2013年03月25日

ホワイトボードでコミュニケーション(10)

今回のシリーズ記事では、我が家でのホワイトボードを活用した(あるいは、きっかけにしたさまざまな)コミュニケーション療育の話題について書いています。

前回は、夕食メニューについてのホワイトボード療育がきっかけとなって、



これまでどうしてもできなかった「時間の流れを生活のなかに取り入れること」がようやく娘のなかに芽生えてきた、という話を書きました。

実際、それまでは、トランジションエリアを活用した絵カードスケジュールを提示しても、どうしてもそのスケジュールのなかの「好きなこと」に目がいってしまって、それを最初にやれないとパニックしてしまい、どうしてもそこから先に進めませんでした。

結果として、複数のスケジュールが順に処理されていく、というスケジュール表を提示するのはいったん諦めて、コミュニケーションの階層性を1段下げる、つまり、直近のスケジュールだけを提示して「今すぐに何をするのか」だけを伝える形に最終的に落ち着きました。


↑こちらがその、直近の予定だけを表示する「1枚スケジュール」です。
 以前書いたシリーズ記事、「そらまめ式絵カード療育」でも、最初に導入する「もっとも易しいスケジュール」として、この方法から始めることをおすすめしていますが、それは娘に対する経験からきているわけです。

この「1枚スケジュール」は、辛うじて「スケジュール」という体裁、位置づけは維持しているものの、「時間の概念」が分からなくても理解できるコミュニケーションになっている、つまり「時間の概念のないスケジュール」を示していることになります。

我が家では、この「1枚スケジュール」の時期が長く(数年のオーダーです)続きました。

ごく最近になってようやく、このスケジュール掲示板に「少し先(30分~1時間後くらい)の予定」を貼り、わざと娘にチラリと見せてから裏返して直接は見えなくする(でも、「何かスケジュールが貼ってある」ことは、裏返してあることで分かるし、最初に貼ったときにチラっと見えているし、さらには掲示板の裏側をわざわざ覗きこめば改めて見ることもできる)ことで、「次のスケジュールはこれだけど、今すぐではなくて少し後になるよ」ということがようやく示せるようになったくらいです。
(それでも、どうしても直後の予定しか提示できなかった状態に比べると、娘に「心の準備」をさせることがそれなりにできるようになって、コミュニケーションとしてはずいぶん成長したと感じていました。また、今にして思うと、これも、プリミティブな「時間の概念の芽ばえ」である、といえばそうとも言えるのではないでしょうか。)

要はそれくらい、「時間」という概念に対しては、他の発達課題と比べても、特異的に際立って困難があった、ということだと言えるのではないかと思います。

だからこそ、私たちも、ホワイトボードへの夕食の提示の際も、当初、「時間の要素」を盛り込むことはまったく考えていなかったわけですが、むしろ娘の方から、「時間の流れ」を視覚化して示すことを求めてきたわけです。

その理由はわかりませんが、あえて想像するなら、

・シンプルに、「期が熟した」(発達ステージの問題)
・「絵カードを取り除く」というアクションよりも「ホワイトボードのイラストをイレイザーで消す」というアクションのほうが、娘にとって「時間の流れ」を理解するのにわかりやすかった
・「絵カードがなくなる」というビジュアルよりも、「ホワイトボード上のイラストが消える」というビジュアルのほうが、娘にとって「時間の流れ」を理解するのに分かりやすかった


といった理由のどれかまたは複合なのでしょう。

少なくとも、娘に何らかの発達があって、これまでいろいろな取り組みを重ねてもなかなか分からなかった「時間の概念」を、夕食のホワイトボード療育をきっかけに(ある程度)獲得することができた、という事実だけは間違いがありません。

とはいえ、こればかりは検証は難しいですし、そもそもできるようになったわけですから、親としてはもはやあまり検証する意義もないので(笑)、できるようになったことを活用して前に進むことにします。

このような「時間の概念の芽生え」という嬉しい事件をふまえれば、今回の「夕食後の家事でのパニック」への新たな対処方法(の試み)が、ホワイトボードを使った「時間の概念を取り入れたもの」になるのは当然のことでした

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 21:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 娘の話 | 更新情報をチェックする
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