2006年11月14日

幼児期の療育を考える(2)

1. 我が子が自閉症だと気づくとき-最初の一歩

1) はじめに-「療育的子育て」のすすめ

自閉症児への療育(治療教育の略で、教育よりも深い、生活全体への介入や医療的行為まで含めた子どもへの発達のための働きかけをいいます)は、早く開始すればするほど効果が高くなると言われています。これは、どのような療育技法を採用するかを問いません。

後で改めて書きますが、自閉症は環境の知覚やかかわりに深刻な質的おくれが生じる障害です。ですから、通常の子育てのやり方では、子どもへの働きかけが不十分だったり不適切になってしまうことがあります。言い換えると、子どもへの働きかけを適切なものに変えることによって、自閉症という脳の障害によって生じてくるさまざまな症状を軽減したり、既に生じている問題をうまく解決できる可能性があります。

ですから、子どもが自閉症かもしれないということにできるだけ早く気づき、子どもへの働きかけのスタイルを「普通の子育て」から「特別な療育」に早期に切り替えることが、とても重要なのです

ここで大切なことは、子どもへの働きかけを「療育的なスタイル」に変えることと、診断を受けること、あるいは障害があると「判断する」ことは、必ずしもリンクしなくていい、ということです。

子どもが幼い時期に多少おくれが目立っていても、やがて急激に追いついて何の問題もなくなってしまうこともよくあります。1歳や2歳の子どもに障害者のレッテルを貼るのは嫌だという親御さんの気持ちも、現実問題として差別などの可能性を心配する観点からは正当な感情だと思いますし、そもそもそのあたりの年齢の子どもには、医師も断定的な診断は下してくれないものです。

ですから、一歳台、二歳台のお子さんをお持ちの親御さんで、「今はまだ『よく分からない』ままでいい」と感じたなら、それはそれでやむを得ないと思います(とはいえ、3歳後半を過ぎれば確定診断も下りるようになりますし、子どものためにもそれ以上診断を遅らせるのは適当でないと思いますが)。

でも、そういった「保留状態」をあえて選択するとしても、家庭における子どもへの働きかけは、念のため、通常の子育てからは少し方向性を変えた、「療育的なスタイル」に切り替えることをおすすめします

「療育的なスタイル」というのは、そうでないスタイルよりも多少頭も体も使うことになりますが、療育的な工夫を加えた子育て環境というのは、言い換えると「ユニバーサルデザインの子育て」とも言えるもので、実は健常のお子さんにとっても発達を促す理想的な環境になると思いますし、仮にお子さんへの心配が「取り越し苦労」だったとしても、得るものは少なくないのではないかと思います。

しかも、このような早期からの働きかけは、障害が比較的軽く、知的能力面での遅れが小さいお子さんほどむしろ効果が高い可能性が指摘されています。つまり、自閉的傾向がそれほど目立たず、「少しあやしい」くらいのお子さんほど、逆に早期からその問題を「発見」し、療育的子育てによって脳の適切な発達を強くサポートすることが望まれるのです。これは一種のジレンマと呼べるかもしれません。(もちろんこれは、障害の重いお子さんの早期介入が意味がないということではありません。)

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 22:15| Comment(2) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
いつも参考にしています。

うちの息子は4歳でまさしく「少しあやしい」状態です。正式な診断名はついていませんが,専門機関での療育を始めました。

私もそらパパさんと同じ意見で,「少しあやしい」くらいの子に療育をするのは非常に効果があるように感じています。

家で意識的に療育を始めて2ヶ月位になりますが,劇的に効果があがっています。かんしゃくが激減しました。息子は空気を読むのが少し苦手なので,意識的に状況を言葉で説明するようにしていますが,長期的な目で効果がでてくれればと思っています。

ただ,夫,両親,園のいずれもが息子の抱える問題を否定します。知能が高く,言葉の発達も良く,慣れた人とは普通に接する事ができるからです。公園で同年代の子供達がたくさんいると,おびえるという限定的な状況以外にその兆候がみえないからです。このまま放置すれば就学時に問題が顕在化すると思っています。

私自身は生物学を専攻していたこともあり,遺伝的な要因についても多少の知識があり,近親者に多少ながらその傾向がある事に気がついています。

療育そのものは通常発達の子供にとっても必要な事を念押ししているだけなので,もしそうでなかったとしても問題はないと感じています。

境界線あたりにいる子供に療育の効果が高いことは間違いないと思いますが,正しい知識が広まっていない現状では,周囲の理解を得られず早期療育は難しいですね。私は息子を障害者にしてという非難を受けながら信念を持ってやっています。息子が抱えている社会性の困難を軽減してやりたいだけなのですが。
Posted by のんたんママ at 2006年11月15日 23:52
のんたんママさん、こんにちは。

「少しあやしい」と感じたときに、大げさなものではなく、少し子育てを意識的に変えていくというのは、とても有意義なことだと思います。

ただ、周囲の反対の中で続けていくというのはストレスもたまることでしょうし、うまく周囲を巻き込んで協力体制を作っていくことも大切なのかもしれません。

記事でも書いているとおり、ちょっと頭を使った療育的な子育てというのは、要は「ユニバーサルデザインの子育て」であって、もしかすると健常の子どもに対して行なったら「英才教育」にだってなるかもしれないという風に、前向きにとらえることができると思います。

そんな風に、周囲も含めて、前向きに考えて子育てに取り組めるようになるといいですね。
応援しています。
Posted by そらパパ at 2006年11月16日 23:02
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