心理学の世界に限定せず、世間にはびこっている「ニセ科学」(科学的に証明できていないにもかかわらず、証明できているかのような「科学の外見」を装っている理論)を列挙すると、次のようなものがあります。
・血液型性格診断
・マイナスイオン
・波動(「水からの伝言」等)
・ゲーム脳
・ドーマン法(「奇跡の詩人」等)
・自閉症のキレート療法
こういった「ニセ科学」に対して、多くの科学者は「無視」というスタンスをとります。プロの研究者からすれば、科学的におかしいことはすぐに分かることですし、それをあえて取り上げて不毛な論争に巻き込まれるのは時間の無駄だと考えるからです。
そこをあえて、ニセ科学の及ぼす害悪を真剣に考え、ニセ科学を見極める目を持つことの啓蒙活動を続けている「科学者」の一人が、ここで紹介する菊池誠氏(大阪大学教授)です。
彼の目下の「戦いの前線」の1つは、「水からの伝言」でしょう。
これは、「水に優しい言葉をかけるときれいな結晶ができ、罵倒すると結晶が崩れる」といったお話で、「目に見えない『波動』というエネルギーが存在する」という、いわゆる波動理論の1バリエーションです。
この話に対する彼の立場は、こちらのページや、立場を同じくする方がまとめたこちらのページで詳しく知ることができます。簡単にいえば、「科学」というキーワードを、「科学でないもの」の権威づけや信憑性の向上のために利用することが蔓延することは、科学の発展にとって致命的なマイナスになる、という危機感がここにはあるのだと言えます。
自閉症の療育に対する正しい理解を広めるという行為も、実は、こういったニセ科学やオカルトとの闘いが大きな割合を占めます。
私は1つの療育的立場にこだわることは現時点ではありませんが、明らかにオカルトであるものやニセ科学に基づくものについては、明確に反対の立場をとっています。それが、上記の例の中でいえば「ドーマン法」であり、「キレート療法」であるといえます。
こういった科学的におかしな療法が力を強めていくことは、自閉症児者本人とその家族の貴重な時間と費用を無駄に使ってしまうことであり、それは結果として自閉症児者(もちろんその家族も)が得られるはずだった人生における「幸せ」を奪ってしまうことにつながっていきます。(そうなんです、こういった「勢力」は、一見、私たちの幸せを一緒に探してくれているように見えるのですが、実際には奪っているのです。そのことに早く気づいてほしいと思います。)
私個人の力は本当に微々たるものですが、それでも、そういった勢力に対してその微力を最大限に投じて(具体的にはこうったブログを書いたりすることを通じて)闘っていかなければならないという危機感を持っています。
ですから私は、菊池氏の志とその活動に強く共感しています。
以下に、関連するネット上の記事などについてリンクをはっておきます。ぜひご覧ください。
まん延するニセ科学と、対峙する科学者たち(ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/anchordesk/articles/0702/02/news024.html
↑今回の記事を書こうと思ったきっかけとなった記事の1つです。
まん延するニセ科学
http://d.hatena.ne.jp/f_iryo1/20061221/shiten
↑ネットにおける菊池氏の名を一躍有名にした番組のコメント内容のまとめ。YouTubeへのリンクもあり(残念ながら動画は削除されました)。
ニセ科学関連文書
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/
↑菊池氏のHPより。「ニセ科学入門」ほか、読み応えのある記事がたくさん。
kikulog
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/
↑菊池氏のブログ。最近では、話題になった「あるある捏造」について取り上げられています。
ワクチンで自閉症は増えない
http://www.geocities.com/HotSprings/4347/autism.htm
↑反キレーション論。個人的にはこういう攻撃的で下品な文体は好きではありませんが、書いてある内容は正論。