2013年03月18日

ホワイトボードでコミュニケーション(9)

今回のシリーズ記事では、我が家でのホワイトボードを活用した(あるいは、きっかけにしたさまざまな)コミュニケーション療育の話題について書いています。

さて、前回までの記事で、従来から、娘に「時間」の概念を理解して活用できるように支援することに非常に苦労してきたこと、そして、それとはもともとは独立して、「夕食のメニューのホワイトボードへの提示」という支援を始めたことを書いてきました。

もともと、私たちがホワイトボードに描いて伝えようとした「夕食のメニューの表示」には、時間の要素は入っていませんでした。
というより、より正確には、「入れたつもりはなかった」と言ったほうがいいかもしれません。

たまたま、先に食卓に並ぶメインの夕食が上に描いてあって、食後に出てくる果物は下に描いてあったわけですが、それは特に意識をしたわけではなく、私たちが常識的、無意識的に、「先に食べるものを上に描く」ということを行っていたにすぎません。



でも、娘はそのホワイトボードに対して、私たちが予想していなかったリアクションをとりました。
最初に食卓に並ぶ食事がひととおり終わったら、ホワイトボードのそこまでの部分を消し、ホワイトボードの表示を「果物」だけにすることを求めてきたのです。
私たちがその要求にしたがって食事部分を消すと、残った果物の名前を読んで、「ください」と要求する、そして家族で食後の果物を食べる、そういう流れを、娘が自発的に作っていったことになります。

ここには「時間の流れ」があります

今まで、さまざまな試行錯誤を繰り返してもなかなかうまく実らなかった「時間の流れを実際の生活のなかで理解し、活用すること」の芽が、まちがいなく芽生えています。

娘が、ホワイトボードの絵を消したがる、という何気ない反応に、「時間の流れという概念の誕生」という大きな発達の芽が含まれている、と気づいたときは、ちょっと感動しました。

ただ、娘がなぜ、このタイミングで、ホワイトボードのメニューを順に消していくという方法を「自ら考案」し、ある意味「時間の概念」を(極めて限られた範囲でですが)理解し、かつ実際に応用できるようになったかは、正直なところ、明確にはわかりません。

というのも、同じようなことは既にこれまでにも何度も絵カードでトライしてきていたからです。
そして、それはあまり結果としては成功してきませんでした。

例えば、スケジュールを絵カードを縦に並べて、トランジションエリア(我が家では、リビングを出たところの廊下の特定の場所)に掲示し、スケジュールが1つ進むたびに絵カードを1枚ずつはがしていく、という構造化を試みたこともありました。
これは、かつて娘が受けていたTEACCHのセッションで実際に行われていたやり方でもあり、そこの先生からアドバイスも受けながら始めたやりかたでした。

ところがこれも、やらせればやりますし、その際に絵カードの内容を読み上げたりといったこともできたことはできたのですが、それでも、「その操作を通じて、時間・手順の流れを理解して、スケジュールを実際に活用できている」とはなかなか感じられないものでした。
結局、並んでいる順番を無視して、スケジュールのなかの「一番好きなもの」にこだわってしまい、真っ先にそれができなければ崩れてしまうことが多かったのです。
つまり、スケジュールの途中に「好きなこと」があった場合、たとえすぐにそれができなくても、スケジュールを上から順番にこなしていけば、後でそれができる、ということがなかなか理解できなかったわけです。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 21:21| Comment(6) | TrackBack(0) | 娘の話 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 次回も楽しみです。
 AだからB.
 Dの後にCになる。
 時間の把握と、因果律の受け入れは、ふしぎなことに、同じ時期に芽生えが出る気がします。
 うちのムスメの場合、好悪・記憶にたよる反応が安定する時期の数年後、出てくるように見えました。(というか、この一年出てきたところです。)
 時間を把握するには、因果律を受け入れる回路も必要な気がしませんか?マイルールで干渉できる場所・知覚こだわり等と違い、時間は誰にも平等に刻むものです。因果律も、前もって入念な予告を受けていないのに、その場で受け入れる(危ないから離れなさい)には、高度ななにかが必要なのだろうと想像します。(うちの子は多様な語彙と文法を使用しますが、これが全然2歳児以下で、トラブルの元でした)
 また、自分がどの時間にいるかその場で把握しながら行動するには、再利用される絵カードより、ホワイトボードが有用なのかもしれません。かつ、ホワイトボードの文字という抽象性を受け入れる成熟もあったのかもしれません。
 私が今たてられる仮説はそのへんですね。
Posted by しまなみ at 2013年03月21日 10:46
何年も読ませていただいてますが初めてコメントさせていただきます
私は最初の通園が発達保障がベースでしたので発達の道筋は同じその上に障害特性が載っていると言うことで概念の土台作りにたっぷりと時間を取りました
時間、因果律も具体的な何時という基礎概念の前に感覚的にわかるというのがないと表面的で応用の効かない知識になるからです
そのためなのかはわかりませんが発語のない重度ーいたいとかいやとか数語をごくごくたまに言うだけーの割に理解はよく応用もききます
ただ文字理解、音声模倣は12才でやっと出始めたところです
ここから言語爆発が起こって爆発的に伸びてくれれば大成功なのですが期待はしてますがわかりません
最近思うのですが幼児期にどの方法で始めてもその後の修正で結局同じ所にたどり着くのではないかと
ABAは言語先行して誤解を受ける、TEACHでは興味の幅が狭まると言われてましたがソーシャルスキル、応用は後からやってあるようです
今学校にはABA、TEACH、ペクス、コロロと色々な療法をやっきた子がいますが今はそれ一色ということはなくなんだか同じ所にたどり着きそうな気がしています私自身もそれぞれの療法の良い所を取り入れてきました
10年後この子たちが大人になるころには統一した療育法が出来ているかもしれませんね
Posted by タンポポ at 2013年03月24日 14:05
タンポポさん、

コメントありがとうございます。

確かに、幼児期の療育に何を選ぶかで、そのときは多少の違いが出るようにみえても、それなりに適切な療育を続けていく限りにおいては、青年期くらいまでで結局同じようなところに落ち着くのではないか、ということは最近私も感じているところです。

ただ、「何もしない」や「トンデモにはまる」だと、やはり(悪いほうに)差がついてしまうんじゃないかな、という気はしています。

統一的な療育法の登場はなかなか簡単ではなさそうですが、少なくとも、もう少し明確に療育の効果を測定する研究がでてきてもいいんじゃないかなあ、とは思っています。
Posted by そらパパ at 2013年03月25日 22:02
しまなみさん、タンポポさん、

コメントありがとうございます。

時間と因果律は、同じことを違う側面から見ている部分もありますね。(それだけではないと思いますが)

そして、因果律と順序のあいだにも強い関係があると思います。

また、個人的には「時間」ってほんとにあるのかな?(実体が)と哲学的に考えずにはいられないたちです(笑)。
それは、「こころ」ってほんとにあるのかな?というのと似たようなところで、単にヒトが思考を整理するために作った実体のない概念に過ぎないのではないか、と考えてしまうわけです。

そう考え始めると、「こんなものどうやって教えるんだ!」という話になるわけですね。
それは、「こころ」をどうやって教えるんだ、というのと、私の中ではとても似ている問題だったりします。
Posted by そらパパ at 2013年03月25日 22:07
時間とこころ
永遠の命題ですね
物理学的には時間はビッグバンと共に生まれたもので相対的なもの、素粒子なんて確率的には過去にも飛んでいっちゃてるわけで…
こころは脳内物質と電気信号
でも結局、実験、環境、他者からのフィードバック全て自分の脳内に帰結するわけで我思う故に我有りに戻っちゃうんですよね
最初に倫社で習った時はこのおっちゃんいい年して思春期みたいなことを大々的に発表したの?なんて思ったものですけどね(笑)
でも女だからですかね
ある日赤ちゃんていう別の人間が自分の中で勝手に育ってスポンと出できちゃて勝手に動き回ってという状況になったらえーい地球じゃニュートンで十分なの!私忙しいの!て感じになりましたね
健常の上の子なんて環境から勝手に気付きを得て自分でどんどん育ちましたからね
なんでかなんて考えてる暇なく勝手に育ちます
障害があるとこの気付きが自分では難しくいろんな療法も歴史を見るとそこに導く工夫を試行錯誤して出てきたものだなあと
出発点と到達目標は一緒でアプローチが違う
目算ではこの気付き後はヘレンケラーのウォーターのウォーへの気付き後のように加速度的に発達する、少なくとも語彙爆発が起こる予定なのですがうちのような重度の子でもそうなるのかはわかりません
が加速はついてきました
そらまめちゃんもこれから加速度的に気付きが出てくるのではないでしょうか?それによって新しい高次の問題も出てくるでしょうけど親としては楽しみに待ちたいですね
Posted by タンポポ at 2013年03月26日 20:32
タンポポさん、

コメントありがとうございます。

そうですね、どんなやり方、考え方でも、子どもが実際に困っていることをちゃんと解決して、一緒に前に進んでいくことができれば、それで療育としては全てではありますね。

今後も、いろいろな発見、気づきを、娘とともに共有していきたいと思います。
Posted by そらパパ at 2013年04月02日 07:25
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