、たった1つでもいいのでそのルートのどれかが発見されて、何度も繰り返し実験できて、その中でどんな現象が起こっているのか、その過程にどのような介入を行なうとどのような変化が起こるのかといった研究を深めていけるようになれば、きっと自閉症研究は飛躍的に進むはずだと思います。
今回の知見が、その「1つのルートの発見」につながっていけばいいなあ、というのが私の期待ですね。
理研のページはときどき見ていて、たまに自閉症に触れているリリースなども登場してきますが、基本的には理研が持っている自閉症に対する問題意識は正しい方向を向いているように感じています。
知的障害を伴う自閉症の息子(4歳)をもつ、
こにーママと申します。
こんなものすごいページ(すみません、表現力がなくて)に辿り着き感動しています。
これからじっくりと読ませていただこうと思っています。
ところで、上のプレスリリースにあるように、
自閉症って精神疾患なんですか?精神疾患というと、いわゆる心の病ってかんじが
するんですけど・・・。脳の機能障害ですよね。脳が精神活動を担っているから?
やっぱり精神疾患でいいのかな?でも疾患でもないような・・・。
このあいだ、義父から「〇〇(息子の名前)
は、精神病か?うちの家系には云々・・・」などと言われて、
もう70歳を超えたそんな時代の人なんですが、
「ちがうよ。生まれつき脳の働きが、私たち大多数の人とは違うっていう
特徴があるだけだよ!」なんて力説してしまいました。
他にもいろいろ話しましたが、多分、私の説明下手もあり、
いまひとつ理解してくれていないようです。
何て言えばよかったのかな?って思います。
自閉症は精神疾患で問題ないようですね。
「精神疾患」には、幅広いものが含まれるようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%96%BE%E6%82%A3
これの下のほうに「自閉症」も出てきます。
自閉症を説明するのは難しいですよね。
確か、自閉症の子をもつ作家の堀田あけみさんは、「発達障害」ということばをうまく活用しているという話を書いていました。
「精神病」というのは、健常な状態から精神が病んでいくというニュアンスですが、「発達障害」なら、そもそも発達の過程に障害があって遅れていく、というニュアンスが「ばくぜんと」ですが表現できるようにも思います。
ともかく、脳の問題によって出発時点からつまづいているのが自閉症なんだというのが説明のポイントなんじゃないか、と私は思っています。
例えば脳をハードウエアーだとしますと、神経症はソフトウエアーの障害(正確には混乱)であり、その意味では自閉症と言うのは単なるソフトウエアーの障害ではなくハードウエアーの障害とすることができます。ハードの部分は治療することが困難なので、健全に働いている脳の他の健康な部分を働かせてこれを補填する作業が行動変容の作業なのです。従って、行動変容の対象はハードウエアーではなくソフトウエアーということになります。
お爺様が家の家系には精神病は無いと仰る気持ちはよく理解できますが、精神といった崇高なものが侵されているという昔からの考え方の誤りを指摘しても理解を得難いでしょうね!ただ精神の障害ではなく、コミュニケーションをとるのに必要な脳のある部分の発達が遅れているのだという程度に説明しておかれるのが良かろうかとおもいます。
コメントありがとうございました。
考えてみると「精神」病というのは不思議な名前ではありますね。donさんのおっしゃるとおり、本来はまず「精神」というものの実存性そのものを問うところから始めなければならないのだと思います。そうでないとただの同語反復、循環論法ですね。