Slide 20 : プロジェクトをとりまく環境(図)(再掲)
リーダーはまず何より、強いプロジェクトチームを編成しなければなりません。
具体的には、ビジョンにしたがって、家族全員で療育をやっていくんだ、という強いメッセージを出して、もちろん自分自身もその真ん中に入っていくこと、あとはいい療育施設を見つけてきたり、近所に住む親戚に事情を説明していろいろと協力してもらったりといった働きかけによって、「サポートリソース」や「サポートメンバー」を増やしていくこと。
こういった働きかけは、チームの力を質・量ともに高めていくものですから、全体として「チーム編成」と呼ぶことができます。
そして、そうやってできあがった「外」とのつながりをしっかり維持・強化していくこと、常に新しいつながりを広げていくこと、万が一、学校や行政機関、地域などと摩擦や問題ごとが起こったら、それをうまく解決すること、こういうのもリーダーの重要な仕事です。
そういった「外とのつながり」をコントロールしていくような取り組み、働きかけのことは、ここにあるように「リンケージ・マネジメント」と呼んでいます。
リンケージというのは、「つながり、縁」のことですね。
さて、1ページ前に戻っていただいて(Slide 18)、いまご説明したような体制づくりと並行して療育を実際にすすめていくことになりますけれども、プロジェクトっていうのは生き物ですから、一度体制ができたら放っておいても大丈夫ということはありません。
Slide 18 : プレイングマネージャーの役割とは?(再掲)
むしろ、実際に動き出してあと、ちゃんと維持していくほうがずっと大変です。
家族や支援してくれる人たちといったチームのメンバーとのコミュニケーションも欠かせませんし、モチベーション、つまりやる気ですね、それを維持するためには、メンバーに迷いが出たときにしっかり向かうべき道筋を示したり、疲れが吹き飛ぶような楽しいイベントを企画したりといったことも続けていく必要があります。
そして、自閉症についての知識とか、療育のテクニックとか、そういった家族全員の能力向上、スキルアップについても、最初だけ頑張って勉強して終わりということではなくて、継続的に続けていく必要があるでしょう。
もう1つ、療育を続けていくなかでリーダーが気をつけなければいけないのが「陳腐化」のリスクです。
陳腐化というのは、家庭の療育がうまく軌道に乗っているときにこそ、かえって起こりやすいんですが、その「うまくいっているパターン」が固定化して、新しいことをやらなくなっちゃう、療育が作業化・ルーチンワーク化してしまう、そういう状況のことをいいます。
こうなると、子どもが成長しているのにそれに見合った小回りのきいた修正ができなくなったり、毎日の療育に閉塞感がただよったりとか、まあ言ってみれば大企業病みたいな状況に陥るわけです。
これを打破するために、新しい療育法を取り入れてみたり、家族それぞれが担当する役割を変えてみたり、そういう新しい刺激を入れることも、リーダーの大切な仕事だと思います。
(次回に続きます。)