それでは、「子どもが自閉症の可能性があるかどうか」はいつ頃から判定できるのでしょうか? 違う観点から言えば、いつ頃から子どもの自閉症の可能性を心配すべきなのでしょうか? 繰り返しますが、これは診断を受けるかどうかとは別に考えるべき問題です。
恐らく、1歳後半、つまり一歳半検診を受けて、ことばや対人関係のおくれが目立ち始めた頃というのが1つの節目になるのではないかと思います。
多くの自閉症児の親御さんの話を見聞きしていると、だいたい1歳くらいまではいわゆる検診項目の中で特定の遅れが目立つことはあまりなく、1歳半検診でことばや対人関係に関する質問が含まれるあたりから、できないことが目立ち始めることが分かります。
そもそも、症状としての自閉症というのは一種の社会適応障害ですので、母親と子どもの間の非常に小さな社会関係性しか存在しない1歳前半くらいまでは、特に知的な遅れの少ない子どもの場合は問題が表面化しにくいということもあります。
もう1つ、一歳半が1つの節目だと言える理由は、一歳半以降であれば、ご家庭でお子さんの自閉症の可能性をセルフ・チェックできるような、いくつかの簡単なテストが利用できるということがあげられます。その代表的なものがM-CHATと呼ばれるテストですが、これについては、以前の記事で詳しくご紹介しました。
記事リンク:自閉症の早期診断について(CHATとM-CHAT)
もっと早期から自閉症リスクを発見できると考える研究者もいるようですが、少なくとも現時点では一般の私たちが利用できるような検査ツールは存在しませんし、研究の妥当性についても確立していないと考えられます。(ちなみに、そういった研究者が注目するのは、アイコンタクト・指差し・社会的参照=他人の視線の先を見ること、のような非言語コミュニケーションの芽ばえの有無のようですので、基本的スタンスはM-CHATなどの早期検査と同じだと言えそうです。)
それではここで、M-CHATに含まれている質問を確認してみましょう。これを眺めることで、最初期の自閉症がどのような典型的症状を持っているのかを知ることができます。
以下は、M-CHATの質問の内容をベースに、自閉症幼児の「症状」として読めるように表現を調整したものです。
M-CHATによるセルフ・チェックをこれから実施しようと考えている親御さんで、こういった内容を事前に見るとテストに影響が出ると感じる方は、念のため見ないようにしてください。
<特に重要だとされる6つの症状>
他の子どもに興味を示さない。
何か興味があるものを人さし指で指差して伝えない。
あなた(親)に何かを見せるために、物を持ってこない。
真似をしない(顔で表情の真似など)
名前を呼ばれても反応しない。
離れたところにあるおもちゃを指差しても、その方を見ない。
<その他、自閉症と関連があると考えられる症状>
ぶらぶら揺さぶられたり、ひざの上ではねるのが好きではない。
階段や何かの上に登るのが好きではない。
いないいないばぁを喜ばない。
電話の応対をまねしたり、人形の世話をするなどの「ごっこ遊び」をしない。
何か欲しい物を人さし指で指差して伝えない。
ミニカーやブロックなどのおもちゃを、口に入れたり、いじったり、落とすなどの不適切な遊び方で遊ぶ。
視線が長くても1,2秒しか合わない。
音に過敏に反応する(耳をふさごうとするなど)。
あなたの顔を見たり、笑いかけられて微笑み返したりといった反応がない。
歩けない。
あなたが何かを見ても、同じものに注意を向けて見ようとしない。
顔の近くでへんなふうに指を動かしたりする。
自分がしていることにあなたの注意を惹こうとしたりしない。
聴力に問題があると疑わせるような行動を取る。(呼びかけに無関心など)
話し言葉を理解できない。
ぼんやり何もないところを見つめていたり、目的もなさそうに歩き回る。
何か見慣れない物事にでくわしても、あなたの顔をうかがって反応を確かめようとしない。
また、M-CHATテストの前身であり、よりシンプルなCHATテストでは、次の3つの行動すべてが一歳半になっても出現しないことが自閉症の早期診断の重要な手がかりになるとしています。
1.ごっこ遊びができない
2.要求の表現ではなく、対象物を他人に見せることを目的とする指さしがない
3.大人の目線をおいかけ同じ対象物を見ることができない
(次回に続きます。)