自閉症児が将来自立した大人になるためには、余暇をうまく過ごすための趣味を持つことが意外に大切です。
自閉症児は、「何をしてもいい」と言われると、何をすればいいか分からなくて混乱する傾向があり、そのため「自由時間」には社会不適応な行動をとる頻度が上がるといわれています。ですから、自閉症児が大人になるまで続けていけるような趣味、活動、スポーツなどを見つける努力を、幼児期からはじめていくことが望ましいでしょう。
とはいってもそれほど難しいことではなく、普通の子育てとまったく同じように、子どもが好きなことを見つけ、それを伸ばせるような環境を作ってあげることが大切です。理想的にいえば、とかく問題行動につながりがちな「こだわり」をうまく転換して、子どもが一生付き合えるような「趣味」につなげていければ素晴らしいですね。
ここで、特に配慮しておくべきことは、体を動かす習慣をつけることでしょう。
自閉症児は一般に反応性に乏しく、友達と遊ぶということもないため、室内の特定のおもちゃや現象に興味を向けつづけたり、だらだらとテレビやビデオを見つづけたりといった生活スタイルに陥りがちです。そんな生活の中で、唯一欲求がストレートに満たさせるのが食べたり飲んだりという状況になってしまうと、しばしば肥満となります。一度肥満になると、空腹をがまんさせてダイエットさせるというのは非常に難しいでしょう。また、体が動きにくいから運動をせず飲み食いして、さらに太るという悪循環に入ってしまいます。
小さい頃から飲み食いをコントロールして肥満を防ぐと同時に、積極的に運動をさせ、子どもが体を動かすことが楽しいと感じることが大切です。誰でも好きな運動遊びがいくつかあるでしょうから、そういった遊びを「強化子」にして、別の運動もやらせる(やらせたい運動をしたら、好きな運動遊びをやってやる)ことができます。
6.サポートブックを作る
自閉症児の幼児期の療育についてのシリーズ記事は、以上でとりあえず終わりです。
最初に書いたとおり、どちらかというと療育理念、療育観に関することが中心になり、具体的な療育項目や技法については概観を述べるに留まっています。これらについては、私が中途半端に解説するよりも、実践に基づいた優れた書籍がたくさん出ていますので、この後でまとめる「おすすめ図書」を参照いただきたいと思います。
このような療育を幼児期に積み上げていく中で、やがては子どもを幼稚園や学校などに送り出すときがやってきます。
それまでに子どもは大きな発達をとげていると思いますが、それでもやはり他の子どもとは違うところ、援助が必要な部分は数多く残ってしまうことと思います。
そのような子どもを本格的な集団生活に送り出すときに、ぜひ作っておきたいのが、「サポートブック」と呼ばれる小冊子です。
サポートブックとは、親だからこそ分かる子どもの特徴や得意・不得意、問題行動への効果的な対処方法、援助が必要な事項などをコンパクトにまとめたもので、小さなノートやバインダー、クリアファイルなどを使って携帯しやすいように作ります。そして、学校の先生や介助者、周囲の関係者の人たちにスムーズに子どものことを理解してもらい、効果的な対応ができるように活用します。
これも、TEACCH的な「子どもを取り囲む環境改善の取り組み」の1つだと言えます。
集団生活に飛び込む子どもに対するとても意味のある「プレゼント」になると思いますので、幼児期の療育の「総仕上げ」として、サポートブック作りに取り組むことをおすすめします。
サポートブック作りには決まったフォーマットはありませんが、以下の書籍などが参考になると思います。
発達障害のある子とお母さん・先生のための思いっきり支援ツール
(次回に続きます。)