2007年01月11日

幼児期の療育を考える(31)

ABAについての解説が続いています。
最後に、やや高度になりますがABAのルールをあと2つ追加しておきましょう。

h. 連続強化から部分強化へ
i. 記録をとる(ABC分析とABデザイン)


少し前に、ABAを始めるときは子どもが好きな食べ物(強化子)を小さく砕いて使う、という話をかきましたが、小さく砕く理由は、子どもが課題を1つこなすごとに、直後に毎回強化子を与えるためです。
例えば、カードのマッチングを20回やらせるときは、20回のマッチングが終わったところで強化子を1回あげるのではなく、マッチング1回ごとにすぐに強化子を与え、全部で20回強化しなければならないのです。このように望ましい行動を毎回強化するやり方を「連続強化」といい、新しいことを学習させる・身に付けさせるときに効果的なやり方です。
ただし、その行動が定着し、いつもうまくできるようになったら、今度は毎回強化するのではなく、何回かに1回だけ強化するようにします。先のマッチング課題20回でいえば、課題5回につき1回とか、20回終わったら1回といった形で食べ物を与えて強化する頻度を下げていきます。ただし、完全にゼロにしてはいけません。また、食べ物を与えないときでも、ほめことばのような二次強化子、フィードバックは毎回与えます。このように、望ましい行動に対して「ときどき」強化するやり方のことを「部分強化」といい、学習した行動を定着・維持するために効果的なやり方です。

ABAによる強化は、連続強化によって学習させ、部分強化によって定着・維持する、というのが基本です。あわせて、先ほど話したように、一次強化子(飲食物など)から二次強化子(ほめことばなど)に比重を移していくことも大切です。

やや脱線しますが、部分強化を考えるにあたって、私たちにとって切実な問題になりやすい、「大パニックを強化する悪循環」について触れておきたいと思います。
上に書いたとおり、部分強化というのは学習された行動を定着・維持するのに効果的な強化方法です。部分強化というのは、要は「ときどきごほうびがもらえる」という状態ですから、仮にその行動の結果「ごほうび」がもらえなかったとしても、「次はもらえるかもしれない」ということで行動が繰り返されます。ギャンブルに中毒性があるのはまさにこの点で、「負けても負けてもやめられない」といった深刻な中毒症状は、この部分強化によって強固に定着・維持されていると考えることができます。

自閉症児の子育てを考える場合、この「部分強化」によって強固に定着していると考えられる行動の1つが「パニック」です
パニックが何らかの要求の手段として使われるとき、私たちはそのパニックを「消去と代替行動のセット」によって、より適切な要求の表現に切り替えていかなければなりません。
ところがここで、不十分なABAへの理解から、パニックは単に「消去」すればいいと考え、代替行動を与えずにただ無視をするという対応を取ったとすればどうなるでしょうか。
子どもはパニックを無視されても、それ以外に要求を表現する手段をもたないため、要求に突き動かされるようにパニックを続けることになります。そして親が無視を貫けなくなり、「根負け」して要求を飲んでしまった瞬間に、これは「消去」ではなく「部分強化」をしていることになります。(あるいは、「パニックを続けること」「より激しいパニックをすること」を選択的に強化していると考えることもできます。)

その結果、パニックは減るどころかより強固に定着・維持されるようになり、その後の子どもへの働きかけをより困難なものにしてしまいます。

私たちは、パニックをはじめとする問題行動について、「消去しているつもりの部分強化」をしないよう、常に心がける必要があります。そして、それを避けるためにもっとも大切なことが、「子どもに代替行動を提供すること」なのです。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 23:04| Comment(4) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
明けましておめでとうございます
マリネことmarineです(笑)
分化強化、とてもわかりやすい説明でした。覚えの悪いmarineは多分、今後もこの記事を何度も見ると思います。

なぜなら・・連続強化はとても簡単です。
しかし、維持・般化するための部分強化は
本当に難しいと思います。
私のところの場合、トイレに座ることは問題なくなりました。1ヶ月前ほどは、事前に知らせてトイレにいく回数が、最近になって事後にすぐに知らせてトイレを行く回数のほうに取って代わってしまったのです。
部分強化に問題があったのでしょうね・・・。

また、抱っこ!という発語を維持したいために、無理して何度も抱っこの要求にこたえるのは、まさにNGのようです。何回かに一度抱っこされるほうがその行動は維持されるものだと専門家に説明されたものの、
分化強化のことを言ってるのはわかったのですが、そのタイミングがどうしてもつかめず・・・悩むところです。

Posted by マリネ at 2007年01月13日 01:04
マリネさん、こんにちは。
あけましておめでとうございます。

「分化強化」という言葉がところどころにありますが、正しくは「部分強化」ですね。「分化強化」というのは別の意味で、2つの行動の片方だけを強化して、そちらの行動の発生頻度を上げていくことです。

毎日の生活で、部分強化を「意識して」やるというのはあまり現実的じゃないように思います。
むしろ、普段の生活では子どもの要求に気づかないことも多いはずなので、普通に応えているだけで部分強化になっているはずだと思います。

行動形成がうまくいかないとき、連続強化か部分強化か、という違いが原因でうまくいっていないということはあまり多くないんじゃないかと思います。
それよりもむしろ、ほめたり何かを与えたりするときに、これによって本当に強化している行動は何なのか、をじっくり考えるところからヒントが見えてくることのほうが多いかもしれません。
Posted by そらパパ at 2007年01月13日 23:00
そらパパさん、寝ぼけていてごめんなさいです。
部分強化と書きたかったのに・・・
パチンコの玉の話はどこかでも聞いたことはあるのですが、いまいち理解できずにいたのですが、今回の説明で本当によくわかった「気」がしました。^^;

すみません・・・私もいつまでも初心者レベルの頭なもんで~。
Posted by マリネ at 2007年01月14日 23:45
マリネさん、

いえいえ、ABAの用語は分かりにくいものが多いですからね。(特に「負の強化」とかはものすごく分かりにくいですね)

パチンコは典型的な部分強化スケジュールに基づいています。「たまに優しくなる暴力夫」なんかも、もしかすると部分強化で奥さんとつながっているのかもしれません。
Posted by そらパパ at 2007年01月16日 23:04
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