2006年11月20日

幼児期の療育を考える(6)

2. 自閉症について知る

1)自閉症とはどんな障害か

ここで、具体的な療育について説明する前に、自閉症とはどんな障害なのかについて簡単に触れたいと思います。

といっても、学術的な定義を書こうというのではなく、子どもの障害を理解すること、そして療育を進めるための基礎知識として知っておいたほうがよさそうな内容を中心に書きたいと思います。
また、下記の内容には私なりの解釈がある程度含まれています。このあたりについてさらに深く知りたい方は、複数の本を読み比べて比較されることをおすすめします。

自閉症というのは、脳の器質的障害によって発症すると考えられている発達障害です。
脳にどんな障害が起こっているのかははっきり分かっていませんが、この障害によって恐らく、「複雑なルールを経験から学ぶこと」「細部ではなく全体に目を向けること」「周りの環境やヒトとうまく関わりあうこと」などが難しくなると考えられます

その結果として、「自閉症の三つ組みの障害」といわれる、次のような症状が現われてきます。自閉症という障害は、端的には下記のような一群の症状の集まり、つまり「症候群」として定義されています。

・社会性の異常
 他人との関わりかたが普通でない、もしくは関心が薄い。
 他人と視線・意識・話題などを共有することが難しい。

・ことばの遅れないし使い方の異常(コミュニケーション障害)
 ことばが出るのが遅い、もしくは発話がない。
 ことばの使いまわしが普通でない。
 比喩、皮肉、冗談などが理解できない。
 意味のないオウム返し(エコラリア)がある。

・興味の限定やこだわり、同じ行動の反復
 特定のものに対する極めて強い関心と固執(鉄道、ロゴマーク、特定の映像など)
 無目的に見える行動の繰り返し(常同行動)(体を揺らす、ぴょんぴょん跳ねる等)
 変化や切り替えに対して抵抗する


注意したいのは、これらの症状は必ずしもすべて幼児期初頭から出てくるわけではなく、上記はむしろ幼児期後半から児童期に入ってからの特徴的症状として現われてくるということです。
幼児期前半の「自閉症の疑い」は、非言語コミュニケーションの欠如、ヒトよりもモノに対する強い関心(もしくはヒトに対する無関心)、反応性の弱さ、感覚異常などに重点をおいて判断されます。既にご紹介したM-CHATテストの項目などを参照してください。

[参考文献]自閉症の三つ組の障害について書かれた、自閉症入門書の「古典」。

自閉症スペクトル―親と専門家のためのガイドブック
著:ローナ・ウィング
東京書籍 (レビュー記事

・・・ここまで読んで、何となくモヤモヤするものを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
「自閉症とは何か?」という問いへの答えが「上記の『三つ組』の症状が現われる障害です」だとすれば、その三つ組の障害がなぜ生じるのか?という問いが新たに生まれるはずです。ところが、それに対する答えが用意されていないために、モヤモヤとしたもどかしさを感じるのではないでしょうか。

この問いに対する答えを見つけようと、心理学者、精神医学者、脳科学者がさまざまな仮説を提示していますが、いまだ明確な答えは出ていません。
実は、私自身もこの問いに取り組み、私なりの体系化された仮説「一般化障害仮説」を提示しています。これは、自閉症の原因は「環境からのインプットから、一般化された『ルール』を学習する能力」の障害にある、という仮説です。

参考記事:一般化障害仮説:まとめページ

ここではこれ以上詳細には立ち入りませんが、この記事の中の療育についてのさまざまな意見・提案は、基本的にはこの仮説に基づいて書かれています。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
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