2006年12月25日

幼児期の療育を考える(26)

「何から手をつけていいか分からない」自閉症児のための最初期の療育について具体的に考えていきます。

a. 感覚統合

ここで考えている「感覚統合」というのは、バランス感覚や体のさまざまな部分への触覚刺激、歩く・走るといった体全体の運動(粗大運動)といったものを通じて「自分のからだが存在する感覚」を確かなものにするための療育です。
先に触れたこの段階の療育のテーマに沿って言うとすれば、自分の体が受ける感覚のみで完結する感覚統合は、「ボディ・イメージ」を確立させるための最初の一歩になります。
こういった感覚の学習は、まさに「からだ」で覚えるものですから、リハビリテーションと同様に、子どもが嫌がらない範囲で(できれば楽しいと感じることを)さまざまな刺激を与え、運動をさせていくことが基本になります。

家庭の療育で感覚統合に使えそうなものは、子ども用のバランスボール、ボールプール、子供用のジムやトランポリン、タオルケット、かけ布団・しき布団、ソファ、ベッド、階段などでしょう。運動のためには公園などに出かけることも必要でしょう。
与えるべき刺激は、基本的に「体のあらゆる部分に対する触覚刺激」と「体の重力に対するバランス感覚への刺激」であり、させるべき運動は、当面は「歩くこと」「走ること」「ジャンプすること」「バランスをとること」「しがみつくこと」「皮膚への接触・摩擦」などです。

感覚統合については、理論に深入りする必要はありません。アスレチックジムのような刺激と運動を子どもと一緒に楽しむことを意識していれば十分だと思います。最初は親が介助しないと何もしてくれないかもしれませんが、徐々に自発的な活動が増えてくることが期待できるでしょう。


b.鏡の療育

これは私のオリジナルの療育法ですが、「何から手をつけていいか分からない」ような状態のお子さんに対して、先に説明した「ボディ・イメージの確立」と「操作の対象としての環境への気づき」という2つの最重要スキルの発達を同時に促すことが期待できる療育法です。

感覚統合によって得られるボディ・イメージは自分の体性感覚の中だけで完結してしまう側面があるため、そのままでは、そのボディ・イメージを「環境とのかかわり」に拡張していく力が弱いように思います。
それに対して「鏡の療育」では、「環境の中にいる自分」への気づきを促すことができるために、自己の中だけで完結していたボディ・イメージを、環境の側に引っ張り出してくる効果が期待できるわけです。

つまり、感覚統合によって得られるボディ・イメージが「自分の『からだ』の知覚」だとすれば、鏡の療育によって伸ばそうとしているのは、その知覚をさらに拡張した「環境の(原初的な)知覚」だと言えます

設置の手順などについては既に他の記事で詳しくご紹介しているので(シリーズ記事「鏡の療育」「鏡の療育再考」をご覧ください)ここでは簡単に説明しますが、お子さんの普段の生活空間に全身が映るような大きな鏡を設置する、それだけの療育法です。
お子さんが親からの介入に抵抗しないのであれば、鏡の前で体を動かして遊ぶように誘導することが有効ですが、親からの介入を嫌がるようであれば、自然に任せても構いません。
なお、安全のため、鏡は壁やドアなどにしっかりと固定して落としたり子どもが取り外したりできないようにするほか、割れにくいアクリルミラーを使うなどの工夫が必要でしょう。

「鏡の療育」が持つ療育効果についても、簡単にご説明します。

鏡には、他のおもちゃにはない、次のような画期的な特徴があります。

・適切な意図をもって接しなくても反応がある。
・微細運動を行なわなくても反応がある。
・鏡はそれ自体ただの1枚の板であり、部品だけで無意味な遊びをするといったことがない。
・こちらの動きに対し、一瞬の遅れもなく即座に反応が返ってくる
・同じ動きに対しては同じ反応が返ってくるため、因果関係が明確である


これらの特長により、普通のおもちゃを与えても感覚遊びや常同遊びにふけってしまう子どもでも、「体を動かして鏡像の動き(反応)を楽しむ」という、適切な操作遊びに容易に導くことができます。

鏡の療育の導入時の最初の目標は、このような「初めての操作遊びの体験」をさせることにあります。

この体験により、鏡の前で体を動かして鏡像を見る、という遊びに関心を持つようになれば、それを繰り返すなかで、先に書いたような「ボディ・イメージの確立」と「操作の対象としての環境への気づき」にいたることができるでしょう。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
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