2006年12月01日

幼児期の療育を考える(14)

2) 自閉症児の療育に有効な療育法

自閉症児の療育法にはさまざまなものがありますが、ここでは本のタイトルになるくらい一般化して「○○法」と呼ばれているようなもののうち、実際に効果があると認められ、検討に値するものをご紹介します。
実際には、これらのどれか1つだけを勉強し、それだけで療育するというのは現実的ではないでしょう。無節操な「いいとこどり」は良くありませんが、それぞれの療育法が持つ特徴と目指すものを十分に理解し、適切に組み合わせ、さらには自分の子どもに合ったメニューを独自に開発するといったことが求められるのではないかと思います。

a.TEACCH

TEACCHとは「自閉症及び関連するコミュニケーション障害の子どものための治療と教育(Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped CHildren)」を略したもので、アメリカのノースカロライナ州で行なわれている自閉症児者向けの取り組み全体のことを指します。このプログラムの創始者は、ノースカロライナ大学の故エリック・ショプラー氏です。
現在では、TEACCHは世界的な広がりを持った自閉症療育プログラムとなっています。日本においては、今から25年ほど前に、佐々木正美氏がノースカロライナから持ち帰ったのが普及のきっかけだと言えます。

TEACCHの最大の特徴は、先に書いたような「自閉症児の困難・特性」に最大限に配慮した環境の調整をおこない、その中で療育・社会的自立を目指していくという療育観、療育哲学にあるといえるでしょう。
言い換えるなら、自閉症児に対して「私たちの世界」を押し付け、適応させようとするのではなく、私たちが「自閉症児の世界」を理解し、そこにできるだけ近づいたうえで、2つの「世界」をつなげる橋渡し役を積極的に行なおうとする点にこそ、TEACCHの本質があると言えます。

したがって、TEACCHというのは、療育の「枠組み・環境作り・進め方」の指針である、と言えます。つまり、TEACCHは療育の「How」についての方法論であり、療育の「What」、具体的にどんな療育をするのかについては、基本的にはフリーハンドです。
そのため、TEACCHはその療育観に反しない限り、あらゆる有効と思われる療育技法や療育課題を自由にその中に取り込んでいける柔軟性を持っています

現に、TEACCHでは課題を遂行するときには行動療法(ABA)の強化のテクニックを当たり前のように使いますし、子どもの状態にあわせて、作業療法・感覚統合療法的な活動も取り入れます。最近では自発的なコミュニケーションを伸ばすために、絵カードを使ったコミュニケーション療育法である「PECS」も積極的に活用されるようになってきています。(これらの療育法についても、あとでご紹介します)

TEACCHに対するよくある批判の1つとして、「TEACCHのような行政や地域を巻き込んだ大規模な取組みは日本では無理だ」といったものがありますが、これは一面的な理解に基づく誤解だと思います。私が考えるTEACCHとは、各自にとって可能な「影響力の輪」の中で、自閉症児が能力を発揮できるよう最大限に環境に働きかけることです。行政や地域を大きく巻き込んでいくことも、もちろんTEACCHの取り組みとして目指していくべき一要素ではあると思いますが、それが「TEACCHであるための」必須要素ではないと考えます。
私たち親が影響力を行使できる領域はたかが知れていますが、それでも、自閉症児の生活環境ということで考えれば、その広さは意外と大きいのではないでしょうか。まずは(特に幼児期においては)家庭内から、そして関係の深い地域や学校・施設へと、「理解と影響力の輪」を少しずつ広げていき、環境への働きかけを続けていく、そして子どもが将来生活しやすいような「環境」を少しずつ作っていく、それは本質的な意味においてTEACCHそのものであると言っても過言ではないと思います。

これとは逆に、親にとって都合のいい時と場合にだけTEACCHの構造化などの技法を「その場しのぎのテクニック」として使うだけで、それ以外の生活では自閉症児の困難さに十分な配慮をしない、というのは、TEACCHではありません。TEACCHはあくまでもそのよって立つ「療育観・療育哲学」がベースにあって初めて成り立つもので、単なるテクニックの中にはTEACCHは存在しないのです。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
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