Slide 22 : 「行動レベル」と「知覚・認知レベル」(再掲)
私が今日の前半でお話した自閉症のしくみと、一般にいわれる自閉症の症状・定義というのは、議論の「レベル」が違います。
こちらを見ていただくと分かるように、自閉症という障害は、行動レベルから知覚・認知のレベル、さらにそれよりもっと根源的なレベルといったように、多重構造をなしていると考えられます。
ここでは、上位のものほどより根本的な障害で、そこから下のレベルの障害が派生して生まれていく、ということを示しています。
つまり、器質レベル、つまり脳の損傷によって知覚・認知レベルの障害が引き起こされ、知覚・認知レベルの障害によって生じた発達の遅れ・偏りが、さまざまな行動レベルの障害として表面化してくる、というわけです。
そして、そのような行動レベルの問題によって社会にうまく適応することに失敗すると、さまざまな二次障害も生じてくるでしょう。
今日、前半で時間をかけてお話ししたのは、まさにこの「知覚・認知レベル」の障害がどんなものなのか、ということについての考え方になるわけです。
自閉症を理解するのに大切なことは、「行動レベルの症状」と「知覚・認知レベルの困難」という、この2つを同時に意識することです。
ここは、今日のお話のなかでも最重要ポイントの1つだと考えています。
ですから、ぜひ覚えて帰っていただきたいと思います。
Slide 23 : 「行動レベル」と「知覚・認知レベル」(続き)
いわゆる自閉症の三つ組の障害というのは、行動レベル、つまり目に見える症状ですが、これらはすべて、「環境とかかわることが難しい」という、たった1つの目に見えない知覚・認知レベルの困難から派生しているものだと考えられるわけです。
こう考えるほうが、いろいろな問題行動を個別にみるより、自閉症をシンプルにすっきりと理解できるわけです。
(次回に続きます。)