2006年12月05日

幼児期の療育を考える(16)

自閉症に対する有効な療育技法を順にご紹介しています。

b.ABA(行動療法・応用行動分析)

TEACCHが療育の「枠組み」であるとすれば、ABAは具体的な療育の「実施技法」であるといえるでしょう。両者は本質的には対立する概念ではありません。TEACCHでは、TEACCHの理念に合致した療育メニューを、ABAの理論(行動理論)に基づいて実施しています。
ただし、ABAにはTEACCHとは違ってさまざまな「流派」があり、中には明確にTEACCHの療育観を批判する立場に立っているものもあります。このあたりも後で書きたいと思います。

ABAというのは、動物やヒトの学習や行動に関する実験心理学の一派である「行動分析学」を、療育などの臨床の場で応用するやり方をいいます。(ですので、「応用」行動分析学=Applied Behavior Analysisというんですね。)
ABAの元祖は、スキナーというアメリカの学者だと言われています。日本では、「行動療法」という名前でけっこう昔から活用されてきた歴史がありますし、テクニックとしては既にあらゆる療育法に広く浸透しています。
また、絵カードを使ったコミュニケーションの療育法である「PECS」もABAの一種ですが、これは別項を立てて後で詳しく解説します。

名前だけ聞くと難しそうに思えますが、ABAの基本原理は私たちが普段子育てでやっていることと大差ありません。

1.望ましい行動にはごほうびを与えて、増やす。
2.望ましくない行動にはごほうびを与えないことで、減らす。
3.望ましくない行動が起こる理由を見つけ、同じ効果のある望ましい行動に切り替える。
4.「叱る・罰を与える」のではなく「ほめる・ごほうびを与える」ことで療育する。
5.望ましい行動を教えるときには、最初はうまくその行動ができるように手助けする。
6.難しい行動は、簡単な小さな単位(スモールステップ)に細分化して教える。
7.療育の効果がよく分かるように、観察し記録をとる。


ABAの強みは、それがイルカの曲芸のトレーニングなどでも使われていることからも分かるとおり、ことばが通じなくても行動のコントロール、つまり、問題行動をやめさせたり、望ましい行動を身に付けさせたりといったことができるという点にあります。
また、望ましい行動をすぐにほめたりごほうびを与えたりして「強化する」、あるいは不適切な行動をした場合には適切な行動に切り替えていく、というABAのやり方、明確なフィードバックによって、自閉症児にとって「何をすべきなのか、何をすべきでないのか」がとても分かりやすい環境を作ってあげることができます。

ABAを療育技法としてみる限り、これを否定する要素はどこにも見当たりません。
それどころか、ABAは自閉症児にさまざまな行動を学習してもらうための、多くの場合唯一かつベストの方法論だと断言して構わないと思います。すべての自閉症児の親御さんは、基本的なABAの知識をマスターすべきだと考えます。(ですので、ABAの知識については後でもう少し詳しく触れたいと思います。)

ただし、このことは、「ABA」という名前が入っているすべての療育法をもろ手を上げてお薦めする、ということではもちろんありません。
これまでご説明したとおり、ABAというのはあくまで「どうやって望ましい行動を形成していくか」のための技術論ですので、その方法論の上にどのような「療育メニュー」を組むのかは、療育者によって違ってきます。そして、そのやり方の違いによって、ABAにはさまざまな「流派」と呼べるようなグループが存在している現状があります。
ですから、ABAによる療育を評価するためには、さらにその中身にまで踏み込んで検討する必要があると思います。

ちなみに、既に書いたとおり、TEACCHも実際の療育の実施にあたってはABAを活用していますし、一部の観念的な「愛情重視」の療育法も、よくよく内容を見てみると、実際にはABAに基づく「訓練的な」療育が盛り込まれていて、その部分だけが実質的な効果を上げていたりします。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
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