前回までで、我が家で「夕食の献立を表示する」という目的のために、必要に迫られてホワイトボードを導入したことを書きました。
ホワイトボードを実際に導入してみて第一に気づいたことは、娘が、思っていた以上に献立のひらがなを読んで理解できることでした。(これが分かったので、私たちもある程度自信をもって、「絵カード」から「ホワイトボード」に移行しても大丈夫だ、という確信を持ったわけです。)
そして、ホワイトボードを使い始めてまもなく、ホワイトボードで単に献立を表示するだけでなく、それを(食べ終わってひと段落終わるごとに)順に消していくことで、「いまどこまで進んだか」の進捗を表示する機能が加わりました。(これは娘のこだわりが実を結んだものだといえます(笑))
さて、ちょっとホワイトボードの話が末節に広がってしまったかもしれません。
このあたりで、もう一度「本題」に戻って話を進めたいと思います。
そもそも、なぜ夕食のメニューをホワイトボードに表示する「療育」を始めようと思ったのか、というところに戻らなければなりません。
それは、
夕食の際、出された料理が期待していたものと違うことによるパニックが頻発するようになったから。
でした。
これを何とか改善するために「事前に見通しを持ってもらおう」ことを目的に、夕食のメニューを表示することにしたわけです。
そして、夕食のメニューは多様なので、ぜんぶ絵カードを作るのは大変で現実的でない、ということから、絵カードの代わりにホワイトボードを使うことにした、のでした。
で、この問題はどうなったかというと・・・
実際、ホワイトボード導入でかなり改善されました!
夕食が「あまり好きではない料理」の場合、これまでは、夕食が出てきたときにパニックして、なかなか夕食が始められないことが多々あったのですが、とりあえず、そのパニックを、かなりの部分、「ホワイトボードに書いたとき」に前倒しすることができました。
ホワイトボードに書いたときに、気に入らない料理の場合、娘はそこで少し怒ります。
でも、その度合いは、これまでのやり方で夕食時にパニックしていたレベルよりずっと静かなものになりました。
また、実際に料理が出てきたときに、それでも再度パニックすることがありますが、その頻度も激しさも、かなり抑えられました。つまり、食事ができなくなるといった深刻な結果を引き起こしにくくなったわけです。
全体としては、まずまず効果の高い「働きかけ」だった、といえます。
さらに、特筆すべきことがありました。
それは、ホワイトボードにメニューを書き込んで娘に見せたときに、それが好きではない料理だった場合に、メニューの変更を要求することが出てきた、ということです。
先日も、妻が夕食のメインディッシュとして「カツ」を書いたときに、それを娘が見て、「けしてください」と要求してきたそうです。
さらに少し詳しく聞いてみると、どうやら、娘は「カツ」ではなく「トンカツ」と書いて欲しかったようでした。
実は、娘はカツ系の料理はそこそこ好きなのですが、中でも肉のカツ(とりカツやトンカツなど)が好きで、逆にアジフライや白身魚のソテーのような魚系のカツや油料理はあまり好きではありません(子どもらしいですね)。
そこで、ホワイトボードに書くときも、魚のフライのときはそのあたりを少しごまかして、「カツ」と書いていたのですが、逆にそれを娘に見透かされていたようです(笑)。
「魚のフライじゃなくて肉のフライが食べたい」、そう言っているわけですね。
まあ、だからといってメニューが変えられるわけではないので、結局娘は怒ってしまうわけですが、
「ただ出てきた実際のメニューに怒ってパニックする」
というのが、
「事前に提示したホワイトボード上のメニューを読み取って理解して、『違うメニューにしてほしい』と要求して断られてちょっと怒る」
に変わったわけですから、とても大きな「進歩」だと言えるのではないでしょうか。(^^)
(次回に続きます。)
1. 自閉症の構造
(1) 自閉症という障害を構造的にとらえようという考え方です。自閉症を構造的にとらえることで、その対応を明確にすることができます。構造は、一次的障害から四次的特徴の四層構造となります。
(2) 一次的障害
① 自閉症=先天性の脳機能障害
(3) 二次的障害(感覚入力面から見られる特徴)
① シングルフォーカス(視覚)
② セントラルコヒーレンス(聴覚、視覚、その他?)
③ 感覚過敏(聴覚過敏、触覚過敏、味覚過敏、嗅覚過敏、おそらく視覚過敏もあるのではないか=天井を見ると目が回る)
④ 感覚鈍麻
⑤ 感覚の偏り
⑥ ブランコが好き=前庭覚
⑦ 加圧が好き=固有受容覚
(4) 三次的障害(生きにくさ)
① 社会性の障害
② コミュニケーションの障害
③ 想像力の障害(想像力の障害とそれに基づく行動の障害)
(ア) 同一性保持
(イ) こだわり
(ウ) 常同行動
(5) 四次的特徴(問題行動)
自傷、他傷、パニック、かんしゃく、他害(物を叩く、蹴る、投げる)など
2. 対策
(1) 三次的障害対応の取組
① 社会性→教室環境の構造化による生活習慣の獲得、授業の構造化
社会性の獲得は一番難しく、課題として残っているが、個別の指導計画の目標
項目に上げ、授業の中でも目標にして取組中である。
家庭や学校の中での社会性を身につけさせることで、社会に出たときにその力が発揮できるようにする。家庭や学校を小さな社会として位置付け、その家庭の中でしっかりと社会性を身に付けさせていくようにすれば、社会に出た時もしっかりできる。
② コミュニケーションの障害→PECS、絵カード、視覚支援
③ こだわり(同一性保持)→変更の受け入れ、時間の制限、スモールステップ→我慢する
力、頑張る力、耐性を付ける。
④ 常同行動→やることがなくて困っているので、何か課題を与える。掃除、お手伝い、調
理、ストレッチ、散歩、余暇、課題学習など
(2) 二次的障害対応の取組
① 感覚過敏→無理をせず少しずつ慣れさせていく。味覚過敏や触覚過敏からくる偏食など。
感覚欲求を子どものニーズと位置付けることで、学習後のご褒美にする。
② シングルフォーカス→集中して一つのことに取り組める力として利用し発揮させる。
③ セントラルコヒーレンス→サバンの力として、その特異な能力を引き出す指導をする。
(3) 一番困るのが四次的特徴の問題行動だが、問題行動をすぐなくすのは大変である。問題行動の対応ばかりしていても三次的障害は変わらない。そこで、大変でない小さいところから取り組んでいくことで、問題行動の全体量を減らしていこうという考えである。小さなこだわりから変更を受け入れる力を付けていく。数を少し減らしたり、時間を制限したり、スモールステップで取り組んだりする。