現在は、ABA以外の療育法について書かれた本をご紹介しています。
発達の遅れが気になる子どものためのムーブメントプログラム177(レビュー記事)
こちらで紹介されている「ムーブメント」というのは、さまざまな道具を使い、身体の動きを通じて、感覚・運動・認知といった領域に働きかける療育法です。
そのままでは反応性が弱く、うまくかかわりにくい自閉症のお子さんに対して、道具をうまく使ってかかわりのきっかけを作り、そこから療育に進んでいくというのはとても合理的な考え方だと思います。
ですから、道具(しかも、家庭でも用意できるような比較的小道具的な道具)を使った療育のアイデアが満載のこの本は、子どもとのかかわりのきっかけ作りに最適な本だと思います。
この本については、つい1か月ほど前にご紹介したばかりですので、より詳しいレビューについてはそちらをご覧いただければと思います。
<おすすめできるその他の本>
さて、ABA系以外の(どちらかというと「TEACCH系」の)本で、殿堂入りしているものはこれだけになりますが、殿堂入りしていない本のなかでも、比較的おすすめできる本を、ここで一旦まとめておきたいと思います。
自閉症児のための絵で見る構造化 パート2(レビュー記事)
自閉症の特性理解と支援―TEACCHに学びながら(レビュー記事)
本当のTEACCH(レビュー記事)
自閉症児のためのTEACCHハンドブック(レビュー記事)
TEACCHプログラムによる日本の自閉症療育(レビュー記事)
殿堂入りの数こそ少ないものの、TEACCH系には「おすすめ本」はたくさんあります。
「自閉症児のための絵で見る構造化」は、教室や家庭での構造化を俯瞰イラストで表現した、まさに「見ているだけで楽しい」ビジュアル事典です。TEACCHの構造化の取り組みとはどんなものであるかが、まさに「見て取るように」分かります。
パート1よりパート2のほうが、家庭での取り組みや絵カードを使った構造化の割合が増えていて、家庭での療育という観点からは使いやすいという印象です。
「自閉症の特性理解と支援」は、読みやすいTEACCHの実践入門書。著者の人柄とTEACCH的な「理念」が、行間からにじみ出てくる良書です。
一方、「本当のTEACCH」は逆に、かなり辛口な、著者(内山先生)の考える「本当のTEACCH」とはどのようなものであるか、についての解説書です。
世にはびこる「TEACCHもどき」や「TEACCHへの過剰な幻想」への痛烈な批判に満ちています。TEACCHを深く知りたい方にとっては必携書ではないでしょうか。
TEACCHの創始者であるショプラー教授の、亡くなられるわずか数か月前のインタビューが載っているのも、本書の価値を高めていると思います。
そして、「自閉症児のためのTEACCHハンドブック」と「TEACCHプログラムによる日本の自閉症療育」の2冊は、セットで読むことで、ノースカロライナ州で生まれたTEACCHが、佐々木正美氏の尽力により日本でどう花開いたかを読み解くことができます。