2012年03月05日

殿堂入りおすすめ本・まとめて再レビュー(18)

過去に「殿堂入り」として強くおすすめした本を、現在の視点から改めてレビューしつつ、まとめなおすシリーズ記事の18回目です。
今回は、絵カード療育の1つである「PECS」についての本のご紹介です。

3.その他の療育法についての本(続き)

<殿堂入りおすすめ本>


A Picture's Worth(レビュー記事
自閉症児と絵カードでコミュニケーション PECSとAAC(レビュー記事

絵カードを使った療育法の1つである「PECS」についての本。

実はこの2冊は同じ本で、「原書」と「訳書」という関係になります。

我が家で娘への療育を始めたころは、まだ「PECS」というのは(少なくとも我が家のような一般的な家庭レベルでは)ほとんど知られていませんでした。

それもそのはずで、「PECSの本」と呼べるようなものは、まだ当時は1冊もありませんでした。
海外の療育法の情報収集に熱心な一部の親御さんや、一部の専門家だけが「アメリカではPECSという絵カード療育があるらしい」という情報を持っていた、そういう時代(というと大げさですが、実際にそんな感じ)でした。

私がPECSを知ったのは、娘にロヴァース式の(音声模倣をベースとした)ABAによることばの訓練をやろうとして、なかなかうまくいかなくて挫折ぎみだった頃のことです。
娘のような重い子どもに対しても、こんなにハードルの高い言語訓練しかないのだろうか、と思ってネット検索などをやっていたところ、偶然、門先生のHPでPECSという療育法が紹介されているのを発見しました。

そして、「これはいいかもしれない」と思い、PECSについての本を探してみたのですが、先述のとおり、当時は日本で手に入る一般書籍は1冊もなく、Amazonで引っかかった、唯一購入可能だった「A Picture's Worth」を買って読んでみることにしたわけです。

「A Picture's Worth」は、PECSの創始者であるアンディ・ボンディ氏自身の手による薄いペーパーバックの入門書ですが、簡潔な文体で論理的に書かれており、私がいままで読んだ英文の本のなかでもダントツに読みやすいものの1つでした。
読み終わって、「これは自閉症児のコミュニケーション療育に、間違いなく大きな進展をもたらすものだ」と確信し、その後は(まだ評価は定まっていなかったですが)PECS、あるいはより広い視点での「絵カードを使った療育」についての情報発信を、ブログにて積極的に行なってきました。

結局、私がブログでPECSや絵カード療育について言及するようになった後も、しばらくはPECS関連の日本語の本が(PECSのセミナーで使われるテキストを除いては)まったくない状態が続いていましたが、その後ようやく、この「A Picture's Worth」を訳した「自閉症児と絵カードでコミュニケーション PECSとAAC」が出版される運びとなりました。

これは非常に嬉しいニュースだったのですが、実際に出版された本を読んでがっかりしたのが、日本語訳に少々問題がある(ように思える)ことでした。
「誤訳」のなかには、文意をとることが難しくなったり、意味が正反対になっていたりしているものもあり、このままではせっかくの「A Picture's Worth」のメッセージが誤解されてしまうかもしれない、と感じたため、僭越だとは思いつつも、「日本語訳修正案」というのを作りました。
私の訳がかえって間違っている、という部分もあるかもしれませんが、本書を読むとき、脇において参考にしていただければ幸いです。

「PECSについての一般書」というと、日本語訳が出て何年もがたった今も、私が知っている限りでは、事実上これだけではないでしょうか。(実は、既にご紹介した殿堂入り本「発達障害のある子とお母さん・先生のための思いっきり支援ツール」にもPECSの実施方法が記載されていますが、必要最小限の、ごく簡素な内容です)

初心者むけとしてはやや堅めの内容や、上記のような日本語訳の問題はあるのですが、それでも、「一般書籍でPECSを学びたい」という方にとっては、本書はほぼ唯一の選択肢になります。(英語が得意な方は、むしろ原書にあたったほうが、読書体験としてはいいものを得られるかもしれません)

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
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