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2006年12月04日 [ Mon ]

幼児期の療育を考える(15)

自閉症児の療育法の1つである、TEACCHについて続けたいと思います。

ところで、TEACCHというのは簡単にいえば「自閉症児の特性にあわせた療育をしましょう」という考え方ですので、逆に考えるとTEACCHの考え方に立たない療育法なんて存在するんだろうか?と考えてしまうかもしれませんが、そのような考え方も実際に存在します。

TEACCHの考え方に立たない療育観というのは、典型的なものとしては「健常児と同じように普通の社会生活を送ることを最初から目指すべきだ」という考え方でしょう。
そういった考えによる1つの意見としては、TEACCHの療育で用意されるような「特別に配慮された環境」は現実の社会にはどこにもないのだから、そういった環境で学んだことは現実社会で応用しにくく、また、TEACCHで学んだ自閉症児も結局最後は複雑な現実社会に出て行くのだから、特殊な環境で療育するのは非効率的だ、といったものです。
ですから、そういった療育観から生まれる療育法というのは、「普通の子どもの中に放り込んで普通の生活を送らせながら、遅れている部分を、TEACCH的でない、実社会と同様の複雑さの中での療育によって追いつかせる」といったものになるでしょう。

この療育観が絶対に間違いだとは言えません。
どの子どもにどの療育スタイルが合っているかはまさに千差万別ですし、この考え方にも一定の整合性があります。特に、高度な社会性以外の部分に著しい遅れが見られないような、知能の高いアスペルガー症候群のお子さんなどの場合は、このようなやり方が効果を発揮する可能性があるでしょう。

ただ、ここで出てくるような「特別に配慮された環境での療育は、現実の社会の中での療育に劣る」という考え方は、自閉症児の療育に関しては恐らく間違っている、とだけは言えそうです。

これまでの認知心理学の知見からは、いきなり複雑な学習環境を設定するよりも、最初はシンプルな環境を与え、徐々に複雑にしていくほうが、最終的な「複雑な環境への適応」はむしろ向上するとされています。また、自閉症児にとって特に困難な課題となるのが、複雑な環境から一般的な法則・ルールを見つけることですから、最初から複雑な環境に放り込まれてしまうと、その中では本来簡単なことを学ぶことさえできない可能性があります。

これは、私たちが外国語を学ぶときに、いきなり難しい会話や文章だけを与えられても簡単な文法さえ学べないことと似ています。
最初は現実には存在しないくらい単純な文(「This is a pen」なんて実生活ではまず絶対に言いませんよね!)から始めて基礎を積み上げていって、最終的に「複雑な現実の会話・文章」にたどり着くのが、適切な外国語の学習方法です。

自閉症児にとって、この社会、この環境について学ぶことが、私たちがまったく知らない外国語を学ぶのと同等かそれ以上に困難な課題であるとしたら、当然、このような「小さく易しく始めて、大きく育てる」アプローチを取る必要があると考えるべきでしょう。
ですから、「療育のために、構造化(自閉症児にとって理解しやすい環境を作ることを、TEACCHではこう呼びます)された環境を用意すべきかすべきでないか?」という問いに限定していえば、当ブログでは「用意すべきである」という明確な立場を取ります。TEACCHがそう主張しているから、といった単純な理由ではなく、そのやり方のほうが優れていると判断できる合理的な理由があるからです。

そして、そういった立場(構造化支持)をとることは、最終ゴールとして(たどり着くことが可能なら)健常児と同等に複雑な社会・環境に適応するという目標を設定することとまったく矛盾しないのです。

当シリーズ記事、そして当ブログでは、TEACCHの療育観に対しては肯定的な立場を取ります。
脳に障害がある、ということはそれだけで、私たちの「当たり前」が通用しない、ということを明確に意味しています。
だとすれば、私たちの「当たり前」をあえて押し付けず、自閉症児が、さまざまな認知スキル上の困難の中でも能力が発揮できるような環境を作り、その中で療育することは、私たちにとっては義務に近いことなのではないか? そう思っています。

(次回に続きます。)

posted by そらパパ at 22:49 はてなブックマーク | コメント(0) | トラックバック(0) | そらまめ式
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